第148話 勇者の就活最前線 Ⅲ
出だしでちょっとした躓きはあったものの、無事に馬場のじーさんと会った俺たちは隣接する施設の責任者の人と面会することができた。
施設長さんは『若い人が介護の現場に意識を向けてくれるのは嬉しい』と言い、施設を案内してくれたり、介護の現場を見学させてくれたりした後、実際に介護している介護士さんを数人集めて話をする場を作ってくれた。
色々な話を聞く中で、やはり介護用パワーアシストスーツの話題も出る。
説明によると介護用のアシスト機器は大きく分けて2種類あるらしい。
ひとつはよくイメージする介護者が身につけて重いものを持ったり支えたりするパワードスーツのような機能を持つ物。もうひとつは要介護者が身につけて動くためのアシストをする物だ。
要介護者が身につけるタイプの物は実際に身体を動かすのを補助するので完全に寝たきりになった人には使えないものの、筋肉や関節を動かすので寝たきりになるのを予防することができ、実際にかなりの効果を上げているらしくこの施設でも積極的に活用しているそうだ。
パワードスーツタイプの物も2台だけ導入したらしいのだがこちらの評価はかなり低かった。
着用すれば確かに要介護者を持ち上げたりするのはかなり楽になるらしいのだが、機材自体の重量も重く、背負えばあまり感じなくなるとはいえ装着に結構な手間と労力が掛かるうえに結局生身で支えることには変わりがないため肩と足に負担が掛かるそうだ。そのうえ価格が1台50万円近い高額で耐久年数も短く、費用対効果で考えても結局そのまま頑張って身体を使う方が良いらしい。
パワードスーツって夢があるんだけどなぁ。
現実って厳しい。
そんな施設訪問だったのだが、ひとつ具体的な収穫があった。
板垣が自身の経験から認知症患者が勝手に家から出て徘徊してしまうということに関して施設の対応を質問したところ、やはり施設でも似たような悩みがあることが分かった。
一応建物から外に出るには事務室の前を通らなければならないようになっているのでそこに誰かが居れば気がつくのだが、最低限の限られた数の職員で運営しているため常に見ていることができないらしい。そのうえ、入居している老人たちが圧迫感を覚えないように大きな窓と低いフェンスで囲われているから門以外でも出入りしようとすればできてしまう。
もちろんフェンスや壁を高くしたり門以外からの出入りが絶対にできないようにすれば防げるのだろうが、そうなるとまるで刑務所のような暮らしを入居者に強いることになってしまう。予算的にも警備員を雇用するほどの余裕はないらしいし。
そこで楠さんがブレスレットやバッチ型の発信タグを入居者に着けさせ、一定距離以上に離れた場合にアラームが鳴るような端末を職員が持ったらどうかと意見を聞いてみた。
すると職員からかなり好意的な反応と、具体的な要望が次々に上がってきたのだ。
曰く、タグをナンバーで表示できるようにとか、アラームが鳴った対象のタグとの距離が分かるようにしてほしいとか、要介護者が自分で簡単に外せないようにしてほしいとかだ。
それらの要望をしっかりと書き留め、俺たちはお礼を言って施設を後にした。
それとは別に俺もひとつ思いついたことがあったので有意義な訪問だったな。
馬場のじーさんには後で菓子折持ってお礼に行こう。うん。
「なんとかなりそうじゃね? 楠のアイデアの発信タグ。確かにGPSなんてのは前からあったけど、値段もそれなりに高かったし、端末身に着けてなきゃ意味ねぇからな。アラームが鳴って距離が分かるだけの器械なら小さく軽くもできるだろうし値段も抑えられると思うぜ?」
車に乗り込んで会社に戻る途中、相変わらずの気怠げに聞こえる口調ながら表情にちょっとだけ意欲を表して板垣が言う。
褒められた楠さんもホッとしたのと嬉しさが混ざった明るい表情で頷く。
「俺もそう思う。細かい部分は電気機器メーカーだから担当に確認できるしね。それと、俺もひとつ思いついた物があるんだ。2人の意見を聞かせてくれないか? 介護の現場見て思ったんだけど……」
帰りの車中は話すのが苦手といっていた板垣もちょっと引っ込み思案な雰囲気がある楠さんも白熱した議論を交わす場となった。
「おはよ~!」
日にちは飛んで月曜日。
俺はでかい段ボールを肩に担いで会社のミーティングルームに入った。
「柏木君、おはよう」
「おはようございます」
「ち~っす。でけぇ荷物だな」
赤橋、楠さんの2人が既に部屋に居て、俺が入った直後に板垣が入ってきた。
俺の持ってきた段ボールを見ても誰も驚いてはいない。
そりゃそうだ。
結局プランニングする商品は俺達が提案した介護関係の商品に決まった。
赤橋もネットを漁ったりして、一応『家庭用温度設定機能付き保温庫』っていう案を出した。
ヨーグルトやパン生地など一定の温度を一定時間以上保たなければいけない食品は多い。特定の用途に特化した物はそれなりにあるが、小型の冷蔵庫(50L程度の小さなもの)形状で10℃~70℃まで一度単位の温度、分~数日単位の時間設定ができるものを提案してきた。
だが、業務用では似たような機器が既にあることや、コストが結構な金額になりそうなことからそれは見送りとなった。
その介護関連の商品だが2つの候補の提案に対し、意見が割れたため週末を挟んでその間に俺提案の物のサンプルを製作することにしてその結果次第では両方プランニングしても良いんじゃないかということになったわけだ。
そんなわけで俺が提案した商品のサンプルを作って持ってきたというわけだ。
もうひとつの候補となる発信タグ&受信端末はイメージが想像しやすいために紙の資料と口頭説明だけで大丈夫そうなのでサンプルは作ってない。
というか、内容的に精密機器になるのでサンプル自体作るのは無理だし。
俺達から遅れること数分で緑山さんも到着した。
会社から伝えられた始業時間にはまだまだ時間があるのだが、特に拘る必要は無いとも言われているので早速皆に見てもらうことにする。
「結構でかいな」
「重そうね」
「あくまで素人が作ったサンプルだからな。強度もかなり余裕をみて頑丈に作ったし、実際にプロが設計して作ればもっと小さく軽くできると思う」
段ボールから取り出して組立を始めると赤橋と緑山さんが第一印象を口にするが、想定内だ。
「……っつか、コレを週末の2日間で作ったって、マジか? オメェ何モンだよ」
「ふぁぁ! ちょっと無骨ですけど、本当の売り物みたいです」
板垣と楠さんの感想はなかなか良さげだ。
俺が組み立てた物、それは幅と奥行きが20センチ、高さが60センチほどの金属の箱の上部から伸びるアームとフォークリフトの爪のような2枚の板、下部には4方に伸びる足を持った無骨な代物だった。
「んじゃ試してみよう。板垣、悪いけどそっちのパイプ椅子を並べてその上に横になってくれるか?」
「あいよ」
相変わらず気怠げに見える表情で椅子を並べると横になってくれた板垣の脇に器械を移動させ爪の高さを調節してからコンセントに接続してスイッチを入れる。
板垣の太股と背中を少しだけ浮かせるように身体を支えながら手元のリモコンで爪を伸ばし身体の下に入れる。
別のボタンを押すとゆっくりと爪が上に上がり板垣の身体を持ち上げていった。
「おおぅ! 器械にお姫様抱っこをしてもらうとは思わなかったぜ」
「あ、でもやっぱり誰かが支えないと不安定ですね」
「そうね。でも支えるだけならそれほど力はいらなそうだし、爪の形を工夫すればなんとかなりそうに思うけど。どちらにしても操作する人は必要なんだから大丈夫じゃないかしら」
「確かに。回転させるのは人力かい?」
「ああ。アームの根本にベアリングを組み込んでるからそれほど力を入れなくても回せる」
説明で分かると思うが、この器械は爪の部分でベッドや椅子から身体を持ち上げて降ろすという、単純なものだ。爪の長さは一応過不足無く60センチにしてある。
機械的な機能としては爪を前後に、それと上下に動かすことしかしない。アーム上部に爪を前後に動かすものと、本体ボックスの内部に上下に動かすための油圧シリンダーをそれぞれ1つ着けただけの単純な構造だがベアリングでアームが回転するのでベッドから人を持ち上げたら反転させて車いすに乗せることができる。
介護施設を見学して気がついたのだが、介護士に大きな負担の掛かる作業の大半は要介護者をベッドや車いすから持ち上げ別の場所に降ろすことのようだった。
そして、その作業というのは基本的に『持ち上げる』『移動する(反転させる)』『降ろす』という共通した動きになる。しかもその作業があるのはベッド、トイレ、風呂の3箇所がほとんどだ。
現在販売されている介護用のパワーアシストスーツの欠点は3つ。
着脱の煩雑さと機材自体の重さ、それから価格だ。
逆に利点はその汎用性の高さなのだが、先に言ったように必要となるシーンは車いすの乗り降りを必要とするベッドサイド、トイレ、風呂場が大部分を占めるために実際にそれほどの汎用性は必要ないのではないかと考えたのだ。
だから俺は設置型のリフトを提案してみた。
これならば持ち上げる爪部分をストッパーやレバーで動かせるようにすれば基本の形はそのままに様々な場所で使用できるようになるし、重量が掛かる器械の下部分は移動できるような足でも良いし、床にレールを設置したり、可動部分を増やせば完全に固定することもできるはずだ。
2本の爪(正確には2枚の板)だと多少不安定ではあるが、形状を工夫すれば介助なしでも持ち上げたりできるんじゃないかと考えている。
どうやって作ったかって?
俺の話を聞いて板垣が『こんな感じか?』と絵を描いてくれた。
それがめっちゃ上手かったんだが、そこからさらにあっという間に簡単な図面を引いたのには驚いた。
んで、赤橋と緑山さんがシリンダーに使用する加重計算や強度計算をしてくれた。
……コイツら全員文系なはずなんだけど、これが最近の大学生の平均技能なんだろうか?
それはともかく、そこまでやってもらえればあとは金属の加工は魔法を使ってちょちょいのちょいと。油圧シリンダーは満岡の爺さんの伝手で業者を紹介してもらって購入。電機系の加工は斎藤に頼んだ。
何せ斎藤には不本意なコスプレをさせられた貸しがたっぷりある。快く協力してくれた。
さすがに全部を週末の2日間で作り上げるのは無理だったので日曜日の夜にアリアナス王国に転移してそっちで加工と組立を行なったけどな。
赤橋と緑山さんが言ったようにこのサンプルはちょっとばかし大きくて重い。
図面通りではあるんだけど、金属剥き出しで無骨な分大きく見える。とにかくパワーと頑丈さを重点にしてあるし、ほぼ全部鉄製だしな。
このままじゃとてもじゃないが商品にはならないが、きちんとプロが設計して素材も適切な物にすればもっと小型で軽くできるだろう。
「できるって言うから任せたけど、柏木君の自宅に旋盤とかフライス盤があるのかしら?」
「え? でも普通の一軒家で親御さんは商社勤務って言ってませんでした?」
うん、そんなものはウチに無いよ。
「……コレ、溶接の跡とか加工の跡がないんだけど……鉄の一体成形って家庭でできるのか?」
そういったツッコミは無しでお願いします。
そんなこんなで結局俺達の提案した2つをセットでプランニングすることに決定した。
他のチームはおそらく一商品の提案で来るだろうし、介護という共通項があれば複数提案もおかしくはないだろうというわけだ。
それから2日間は具体的な資料作成を手分けして行った。
全体のレイアウトの作成と原価計算などは赤橋が、全体の進捗を管理して適宜指示出しをするのは緑山さん、商品の技術的資料の作成を楠さん、資料に使用するイラストや図の作成を板垣、俺は製造原価や想定納期の設定などを会社各部署などの外部へ確認する。これは電話やメールだとすぐに確認ができないので直接訪問する。
ほぼ同時進行なので常に連絡を取り合いながら慌ただしく準備を進めることになってしまった。
そしてプレゼン当日。
今回のインターンシップの参加者は合計30名。各5人ずつの6チームだ。
発表の順番は代表者のくじ引きで決まった。俺達のチームは4番目。
企業側の参加者は最初にインターンシップ参加者の案内と説明をしてくれた担当者をはじめ、人事部長、経理部長、企画課長、製造部長、生産工場の工場長など実務の責任者の方々が20名ほど。会場は大会議室。
簡単な挨拶と今回のインターンシップの趣旨の説明の後、いよいよ参加者によるプレゼンテーションが始まった。
最初のチームは充電式の調理器具の提案。2番目がウチのチームで没になった温度設定機能付き保温庫を出してきた。
プレゼンを受ける立場である企業側メンバーは、学生の職場体験ということで温かい目でそれを見守ってくれ、てはいなかった。
経理部長は原価の根拠について細かく質問し、企画課長は具体的な購買対象や広告手法にツッコミを入れ、製造の責任者達は商品の生産実現性を鋭く問い詰めた。
……容赦ねぇ!
そのせいか3番目にプレゼンしたチームは萎縮してしまって終始グダグダになってしまった。
もちろん学生相手ということで言葉に刺はないし、叱責が飛ぶようなこともなかったんだけど、それでも矛盾や見通しの甘い部分などを容赦なく指摘されればトラウマになりそうだ。
んで、とうとう俺達の番。
インターンシップの体験プレゼントはいえ、実際のものと同様に事前に内容を会社側に話していない。
完全に自由に内容を決めて良いという反面、大恥を掻く可能性もあるやり方だ。
まず資料を2部ずつ配布する。
「こ、今回ご提案させていただくのは2種類です。えっと、昨今の日本の超高齢化社会を反映して介護の需要と重要性が高まっています。そこで、私たちのチームは実際に介護施設を訪問して話を伺いながら今回の商品を考えました」
「……介護関連の商品は一時期様々な企業が一斉に参入したが、そのほとんどが失敗して撤退している。それを踏まえての提案なのかな?」
赤橋がプレゼンターとして口火を切ると、企画課長がまず牽制の言葉を放つ。
「はい。撤退した要因は様々だろうとは思いますが、逆にいえば多くの商品が市場テストを行っていたと見ることも出来ます。私達はそんな多くの商品を見て、実際に試した施設の職員の方から意見を聴取して内容を決めています」
企画課長の目力にちょっとビビった赤橋を緑山さんがすかさずフォローして言う。
「え、えっと、そ、それでは最初の商品です。あ、青色の表紙の資料をご覧ください……」
先に提案したのは認知症などの要介護者に使用する距離検知式アラームだ。現物はないのでイラストと文字資料のみだ。それでも板垣のイラストはかなり精密で具体的なイメージを持ってもらうには充分だった。
「ふむ。なるほど測量機器で使われる光波測距儀を利用するのか。しかし測量機器はそれなりに高価格な物が多い。その機器も高額になってしまうんじゃないか?」
「いえ。測量機器が高額なのは測定に精密さが求められるからです。この機器では方角と大雑把な距離が測れれば良いので低価格で抑えられるのではないかと考えています」
「建物内でも使用できるのかな?」
「電磁波が減衰しますので精度は落ちるそうです。ですが…」
「元々それほどの精度は必要としない、か」
企画課長と製造部長からの質問に緑山さんが淀みなく答えると2人は納得したように何度か頷いた。
さらに経理部長からは原価計算や損益分岐点、想定している販売数などの質問が入り、赤橋が無難に答えていた。
感触としては悪くない、と、思う。
続いて介護用リフトのプレゼンを始める。
プレゼンターは板垣だ。
事前に組み立てておいたリフトの覆いを外すと、ちょっとしたざわつきと共に興味深げな視線が集中する。
今のところ現物を用意しているチームはいなかったので一際気になっていたのだろう。結構大きいしな。
「えっと、実はお、いえ、私の家は2ヶ月前まで要介護4の祖母がいました。介護は主に介護士の方が行っていたのですが、それでもトイレの介助などでベッドから車椅子に、車椅子からトイレの便座にといったふうに要介護者を持ち上げたりする必要があって、22歳の男である私でも結構な労力を必要としました。そこで……」
説明が終わると、企業側の人から様々な質問やツッコミが飛んでくるが、板垣はそれら全てに的確に落ち着いて答えていく。最初に会ったときの気怠げな雰囲気は微塵もない。
実体験が伴うためか、提案内容が決定してからかなり積極的に資料作成やプレゼンの練習を行っていたのだ。
俺と楠さんが機器の操作をしなからリフトの実演をして、さらにいくつかの質問に答えて終了した。
当然俺達の後には2チームがプレゼンを行ったのだが、かなりやりづらそうだった。ちょっと申し訳ない。
んで、人事部長からの総評を頂き、インターンシップは終了した。
「みなさん、お疲れ様でした。各自工夫を凝らした素晴らしいプレゼンテーションでした。最初にお話ししたとおり今回当社のインターンシップに参加したからといって直接採否が左右されるわけではありません。ですが、今回体験していただいた内容は当社に来る来ないに関わらずみなさんの糧となるのではないかと思っております。
尚、直接左右はされませんが、選考の際に評価の加点とはなりますので当社としても是非応募していただけたらと考えております。
当社が加盟している一般社団法人日本経済団体連合会の指針により、採用活動は2月からエントリーシートの受付、4月から面接開始となります。それでは改めて1週間お疲れ様でした」
『ありがとうございました!』
最後に担当してくれた社員の方が挨拶して本当に終わりである。
因みにプレゼンの結果だが、さすがに一発採用とはならなかった。特に介護用リフトに関しては支えるための土台の検討が十分とは言えないという厳しめのお言葉を頂くことになった。床に固定するにしても足を着けるにしても重量を支えるために床の補強等の工事が必要になるのでないかという部分だ。そうなるとコストメリットが薄くなるのでその点がまだまだ弱かったらしい。
残念ではあるが、そりゃ一大学生が素人考えで出したアイデアがそのまま採用されるなんてことはまず無いので仕方がない。
ただ、アラームの方は割と良い評価を頂き、企画会議で検討することにしたらしい。……その場合の著作権やら商標権ってどうなるんだろ? まぁ、別に良いんだけど。
そんなわけで、インターンシップが終わった俺達だが、折角知り合いになれたんだからということで打ち上げをすることにした。
で、今会社の前で駄弁ってる。
「結構プレゼン良い出来だと思ったんだけどなぁ」
「仕方ないわよ。所詮は素人のアイデアだし。でもこの会社に応募したときは結構有利になると思うわよ」
「それが何よりですよぉ。周りの友達で内定もらってる子が多くてちょっと焦り気味だから。……今回も小説入選しなかったし。やっぱBLは厳しいのかなぁ(ボソッ)」
何やら楠さんから聞こえた気がするが、触れちゃいけない気がするのでスルーしよう。
「えっと、それにしても板垣遅いな。あ、来た」
会社の前でこんな意味もなく雑談してるのは板垣を待っていたからだ。
会議室を出たところで、会社の担当者が板垣を呼び止めたので先に出てきたんだけどどうしたのやら、気になったのは俺だけじゃなかったようで全員がこうして時間を潰しつつ待ってたわけだ。打ち上げの店自体は既に決まってるんだけどな。
「悪ぃ! 待たせたな!」
気怠げな仏頂面が満面の笑みにチェンジしてる。
「ご機嫌ね。ひょっとして」
「おう! 内定もらったぜ! 4月から工場で実習して本社勤務だってよ」
……マジ?
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