11-14 「裏の顔」



 何事にも、表があれば裏がある。

 日の当たる場所があれば、影の色濃い場所もある。


 ──シルクメイル・オリオン領もその例外でない。


 そこは、聖堂にほど近い女神のクローゼットウエストエッジとは、対照的な地域。


 ”アルトヴィンガ”。

 通称『襤褸切ぼろきれの坩堝るつぼ』。


 街の中心で暮らすことが出来ぬ貧困層や、ならず者がひしめき暮らしている、いわば『スラム・歓楽街』の顔を持つ街だ。


 強盗・恐喝・暴行・売春・人身売買などは日常茶飯事。街は常にアルコールの臭気が漂い、ネズミや害虫も多く沸く。


 エルヴィスが、いや『オリオン』が。

 親の親の代から目を光らせながらも手が出せない、世間の肥溜めのような場所である。


 そんな場所の話を、華やかな舞踏会の片隅で。


 ヘンリーは語る。

 白亜の壁を背に、シャンパングラスを手にしながら。


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