元最強氷魔道士と追放された聖女

とろり。

健在する氷魔法


 さ、寒いな……

 毛布を四枚も重ねたというのに。


 ヒムロは寒さに耐えきれず、目を覚ました。


「お目覚めですか、ヒムロ様。お布団は引っぺがしましたわ」


[ヒムロの氷魔法!]

[ふとんがふっと○だ!]

[しーん]

[周囲にダメージ!]


「効きませんわよ。ヒムロ様」


「セイラーッ!」


「ふふ、可愛いですわ♡」


「布団を返せ!」


「毛布を何枚も重ねるより、人肌で温めた方がのですわよ」


「何を言っている! 俺は明日、大事な会議があるんだ! 日本の地に転生して30年。これは人生の分かれ道だ!」


「だからこそですわ。わたくしが温めてあげますわよーっ! おほほほ!」


 ヒムロは無理やりセイラから布団を取り返すと、横になった。


「ヒムロ様のいけず~」


 セイラはヒムロの布団に潜り込んだ。


「や、やめろおおおおおおおおおおっ! たわわな胸を押し付けるなああああああああああっ!」


[ヒムロの氷魔法!]

[消えろ! 慰霊祭! イレイサー!]

[しーん]

[ヒムロは自分にダメージを受けた!]


「クソが! リフレクトを使うなど邪道じゃああああああっ!」


「わたくし、リフレクトは使っておりません。ヒムロ様のギャグが寒いだけです。さ、続きです。わたくし、ヒムロ様なら何発でもOKですわ♡」


「知るか! 誰が一発屋だ!」


[ヒムロの氷魔法!]

[誰が一発屋だ!]

[しーん]

[読者がページを閉じました!]


「! しまった! 大切な読者がページを閉じてしまった! こ、これでは明日の会議に影響が……」


「そんなの関係ありません! ですわ♡ ようやく二人きりの時間ですわね」


[ヒムロの氷魔法!]

[そんなの関係!]

[しーん]

[ヒムロがスキージャンプで新記録を更新しました! 大滑りです!]


「せめてあるあ○探検隊でお願いします、ヒムロ様」


「俺の勝手だ、この偽聖女があ!」


「ひ、酷いですわ、ヒムロ様。わたくしがこんなにも一途にヒムロ様を愛しているのに……。もういいですわ、実家に帰らせてもらいます!」


「もう午前4時だ。電車やバスなど出てないぞ」


「いいえ、帰らせてもらいます。タクシーでも何でもつかまえますよ! もあるので帰ります!」


[セイラの氷魔法!]

[用事四時もあるので帰ります!]

[ふむ]

[ヒムロのHPが10回復した!]


「どこがおかしいのですかヒムロ様!」


 セイラはたわわな胸でヒムロの顔をビンタした。


「ちょ、ちょっと待てえええっ! 胸でビンタはやめろっ!」


「もうっ! 知らないっ!」


 セイラが家を出ると、ヒムロは布団に入った。


「ま、そのうち帰って来るさ」


◇ ◇ ◇ ◇


 所変わって、○○出版社。


「寝不足だな。眠気覚ましにこれを……」


[ヒムロはトゥエンティFooooooooooh!を飲んだ!]

[何となく元気になった!]



 「えーという訳でこのプロジェクトを進めたいと思います」


パチ、……パチ……


 あまり評価は良くないようだ。

 時刻は午後四時。

 気まずい空気の中……


[ヒムロの?氷魔法!]

[用事四時があるので帰ります!]

[しーん]

[周囲に100万ダメージ!]




 これは異世界で最強氷魔道士だったヒムロの現代転生物語である。

 今日もヒムロの氷魔法は健在であった。



 最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

m(_ _)m




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元最強氷魔道士と追放された聖女 とろり。 @towanosakura

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