三人での、お出かけ
話しているとコーヒーと注文した食べ物が運ばれて来た。
「お待たせ致しました」
スタッフは、そう言うと、俺達の前にコーヒーと頼んだ食べ物が置いていく。
京子を見ると、冷静な目つきで運ばれる食べ物を見ている。対する由衣は、目を輝かせて、食べ物とコーヒーを見ていた。
二人の反応が正反対で、見ていると面白いな。
「では、ごゆっくりと」
スタッフは、そう言うと伝票を筒に入れて、去って行った。
「美味しく、いただきましょ」
「うん!」
三人で、いただきますを言うと、それぞれ頼んだ食べ物を食べ始める。
「京子ちゃん! あーん!」
由衣は、スプーンに乗せたアイスクリームを京子に食べさせようとした。
「ありがたく、いただくわ」
京子は、由衣にアイスクリームを食べさせてもらう。
「おいしい。由衣にも、私のワッフルをあげるわ」
京子は、ナイフでワッフルを一口サイズに切ると、フォークに刺して、由衣の前に持って行く。
「ありがとう!」
由衣は、京子にワッフルを食べさせてもらった。京子は、由衣が美味しそうに食べる姿を見て、嬉しそうな表情をする。
「うん! 美味しい!」
お母さんと子供みたいだな。
年齢は同じだけど、無邪気な由衣と大人びている京子を見ると、親子のように見えた。
「ねぇ、空太くんのも一口ちょうだい!」
「あ、あぁ。いいぞ」
俺は、由衣の前にチーズケーキを差し出す。
「美味しそう! いただきます!」
由衣は、チーズケーキを一口食べた。
「美味しい!」
由衣は、満面の笑みで言った。
「京子も食べるか?」
「空太が食べても大丈夫なら、いただこうかしら」
「いいぞ、食べて」
京子は、俺の返事を聞くと、チーズケーキを一口食べた。
「美味しいわね」
京子は、そう言うと軽く微笑んだ。
「お礼に、私からもワッフルを一口あげるわ」
京子が、そう言うとチーズケーキが乗っている皿の上に一口分のワッフルが置かれる。
「私も、アイスクリームあげる。ええと、どこに置こう。そのまま皿の上に乗せちゃうと、垂れて、チーズケーキにアイスがついちゃう」
由衣は、アイスクリームを取ったのはいいけど、置き場所に困っているみたいだ。
「ワッフルの上に置いていいぞ」
「あ、それ頭良い! でも、いいの?」
「いいぞ。実際にあるメニューでも、ワッフルの上にアイスが乗っているのとかあるからな」
「なるほど」
由衣は、京子が俺の皿にあげたワッフルの上にアイスクリームを乗せた。
「いただきます」
俺はワッフルと、その上にアイスクリームを乗せた物を食べる。
ワッフルは、ふわふわ、アイスクリームは、ほど良い甘さだ。お互いの良い所を邪魔せず、良い感じに調和がとれている。
「上手いな」
「でしょ!」
自分のチーズケーキも食べてみる。
なんて、濃厚な味だ。ほどよい、酸味が効いている。レモン汁を入れているのか?
「久々に、こんな美味いチーズケーキを食べた」
「へへへ。この場所選んで良かった」
由衣は、照れくさそうに笑った。
俺達は食べ物を食べ、コーヒーをたしなみつつ、学校の出来事や私生活であったことなどを話した。
「はぁー、ごちそうさま。美味しかったー!」
由衣は、満足げな表情を浮かべて言う。
「普段こういうとこには来ないけど、とても美味しかったわ」
京子も満足そうだ。
「また行きたいな」
チーズケーキ、また食べたいな。
「よし、じゃあ次は、いろんな店を見て回ろう!」
俺達は、会計を済まして、由衣が行きたいと言った店について行くことにした。
「ねぇ、ねぇ。これ可愛くない!?」
由衣は、白くまをモチーフにした、ぬいぐるみを、抱っこして持っている。
「ここ、いろんなぬいぐるみと人形があるわね」
京子は、物珍しそうに店を眺めている。
店内を見渡してみると、どこ見ても人形やぬいぐるみしか置いてなかった。
「ここは、人形とぬいぐるみの専門店か」
子供が好きそうな人形から、女性が好きそうなぬいぐるみまで、品数が豊富だ。
「よしよし、よしよし」
京子が、なにかを呟いているので、振り向いてみと、ぬいぐるみを撫でているとこだった。
「なにを撫でているんだ?」
京子からの返事がない。夢中になっているようだ。
「ここからだと、ぬいぐるみって言うことしかわからないな。もう少し、見る角度を変えてみるか」
見る角度を変えてみる。
灰色をベースにした色に、目の周りが黒い。そして、尻尾にしま模様がある。耳が三角形だな。アライグマか?
「京子は、アライグマが、好きなんだな」
「え? ええ、そうよ」
よほど、夢中だったのか、俺が隣に来て話しかけられたことに、一瞬驚いていた。
「どの辺が可愛いんだ?」
俺は、こういうぬいぐるみや、人形に興味が持てない。
あっても、部屋のスペースが埋まるからなって考えてしまう。
「目元かしら?」
京子は、アライグマの目元を指さす。
「殴られた跡みたいな目をしているな」
喧嘩して、キャラの目の周りが黒くなるとこ、漫画やアニメで見ることがある。
「こういうことに関しては、あなたに感想を求めないようにするわ」
京子は、冷めきった言葉で言った。
「そういえば、由衣は何しているんだ?」
気付けば、由衣の声が聞こえなくなっていた。
辺りを見渡すと、鏡の前で何かをしている由衣を見つけた。
「由衣、なにしているんだ?」
よく見てみると、頭に何かの被り物をしている。
「じゃじゃーん! うさぎさん!」
由衣が振り向くと、頭にうさぎの被り物をしていた。
何か違和感がある。
「うさぎの耳って垂れているんだっけ?」
俺の指摘を由衣が聞くと、笑みを浮かべた。
「へへへ。聞いて驚くがなかれ、実はこのうさぎさんの耳」
由衣は被り物から、紐みたいのを取り出して引っ張る。
垂れていた耳が立った。
「耳が立つんだよ!」
「その仕掛け、いるのか?」
「大事だよ! 可愛いでしょ?」
由衣は、そう言うと、被り物から出ている紐を掴んで、うさぎの耳を垂れさせて立たせるを繰り返す。
言われてみれば、可愛いのかもしれない。
「空太には、可愛さがわからないかもね」
京子はそう言うと、俺の隣に立つ。
「はい、京子ちゃんにはこれ!」
由衣は、そう言うと京子の頭にうさぎ耳のカチューシャを付けた。
「由衣、こういうのは私に似合わないわ」
言葉に出せないが、京子似合っているぞ。
「すごく似合っているよ! 一緒に写真撮ろ!」
由衣は、京子と腕を組んで、携帯のカメラで写真を撮り始める。
その後、京子は由衣に引っ張られる感じで、店内のぬいぐるみを見て回り始めた。
元々ぬいぐるみや人形に興味がなかった俺は、それを眺めてついて行くだけだった。
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