第12話 代償

 魔法使いは「ほう」と面白そうに一声つぶやいた。

「いいものを見せてもらいました」

「……」

「貴女の強固な意志、急速な成長。それに応じて、仰せの通りに致しましょう。では、これで」

 私は手を伸ばした。

「待って! 私の願いも、聞いてもらえる?」

 魔法使いは再び、意外そうな顔をした。

「姫様の?」


「流行病をなくしてほしいの」


 本当に急変しましたね、と魔法使いは楽しそうに笑った。

「今かかっている者までは救えませんよ」

「……仕方ありません」

「代償として、二度と人を愛することはできません」

「わかりました」

「破ったらあなたは死に、国に病が戻ります」

 私は頷いた。魔法使いは何事か呪文を唱えた。心臓を鷲掴わしづかみにされたような痛みが走り、私は倒れた。

 

 気づくと魔法使いは消えていた。

 翌日、雨が降った。まるで病の元をつらぬこうとするほどの激しい雨だった。


 そして、彼は戻ってきた。

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