12-3「ハリボテの傀儡(うつわ)」(3P)





 過去は還らない。

 いくら謝罪の言葉を口にしようが、女神に懺悔しようが、彼らは戻りはしない。




 身分は変わらない。

 いくら立場に辟易としようが、吐き気を押し潰そうが、自分の生まれから逃れることはできない。





 ──そんなことは、言われなくとも 分かっていた。





 



 自責とむなしさに駆られる彼に、追い打ちをかけるように。

 



 次の瞬間、『見えた』夢の一部に顔が歪む。


 

 

 


 ────炎に包まれ命を絶ったシェリルたちへの焦りを打ち消すように『闇に響いたあの声』







 ────『無理だよ、おにーさん』







「────どうしてそこにミリアが混ざる……っ!」





 絞るように吐き出していた。

 今までは『過去を圧縮しただけ』だったのに


 先程脳が見せてきたのは、『今の相棒の死に様エガオ』。





 その、むごたらしくも悲しいさま


 痛烈が走る。

 




「────っ……!」


 噴出す感情を握りつぶすように、口元を覆った。

 声にならない唸りと焦りが溢れてたまらない。



 鼓動はまた再び嫌な音を搔き鳴らし、

 どくどくと騒ぎ始め、息は短くなっていく。





 『考えるな』という方が無理だ。

 『あんなもの』は見たくなかった。






 ────あんな


 恨みと

 妬みと



 悲しみを込めた、


「────夢は、ゆめだろう……!」

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