9-7「BGMはご自由に」




 まどうし ミリアが

 しょうぶを しかけてきた!



「ふふふ! まどうし の ちから みせてあげる! いけ! ウォルタ!」

 しゅるしゅる! ひゅーん!



「────もう始まってるのか!?」

 シャッ!

 エリックは よこに おおきく とびのいた!

 ミリアの ウォルタは あたらなかった!



「ほらほら、もういっちょいくよ!」

 ミリアのこうげき!



「さあウォルタ! アローでこうげきっ!」

 ──しゅん!

 みずの ゆみやが とんできた!


 ジャッ!

 エリックは おおきく うしろにとびのいた!



「…………!」

 エリックは こうげきを ためらっている!



 ミリアの こうげき!

「ねえー、なにやってるの? 使わなきゃ上手にならないよー?」


「……いや、ちょ!」

 エリックは困っている!!



 ミリアの こうげき!

「エレメンツ チェンジ! いけっ! ウィンド!」

 しゅるるるるるるるるるる!

 ウィンドが てのひらに あつまっていく──!



「────いっけ~っ! エアーーーぼぉーーーるっ!」

 ミリアの えあーぼーる!

 ひゅおーん!



 エリックの えいしょう!

「────くっ……! 力をよこせ、ノー……!」

 ──────ぶっ。 わあああああああああああああ!

「──────っ!」



 えいしょうは まにあわなかった!


 エリックの おでこが まるみえになった!

 エリックの めに すなが はいった!

 エリックに 2のダメージ!

 こうかは いまひとつ のようだ!




(……痛ぅっ……! 目にゴミが!)



「ねえ~? 使ってみたいんだよね?」

 ミリアの といかけ!


「…………!」

 エリックはためらっている!



 ミリアの こうげき!

「────言っとくけど一発当てなきゃ終わんないからねっ!」

「──はっ!? いや、ちょっとま」



「問答無用っ! いっくよーっ? 重ね掛けpie wrap!」

(──パイラップ?! なんだ!?)

 エリックは 慌てている!



 ミリアの コール!

「エレメンツ ウォルタ! エレメンツ ライト!」

 なんと! 水流が 光を 纏って輝きだした!



 ミリアの こうげき!

「スターーーー・ウォルタリングーーーー!」

 なんと! ミリアは魔法陣を描き出した!

 水流は 光を 纏って 陣を成していく!



 ──エリックは動揺している!



「ハーイ・ぷれっしょおおおおおん!」


 ミリアは両手で魔法陣を押し出した!

 ────どっ! パッ!


 ミリアが腕を押し出すと同時、放たれた光の水柱が、エリックに向かってくうを裂く!



 ずあああああああああああ!

 と激しい水音を立てながらぐるぐると迫る水柱に、エリックはたまらずカードを引き抜いて────!




「────力をよこせ! エレメンツ ノーム! タイプ……っウォール 壁 !」


 


 ────途端。

 頭の中に流れ込む『基礎構築式ロジック定型文』。

 呼応し盛り上がる土の壁に、エリックは思わず目を見開いて────




 ────どっ!

 ばしゃざああああああっ!

 ビヂヂヂヂヂ! ヂヂヂヂヂ!



 ──はっ……!?

 見えなくなった・・・・・・・『基礎構築式ロジック定型文』と、現れてくれた土の壁に、我に返って息を付く。


 摩訶不思議な体験に動揺する間もなく、壁の向こうからけたたましい水音が聞こえてくる。その威力の強さに、エリックは短く息を付きながら壁に背を預け、焦りを浮かべ呟いた。



(危ないところだった……! 『加減』って言葉を知らないのか……!?)

 


 呟く脳に『目の当たりにした水流』が容赦なく蘇る。

 空を裂きながらまっすぐ、うねりを伴い襲い掛かってきたソレ。


 瞬間的に感じる『命の危険』。

 初心者に向ける『みずのこうげき』というレベルではなかった。



(──あんなの喰らったら、どうなっていたかわからない……!)

 ──と、背を預けた土壁の向こうに神経を尖らせながら呼吸を逃がし、彼は悔しさに襲われた。



(……ああ、くそ! 今までの経験がまるで役に立たない……!)

 


 完全に舌を巻く。

 戦術・体術・剣術・槍術・計略……

 幼き頃から叩き込まれたそれらを繰り出す前に『やられる』のがわかる。



(────死ぬってことはないんだろうけど……!)



 呟き張り巡らせるのは神経。

 壁の向こう、聞こえるは水の音。

 土が飛び散る音はしない。



(……とっさのこと、とはいえ、視界を遮る壁を作ったのは悪手だったな……! これでは、あちらの様子がわからない……!)



 と、整理しながら腰ベルトにしまわれたカードをちらり。

 わからないなりにも、使えることは出来た。

 呼応することはわかったし、使った時の感覚も分かった。


 ──しかし、《ミリアの攻撃を避けつつ、これらを素早く『使う』こと》が、果たして、自分にできるのかどうか────



 頬に一筋、たらりと汗を流しつつ。

 (───どうなっている?)と、静かになり始めた向こう側に、神経を研ぎ澄ませた、その瞬間。



 ──────……ぽ。わっ……。

「…………?」




 突如。

 上から。

 ほわほわと浮かび、落ちてくる光の球に、目を奪われる。



「…………?」

 ふわりふわりと漂うそれに、ぽかんと目を見開いたエリックが



「────!」

 それ・・の正体を理解した、その、瞬間!


「────”ACTアクト” 爆ぜろburst!」

 ────カッ!

「────ッ!」



 ミリアの高々とした声が響き、弾ける光にエリックは素早く腕を上げ目を閉じた!


 頭の上でバチバチギラギラと感じる光。

 文字通り、光源を直接叩き込まれて目が開けられない!



(────目くらまし……! 挑発なのはわかっているが……情けないけど、まるで動けない……!)と、苦々しく呟いた、その時。



 ”声”は かるーい口調で 壁の端から飛んでくるのだ。



「ほらほらぁ、壁作って安心してる場合じゃないよ?」

「────君……! 俺、初めてなんだけど?」



 壁からひょっこりと顔を出したミリアに、エリックは、眩しさを堪えた苦笑いで言い返した。


 

 しかしミリアは、余裕しゃくしゃくという足取りで、ゆっくりと距離をとりながら、ふわりとスカートをなびかせ、”にぃ~っと”笑うのだ。



「習うより慣れろってね~♪ さあ、おいでよ♡ 加減要らないから かもーん♡」

 



 その、”くいくいっ”と煽る笑顔は、悪戯と余裕を孕んでいて、彼の闘志に火をつけた。



(────君って人は……!)

 《受けて立つ》と言わんばかりに、邪魔なベストを脱ぎ捨て歩き出す。

 

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