心霊現象6 親子の霊?
心の中で考え事をする私を「うるせー」とぼやいた1体。そして前作にも少し触れ、今作の心霊現象2に登場した、私が痛がっていても体の中に入り込んで来た幽霊。
そいつの名はオラオラさん。
話し方とか態度がデカくてオラついているので、私がネーミングさせて頂きました。
オラオラさんは、この家に引っ越してきて私が一番最初に遭遇した幽霊です。
私がまだ幽霊に興味を持っていなかった時のこと。布団に寝ながらうんたら考えていた私に、オラオラさんが声を掛けてきたことが最初の接触でした。
ですがこの頃の私は幻聴だと思っていたのです。
その後に再び接触をしてプチパニックになった私が、
というわけで心霊現象1を経験して私は幽霊を見ないと誓い、心霊現象2でオラオラさんに憑りつかれてしまった状態の時ことです。
ある日の夜。私は布団に入って仰向きになりました。
すると足元に気配を感じました。
右足の親指の先をピッと引っ張られて少しだけ両足の距離が開きましたが、私は怖いとか不思議とか関係なく、
「見ない!」
顔だけを上げ、そう自分の足元へと向けて、強く心の中で言い放ちました。
でも今では、この行いを反省しています。
なぜなら、このイタズラをした相手が子どもの霊だったのかもしれないからです。
そしてまた数日後。
その出来事がある少し前から何だか右肩が異様に重かったのですが、私は無視をし、
「この調子で幽霊と断ち切る!」
その思いで過ごしていました。
しかしです。
その日の夜、布団の上。
右肩が楽なので仰向けになっていると、また右足の親指の先をピッと引っ張られました。足も前と同じように少し開きます。すると……
「痛い! 何か圧がすごい! 痛い!」
そんな風に心の中で叫んでしまうくらい、私の右肩に異変が起きました(ぐぅぅっと力を込めて肩を押されている感じです)。
それはボーリングボールくらいの大きさの気配。これが、とんでもないくらい主張が強いのです。
同時に足元から何かが這い上がってきます。重みはそんなに感じられませんけれど、ちゃんとよじ登って来る感触はしました。
それはよくホラー作品に登場するようなシチュエーション。
ですが不思議と怖くないのです。
それよりも右肩が怖くて怖くて、痛くて痛くて仕方がありませんでした。
私はパニックになりながらも、右肩から背くように体を左横へと向け「何も出来ません。ただのお母さんです」や「なんみょうほうれんげきょう」を心の中で唱え続けました。これしか手札が無くて……泣。
そして登ってきた何かがお腹まで来た、そんな時です。
「すみません……」
痛みや圧の主張が消えたのと同時。そんな声が聞こえてきました。
声質はおばさんです。50代くらいだと思います。低く落ち着いた声で、PTAとかでも聞いたことがあるような、そんな真面目そうな声でした。
きっと私がとても怯えていたからでしょう。
申し訳そうな声に、何だかこちらも怯えてすみませんという気持ちになりました。
私は閃きます。
それは沖縄のユタ。
私を幽霊に興味を持たせた内の1人。ある芸人さんのお婆様がユタなのですが、幽霊と意思疎通が出来るので、
「幽霊さんも積もる話があるだろう」
そう思って、成仏したいのならと、ユタについて心の中で案内してみました。
おばさん……生前は私が味わったことのない苦労もあったのかもしれません。
50代と言っても亡くなるにはお早いです。
本来なら、私なんかに訪ねてくるようなお人ではないはずです。
大きなお世話ですが、私はそんな風に思いを馳せながらユタについて心の中で真摯に話していると、
「はいはい」
呆れたような声が、少し遠くの方から返ってきました。
こ、この声は……
「うおおおおおおお! オラオラさんには話してないんじゃあああああ! つかまだ居たのかあああああ! 今すぐ出てけえええええ!!」
声の主は、おばさんではなくオラオラさん。
私はオラオラさんに、そう声に出して叫びたくなりました。
と言うかおばさんもおばさんです。謝るくらいならしないで欲しいです。
煮えくりかえった怒りと敗北感に、涙目で眠った次の日。
やっぱり右肩が容赦なく重い。おばさんが重い。
「そういや、お腹まで登ってきたのって別の幽霊なのかなぁ。それともダルシムみたいに腕が伸びて……」
もうすぐ40になるおばさんの私は50代のおばさんをぶら下げながら、昨夜の体験は1体にさせられたのか2体にさせられたのか、どちらなのだろうという無意味なことを考えていました(肩が重くてつい考えちゃうのです)。
実のところ私はもうこの時、おばさんのことが嫌いになっていました。
人の心を覗いて笑ったり、私のしていることを否定してくるからです。何か嫌なやつだ~って泣。
これが生きている人だったら避けることが出来ますが、憑りつかれてしまっているからどうしようもありません。
私は段々と気分が落ち込んできます。右肩も重いし、はぁ……。
でも息子が居ます。しかも、もうすぐ定期テスト! テストまでに終わらせないといけない宿題がたんまり残っています。
今までの定期テスト前夜を思い出して戦慄した私は、遊びに行く身支度をしている息子へと声を掛けてみることにしました。
「そろそろテストだけど、宿題どんな感じ? 何かまだやってないような……」
「勉強しろって言うなーーーー!」
え。
「確かにもうやばいか」と、息子ははにかみながら答えます。
正直もうやばいかの域では済まない時期でしたが、私は心で叫ばれた息子ではない声の方に気がいってしまいました。
「いや、勉強じゃないし宿題だし。勉強はして欲しいけど……」そんな風に思いました。
それにしても可愛い声。子ども、小さな男の子の声でした。
もしかして勉強を強要されていた子なのかなぁ。
あれ? もしかしておばさんの……?
なんて詮索しつつ、小さくて亡くなっちゃったんだなぁと、何とも言えない気持ちになりました。
そしてまた数日後。
私はおばさんに声を掛けられました。
長くなってしまったので、続きは次回にします。
お読み頂きありがとうございました!
不思議な体験をした。でも怖くない話2~心霊編 りほこ @himukai
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