第13話 明日に向けて

 私は手のひらの宝石をまじまじと見た。

「あぁ、こんな色だったわね、私の恋心は」

 燭台の光にきらめく、ハート型の宝石。


 一人の騎士が、私の恋心だと信じきって死んでいった。それももう、過去の話。

 柔らかくなった手で触る。


 私もそう長くはない。

 葬式の時にはこの宝石を棺に入れてもらおう。

 大事な私の恋ごと、天へ昇っていけるように。


 死んでしまえば、身分も魔法も関係なくなるだろう。アンドリューと再会して、エミリと彼を取り合う。想像すると楽しかった。


 大事な人達を見送るのは疲れたけれど。

 でも、もう少しだけ、愛した国を見守ろう。


 私はベッドに入り、静かに目を閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

姫の恋を盗んだのは 蒼生光希 @mitsuki_aoi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ