12-3「ハリボテの傀儡(うつわ)」(2P)






 『見せられた夢』に愕然と呟いた。


 溢れ出す心の声が情けない。

 確かめるように開いた手の、指が小刻みに震えている。




(…………解っている。わかっている)




 誰にともなくそう言って、項垂うなだ

 祈るように合わせた両手で顔をこすり上げる。




 震える指先が額の汗を押し上げながら潰していく。

 絡みつく汗さえも、じっとりと煩わしい。

  





 この『過去を圧縮したような悪夢』は、初めてではない。



 当時のことはもうはっきりとは覚えていないが何度も何度も夢に見る。




 『今までの人生』を

 『あの頃』を

 『背負いし罪』を

 『自分の立場』を

 

 『 忘れるな 』とくさび打ち付けてくるような夢。



 そのたびに、彼はこうして飛び起き、息を整え過去を呪い、宵闇に一人、背を丸め過去を悔いてきた。






 あの頃から、ずっと。








「────フ!」

(────忘れたわけじゃない)




 ああ、心底可笑しい。

 自分がそれを、忘れるわけがないのに。

 一日たりとも、忘れたことなどありはしないのに。 

 


 瞬間的に『いい加減にしてくれ』という気持ちも滲みだすが、エルヴィスはそれを素早く叩き潰した。



 自分にはその『罪』に対して

 『いい加減にしてくれ』などと言える資格など、持ち合わせていない。





「…………わかっている」



 しかしそれでも、身体を落ち着けるように。ゆっくりと息を吸い、吐き戻し、もう一度、罪をすり込むように呟く。







 ────忘れられるはずがない。

 


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