心霊現象5 お互いうるさい
前作では「また来るよ」と言って消えたお兄さん。
とは言っても、私もよく「また今度~」と言って会わないことがありますので、もう来ないだろうと思っていました。
でも本当にまた来たのです。
ある日のお昼。
「小説上手く書けないなー」と、私はパソコンから目を背けて、部屋の隅でぼーっと体育座りをしていました。
視線は、すぐ隣の物入れへ。クローゼットではないのが悲しいですが、そのドアには愛しの息子の書初めが飾ってあるので、ぼーっとしながらも息子に思いを馳せていました。
そんな時です。
瞬きをした瞬間なのでしょうか。映像が見えました。私が眺めていた物入れの前の景色です。
ただ書初めは無く、代わりにお兄さんが立っていました。
背はあまり高くはなく、たぶん160㎝ちょっと。外ハネの黒髪で、黒のスーツを着ていました。ネクタイはしていません。
大学生くらいの年齢~20代前半で、顔はありました。番人受けするようなかっこ可愛い顔立ちで、にこにこと微笑んでいました。
※ここで補足です。
この時点で声を聞いていないので、以前のお兄さんかどうかは怪しいのですが、私が「あの時のお兄さんだ」と思ったので、そうすることにします。
なので来たと言っても、実際のところ同一人物かは分かりません。
「お兄さん本当に来たんだな。もしかして成仏するのかな」
なんてことを考えて、私は物入れから顔を逸らし、パソコンが乗るテーブルが接してある近くの壁を見ました。
すると今度も映像が。
お兄さんの時とは違い、見ていた景色の壁ではなく、白い背景でした。
そこにはおじさんが立っていました。
はにかんだように笑っていて、可愛らしいおじさんでした。
2人とも色味が薄かったのですが、お兄さんに比べておじさんは全体的に茶色がかっていました。
不思議でしたが、それよりも気になったのが、おじさんが100㎝くらいの背の高さということと、立っている後ろに背丈と同じくらいの青い長方形の箱が置いてあったというところ。
背の高さは人それぞれなので何とも言えませんけれど、私は青い箱が何なのかがとても気になったのです。
ですが取りあえず2人が優しそうなので、「幽霊さんって変なことするけど、ホラーに出て来そうな人ばかりじゃないんだなぁ」と感じました。
この時はまだ、私は隣人の部屋から隣人の部屋に流れていく幽霊の姿しか見ていなかったので、憑りつく幽霊以外はこの家に留まるものだとは思っていませんでした。
なので部屋に幽霊が立つ映像が見えても、どうせまた消えるだろうと特に気にしていませんでした。
そしてしばらく経ったある日。そろそろ夕飯を作る時間帯になりました。
先ほど書きましたものとは別のテーブルでパソコンを打っていたのですが、息子も帰ってきますし中断しなければなりませんでした。
「ふぅ」と私は息を吐いて、椅子の上で膝を抱えて伏せました。
そんな時に、また映像が見えたのです。
それは視線の先。つまり床の景色です。
前回お兄さんを見た時もそうだったのですが、膝を抱える私自身の姿は消えて景色が見えるのです(前回で言うと、私の膝から下は見えるはずなのに見えない)。
フローリングの上をスタスタと歩くスラックスが見えた私は「お兄さんだ」と思い、まだ成仏してなかったんだなと思いました。
それから2日ほど経ったある木曜日。
私はこの曜日になると、その日の夜に観るアニメを楽しみにしていました。
見逃しても視聴出来る方法があったのですけれど、出来たらリアタイしたいなぁと思っていました。
しかしです。
夜になり私はワクワクしつつ執筆をしていると、ふと何となく目線をパソコン画面から上へと移しました。
するとなんとそこには、黒い頭の先から前髪が被るおでこまでの部分が、横スライドしていく光景が。
およそ3秒間。はっきり、くっきり見えました。
普通の人がすれば頂点がブレてしまいますが、平行移動するそれはもう人間が成せる技ではありません。とう言うか、パーツになんてなれません。
私は「なんてことするんだっ、怖っ」と思いつつ、たぶんお兄さんなんだろうなぁと感じました。
私は何でそんなことをするのだろうと思いつつも目線を下げ、またパソコンを見ました。
その視線はさらに右下へ。時間が表示されています。
「あ! 始まってる!」
そうです、アニメが始まっていました。10分くらい見逃していたのです。
そこで私はハッとします。
「お兄さん、リアタイ勢か!」
腑に落ちた私は、すぐにテレビをつけ、チャンネルをT〇Sに。心の中で「そういうことね~」とドキドキしつつお兄さんへ謝りました。
そんなわけで、それからは早めにテレビをつけてスタンバイしてあげることにしたのでした。
そしてアニメの新番組を観るのは一旦諦めた私なのでした。
だって横スライドは怖いのです。
そう言えば、お兄さんを肉眼で見たことがもう1回だけあります。その時も部分的でした。
息子と話していると、その後ろの壁から腕を出してバタバタしていました。
壁に引っかかってしまったのでしょうか。行動が謎です。
最後にちょこっとおまけと言うか、お兄さんへの文句を書かせて頂きたいと思います。
常にではないでしょうが、お兄さんは未だに私へ憑りついてる時があります。
きっと暇つぶしや養分の1人なのでしょう。
お兄さんは憑りついたそのついでに、自分がモデルにされている小説や私の料理、服装に向けて何か言って来る(褒める時もある)くせに、私が心の中で色々喋っていると「うるせぇ!!」とブチギレてきます。
まぁどれも1回だけですけどね!
でも実はうるさいと言われたことが、あと2回(1体ずつ)あります。
私は心の中であれこれ考えたり、妄想したり、音楽を流してしまうから、そりゃあうるさいと思います。
だから居心地が悪いはずなのに、他にも憑りついてくる幽霊が何体か居るのが不思議です。
次回は少し調子を変えて(?)怖い思いをしたお話をしようと思います。
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