4-5「 ───はっ?????」





 ────聞かされたことに、言葉が出ない。

 服飾工房勤めの女・ミリアが、少し前に出会った青年『エリック・マーティン』。


 一見、スマートで堂々としている雰囲気を纏った彼を、ミリアは『お金のない暇なお兄さん』とばかり思っていた。



 出会ったその日も昼だったし。

 二度目の訪問はとても長かったし。

 なんだかやたらと色々話し込んでくるし。

 まあ別に、彼が居たところで作業の邪魔になるわけでもないし、話し相手がいること自体は構わないので、手を動かしながら対応していたのだが────


 密かに思っていたのである。

(仕事はいいのか……? このおにーさんは)と。


 汚らしい身なりもしていないし、靴は一級品。

 容姿も良いけれど『何をしているのかわからない暇な人』。

 『出会った時もその次も、平日の真っ昼間にフラフラしているような人』。


 彼女にしてみれば、まあぶっちゃけエリックの職業がなにであれなんでもいいのだが、とりあえず日中の仕事にはついていないだろうと思っていた。

 


 それが────《まさか》。

 


 暇な青年エリックは、ミリアの前でこう語る。

 緩やかに組んだ両手を口元に含みのある笑みを浮かべて。



「……実は……、…………ウチのボスが困ってるんだ」

「……ボス?」


「そう。この領地の最高責任者。エルヴィス・ディン・オリオン様だよ」

「────はっ?」





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