2-5「ちがう。そうじゃない」
言い出したのは、ミリアの方。
『話が聞きたいって言ってたよね? それなら、ビスティーでどう?』
言われ、エリックは内心ほくそ笑んだ。
少々手こずったが、これでやっとスタートラインに立てる。
やはり容易い。
情報なんていくらでも取れる。
──さて、今日はどこまで盗ろうか。
そんな内なる野心を笑みに隠して、彼は見事に
「あーと〜〜〜、そうそう。うちでやってるサービスって他にも色々あってさ、例えばこれ。隣のクリーニング店に出されたものなんだけど、洗う前に全部チェックしてお直しするの。洗った後で『破れてた!』とか、結構あったらしくて。そういうトラブルを未然に防ぐための、業務提携をしている感じなんですね? クリーニング屋のご主人がさー、お直しとか苦手で。まあこっちもお金もらってるし、持ちつ持たれつってやつ? これが、一枚につき20パーセントの報酬。結構な時間潰しになるのよ、これが」
「…………ああ」
「ほらぁ、うち、基本は女性服取り扱い店なんだけど、やっぱりその辺もやっていかないと生き残れないじゃない? こういう地味な仕事が、命を繋ぐんですよね~~。ほらここ、ボタン取れてる。こっちは裾の裏が穴空いてる。ね? これとか、これとかをね? 直すの。OK?」
「……うん。──……なあ、ミ」
「で、これがカタログ。これから、お客様が望んでいるスタイルを決めて、布を決めていく感じ。これとこれはオーナーの手書き。こっちはわたし。ここから服を選んでもらって〜、あそこの扉。あの二つあるやつ。あの奥がフィッティングルームになってるんだけど、入るとずらーーっとドレスやワンピース・ビスチェタイプの上着とか縫ってない状態のスカートとか並んでるから、そこで試着してもらう。カウンターで大まかに決めて、奥でみっちりフィッティングね? あ、ちなみにうちカウンセリングとオーダーは予約制だから。ここから参考にセミオーダーしていく感じ」
「…………へえ。そうか。」
巻き込まれていた。
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