第90話 Side Story 茜と聖女 後編

 Pipipipipi

 朝、目覚まし時計のアラームが鳴り、徐々に意識が覚醒していく。

 Pi、カチャ。

「あ、おはようございます」

「ふへ? あ、あれ? あ、お、おはようございましゅ」

 ビックリした。ものすごくビックリした!

 ぼんやりと目を開けると、そこにいたのは朝の光にキラキラと輝く銀色の髪の美女。

 一瞬、何がどうなったのかわからず、カミカミの挨拶をしてしまう。

 そうよ。昨日はメルさんが私の部屋に泊まったんだった。

 ベッドの横に布団を敷いて、ベッドには私が、布団はメルさんが使った。

 お姫様に私より低い位置で眠らせるなんて落ち着かないのでベッドを使ってもらおうとしたんだけど、聞き入れてもらえなかったのだ。

 

 改めてメルさんに挨拶をして、布団を畳む。

「えっと、布団を床に敷いて寝るの、慣れてないと思うんですけど、大丈夫でしたか?」

「大丈夫です。とても寝心地良かったですよ。ありがとうございます」

 う~ん。朝から私の部屋にこんな気品のある美人さんが居るのがもの凄い違和感。

 よく家に泊まる奈っちゃんも結構可愛い女の子ではあるんだけど、なんか、質が違いすぎる。

 よく考えなくても正真正銘本物のお姫様だし。

 姿見に映る自分の容姿の平凡さに悲しくなる。

 けど良いもん。裕哉は可愛いって言ってくれるし。たまに、だけど……

 

 気を取り直して、私は今日自分が着る服と、着替えのないメルさんのために合いそうな服を見繕う。

 私とはそれほど身長は変わらない(ちょっとだけ私の方が高いかな?)ので問題ないだろう。

 そんで、無難なキャメルのノースリーブマキシワンピースにモスグリーンのカーディガンをチョイスした。

 お姫様って着替えも召使いとかにしてもらうのかなって思ってたら自分でできるそうだ。

 良かった。考えてみたら裕哉達と旅してたんだから、そりゃそうよね。

 ちなみに、今メルさんが着ている下着は昨日の帰りにコンビニで買った。ホントに着の身着のままだったので。

 

 メルさんが寝間着代わりにしていたハーフパンツとTシャツを脱ぐ。

 腰、細! んで、足、長!!

 おかしい。ウエストの位置が私と全然違う。

 ウエストリボンを絞ると普通のロングワンピースの丈に。何故? 私が着るとマキシ(くるぶしくらいまでの丈)なのに!

 リボンに余った上側の生地がフワッと掛かって、深窓のお嬢様っぽいシルエットになってる。

 そうかぁ、ホントはこういうデザインなのねぇ、この服って……

「えっと、変じゃありませんか?」

「大丈夫よ。とっても良く似合ってる」

「なんで涙目?!」

 聞かないで。

 

 悲しみをこらえて私も着替えることにする。

 今日はバイクに乗る予定は無いので黒のレギンスにキャメルのキュロット、薄い青のキャミソールにデニムのシャツでいいか。

 着ていたパジャマを脱いでレギンスに足を通していると視線を感じる。

 あの、同性とはいえ下着姿をそんなに見られると恥ずかしいんですけど?

「えっと、メルさん、どうかしました?」

 見る間にメルさんの表情が曇ってくるのに見かねて尋ねる。

「いえ、その、アカネさん胸が大きくて羨ましいと……あ、ご、ごめんなさい」

 そういうことね。

 たしかにメルさんの胸は、少し、というか結構小さめではある。

 あれだけスリムならそうなるだろうとは思うけど、多分Bカップ無いくらいかな?

 私の唯一のアドバンテージかも。というか他は負けっぱなしだし……

 

「男の人ってやっぱり胸の大きな女性の方がいいんですよね? ユーヤさんも……」

「え、えっと、人による、かな?」

 裕哉以外の男の人の好みなんかは知らないしどうでも良いけど、裕哉に関して言えば、かなりのおっぱい星人であることは確かだ。

 ただ、おっぱい星人であることと大きいほうが好みであることはイコールじゃないので何とも言えない。っていうか聞いたことないし、聞けないよそんなこと。

 だいたい、メルさんが胸まで完璧だったら泣くよ? 私が。

 ただでさえパーフェクトボディのレイリアさんがいるのに。

 

 これ以上容姿に関して考えてるとお互い無意味に気まずくなりそうなので、さっさと着替えを済ませ顔を洗う。ついでにメイクも少しだけ。

 そう言えば異世界の人達ってお化粧どうしてるんだろ?

 少なくともレイリアさんとティアちゃんはメイクとかしてる様子無いし、メルさんも薄くリップを塗ってるくらいみたいだけど。

 つくづく世の中って不公平だ。

 

 階段を下りて、まずは庭に出る。

 エリザベスの犬舎に入り、水を交換してエサを補充。

「ワン! ワゥフ」

 ベスがしっぽをフリフリ、近寄ってくればそのすぐ後を6匹の仔犬たちが続く。

 もうすぐ生まれて3ヶ月が経つ。

 生まれたときは片手に乗るくらいだったのに今では豆柴くらいの大きさまで成長した。

「これは、ユーヤさんが言っていたシャドーウルフの子供達ですか?」

 メルさんが黒い仔犬を見て言う。

「はい。裕哉の話ではメルさんが2匹引き取ってくれるって」

「そうです。とても希少な幻獣ですから、ありがたいですね」

 何でも、3匹生まれたシャドーウルフの内、1匹は裕哉が引き取り、残りはアリアナス王国で引き受けてもらう事にしたらしい。

 とても珍しいだけでなく、強くて特殊能力も持っている幻獣種は狙われやすいので成長するまでは王城で育てられるそうだ。

 

 仔犬のお世話と監視はローちゃん(影狼くん)に任せて、ベスにリードを繋いで外に出る。

 王城でどう育てるかなんてことを話ながらメルさんと一緒に暫しの犬の散歩。

 といっても、仔犬が心配なのか、最近はごく近所を少し回っただけでベスが帰りたがるのですぐに終了してしまった。

 回収したベスの“アレ”を外のゴミ箱に捨て、リードを外してベスを犬舎に戻す。

 ローちゃんの身体を登ったりして遊んでいた仔犬たちがベスにまとわりつく。

 すっかりパパとママになっているローちゃん&ベスに和む。

 

 家に入って手を洗い、2人でリビングに入ると、既にお父さんが食卓に着いていた。

 お母さんはキッチンで食事の支度中だ。

 私もすぐに手伝いに入る。といってもパンを焼いたり食器の準備するくらいだけどね。

 メルさんも何か手伝うとは言ってたけど、そんなに人数が居てもやることはないので座っててもらう。

 丁度準備が終わった頃に信士もリビングに入ってきた。

 食卓に朝食を並べて全員で席に着く。

 

 軽く雑談をしながらの朝食。

 お父さんの目の下には隈ができていて表情も疲れが満載である。

 どうやら昨夜はかなり絞られたらしい。多分それでも懲りてはいないんだろうけど。

「昨日のトンネル事故でヒーロー現るだって」

 朝の報道番組を見ながら信士が面白そうに言う。

 まぁ、普通に考えれば面白ネタだよね。

 私は正体知ってるから微妙だけど。

「マスコミなんて大袈裟に言ってるだけだろうが、それでもこれだけ騒がれるんだ、よっぽどの活躍だったんだろうな」

 意外にもお父さんから好意的な意見が。

 正体が裕哉だと知ったらどんな顔するんだろうか。

 

「手を翳しただけで怪我を治したとか、瓦礫を1人で消し去ったとか、さすがに盛りすぎだって思うけどなぁ。でもこんな能力もってたら面白そうだけど」

「はたから見ればそうだろうが、多分、良い事よりも嫌なことの方が多いぞ。今回のことだって、警官や消防隊員でもないのに勝手に中に入ったことに批判する人もいるだろうし、別の災害とか事故とかがあれば勝手に期待し始める人もいるだろう。

 それで間に合わなかったりして死者でも出れば今度は恨む人だっているかもしれない。『あの災害には行ったのにどうして自分の所には来てくれなかったんだ』ってな」

 お父さんの言葉にショックを受ける。

 確かにそうだ。今回は奈っちゃんのことがあって裕哉は行ってくれた。

 でも裕哉が無関係の人のために毎回駆けつけることができるわけじゃない。

 誰にもそんなことを頼めるはずがないし、義務もない。

 でも、そのために裕哉が人から恨まれる?

 

「どこの誰かは知らないが、善意でしたことが仇になって返らなければいいけどな。本来大きな力ってのは組織に属してこそきちんと発揮できるもんだ。人間1人で出来る事には限界があるからな」

「世の中ってロマンが無いなぁ」

 珍しくまともな大人の意見を言ったお父さんに信士が暢気に応える

 けど私はそれどころじゃなかった。

 頭の中にお父さんの言葉が繰り返し響く。

 私は急に味のしなくなった朝食を何とか口に押し込んでいった。

 

 

 

 考えても結論のでない不安を何とか押し殺し、メルさんと一緒に裕哉の家に向かう。

 そこでレイリアさんとティアちゃんに合流して買い物をする予定なのだけど、残念ながら裕哉はファミレスでアルバイト、亜由美ちゃんは部活だそうで、一緒には行けないらしい。

 目的はメルさんの服と滞在のための日用品だ。

 なので昨日のうちに裕哉からお金を預かっている。

 でも、裕哉も大学生なのにポンッと出せるのがビックリだ。

 いや、まぁ、ネットで売ってるアクセサリーで稼いでるのは聞いてるけどさ。

 前に羨ましいって言ったら、手伝いのアルバイトに誘われたけど、それはさすがに断った。

 条件的には相当優遇してくれるってことだったけど、私が裕哉に依存しすぎるのは良くないと思うから。

 いろんなことで私は裕哉に守られてるけど、私もしてもらうばかりじゃなくて、できるだけ対等な立場にいたいからね。

 

 2人と合流して駅に向かい、電車に乗る。

 駅前にもデパートはあるし近場ですませることもできたのだが、折角なので都心まで出る事にした。なんでもレイリアさんとティアちゃんも電車には乗ったことがなくて、強い要望があったのだ。

 確かに基本的に移動はバイクだし、免許取る前までは必要なら裕哉が家の車を使ってたしね。

 ちなみに私は都心に行くときはバイクは恐いので電車派だ。

 異世界から来た3人は電車に興味津々であれこれと質問してくる。けど、あんまり答えられないのが悲しい。

 この人達と話をしていると、私があまりにものを知らないことに泣けてくる。

 少なくとも知っているつもりでも理解はしていないことが多い。というか多すぎる。

 もっと勉強しよう。そうしよう。うん。

 

 40分くらいで池袋駅に到着する。

 ここならいろいろな店があるので必要なものは全て揃う。

 でも、いつも思うのだけど、何で駅の東にあるのが西武百貨店で西にあるのが東武百貨店なんだろう。紛らわしいのでチェンジして欲しい。

 もっともどちらもお値段が優しくないのでほとんど行かないけどね。

 なので比較的リーズナブルなものを中心に扱っているデパートに入る。

 まずは下着かな?

 

 下着売り場でちょっと優越感に浸り、カジュアルファッションの店ではメルさんがスキニージーンズを試着した姿に愕然とし、移動するたびに増えるギャラリーにウンザリとする。

 飛び抜けて素晴らしい素材の3人+平凡な1人。

 普段自分達が来たときとは明らかに異なるテンションの店員たちに世の中の切なさを知った。

 切実に味方が欲しいよ。

 

 靴も見てみた。

 どうやら異世界の人達にはヒールの高い靴はあまり評判が良くないみたいで、アウトドア系や足首をしっかりとホールドするようなローヒールのものを中心に見ていく。

「あの、お客様のそのサンダル、珍しい形ですね。それに色合いも。革、ですか?」

 いろいろと見ていたら店員さんがメルさんの足下に目を留めて聞いてきた。

 メルさんが履いているのは足首までの編み上げのサンダル。

 ラフになりがちな編み上げサンダルなのにすごく優雅な編み方で、独特な光沢のある革が使われている。

「はい。私達の国では比較的ありふれているのですが、オーガ「メルさん! オーガンジーじゃないですってば。牛革ですよね?」の、あ、はい、そうでしたね」

 危ない。油断してたら変なこと言いそうになってるし。

「そ、そうですか」

 店員さんは私の剣幕に戸惑いながらもそれ以上は突っ込んでこなかった。

 

 靴は絶対に今回買わなきゃいけないというわけでもないので、とりあえず一旦お店を出る。

 私が慌てて言葉を遮ったことでメルさんも拙いことを言いかけたのに気付き頭を下げてきた。

「アカネさん、申し訳ありませんでした。こちらでは魔物の類はいなかったのでしたね」

「あはは、まぁ気を付けて下さいね」

「そうじゃぞ、メルスリア。それにオーガはこちらの世界では、はんまゆう「板垣先生に怒られるので止めて下さい!!」そ、そうか」

 まったく! 最近レイリアさんが変なことばかり覚えてくる気がする。

 

 お昼が過ぎたので食事をすることに。

「レイリアさん、パフェは3つまでです」

 食事を終えてデザートをつつきながら釘を刺す。

 裕哉にも言われてるしね。ほっとくといくつでも食べようとするので最近では数量制限されている。今日は裕哉がいないのでしれっと追加しようとしていたのでメニューを取り上げた。

「ケチじゃのう。まぁ良い。それで? アカネは何を気に病んでおる?」

 不満そうに唇を尖らせていたレイリアさんが突然真面目な顔で尋ねてきたことに驚く。

「え? べ、別に何もありませんよ」

 内心を見透かされた気がして思わず誤魔化してしまう。

 

「お父様の仰ったことを気にしているのですか?」

 メルさんにはバレてましたか。そうですか。

「う~、はい。裕哉が人を助けたことで逆に恨まれるかも知れないって聞いて……」

 奈っちゃんが心配だったとはいえ、自分のせいで裕哉が辛い思いをするのは耐えられないとこぼす。

「確かに、助かった人がユーヤさんに感謝することもあればそうでない人が恨むこともあるでしょうね。私は為政者の側の立場ですから常にその想定はしています。多くの人を救おうとすればまたそこからこぼれてしまう人も多くいます。それは仕方がないこと、とは言いませんが、それを許容しなければならないのです。力を持つということはそういうことでもありますから」

 

 私の懸念をそういってメルさんが慰める。

「でも、それじゃ力を尽くして人を助ける事なんて出来ないじゃないですか」

「ユーヤさんには既にその覚悟がおありだと思いますよ。ユーヤさんはウィルテリアスで多くの人を救いました。しかし同時に助ける事が出来なかった人も多くいます。その中には実際に恨みをぶつけてくる方もいましたから。それでもユーヤさんは戦いを諦めることも人を救うのを躊躇することもありませんでした」

 メルさんがどこか遠い風景を見るかのような目をする。その表情には憧憬が籠もっているようにも見えた。

 

「ふむ。我にはアカネが何を気にしているのか理解ができぬな」

 レイリアさんは心底不思議そうな顔で私を見る。

 ティアちゃんもキョトンとした表情だ。

 あれ? 私がヘンなの?

「主殿が人を救うかどうかは主殿自身の決断じゃ。その結果は良いことも悪いことも主殿が負うのは当然じゃろう。じゃがな、我等は何のために主殿の側に侍っておる? 古今、男は女が支えるものじゃ。主殿が傷つくなら我等が癒せばよい。主殿だけで背負えぬなら共に背負えばよいのじゃ」

「アカネさんはもうユーヤさんを支えているんですよ?」

 ティアちゃんの言葉に驚く。

 私が裕哉を支えている?

 

「アカネさん」

「は、はい」

 メルさんの声でそちらに目を向ける。

 そこにはすごく優しくて、それでいて少し切なげな瞳が真っ直ぐに私に向けられていた。

「アカネさんはユーヤさんにとって特別な存在です。ユーヤさんはこの世界に帰るために途方もない苦難を乗り越えました。その原動力となったのは間違いなく御家族と、そしてアカネさん、貴女がいたからです。私達は貴女を押しのけてユーヤさんの側に居たいとは思っていません。貴女と共に居るユーヤさんの側に居たいと思っているのです」

 そうなのだろうか。

 こんな凄い人達がいるのに、私もいて良いんだろうか。

 

「我等も同じじゃよ。それに主殿は良くも悪くも力を持っておる。1人で支えるのは難しかろう。主殿が道を間違えたときには力ずくでも正さねばならぬし、我等全員で丁度良いくらいじゃ」

「はい! それに沢山いた方が子育てとかも楽ですよ?」

 ティアちゃん、すぐにそっちに話を持って行くのやめて。

「えっと、メルさんはそれでも良いんですか? 王様だって王妃様1人ですよね?」

 私は仲の良さそうな王様達を思い浮かべつつメルさんに尋ねる。

「え? 陛下には側妃が4人いますけど」

「は? で、でも王城ではいつも王妃様しか一緒に居る人いませんでしたよ? それに子供で王位継承権のあるのがレオン王太子殿下とメルさんしかいないって」

 え? あんなに仲睦まじいのに他にもお妃様いるの? それも4人? ってことは全部で5人?

 

「ああ、国王陛下は王家に婿入りしたんです。元は公爵家の次男で一応王家の遠縁にあたるのですが王位継承権は末席に近かったそうです。ただ、先王の嫡子の男子が全て戦死してしまったので王女であったお母様が婿を取ったのです。ですのでお母様の子である兄と私が継承権上位となっています。側妃の方の子にも一応の王位継承権はあるのですが、他にも近い血縁者がいるので順位が低いのですよ。そういった経緯なので厳密にはアリアナス王国は国王陛下、王妃陛下の共同統治なのです」

 そうだったのか。

 なんだか裏切られたような気分ね。別に騙してたわけじゃないんだろうけどさ。

「じゃ、じゃあ、メルさんも、その、裕哉が何人もの女の人と、ハーレム? みたいのを築いても良いんですか?」

「誰でも、というわけではありませんが、その、男の人はそういうものだと聞いていますので。アカネさんとレイリアさん、ティアとならば是非」

 なんか、流されそうになってる自分がいるんですけど……

 確かにレイリアさんとティアちゃんなら良いかとか思ってたけどさ。

 

「我とティアは受け入れてくれると言っておったではないか。そこにメルスリアが加わっても大差あるまい。それにだ」

 レイリアさんがそこまで言ってから、私にズイッと顔を寄せて続ける。

「主殿の体力だと1人で受け止めるにはなかなかに大変では無いか?」

 まるっきりスケベ親父の顔でニヤニヤしてた。

 瞬間的に私の顔が熱くなる。

 いや確かにそうだけども。いつも途中で意識が無くなるけども。起きたときに裕哉に回復魔法を掛けてもらわないと立てないけども。

 人から指摘されると恥ずかしいわよ!

「そ、そんなに凄いのですか?」

 メルさんが興味津々、かぶりつくように聞いてくる。

 ティアちゃん、舌なめずりするのはどうかと思う。

 

「し、知りません! さ、さぁ! 買い物の続きに行きましょう!!」

 居たたまれなくなった私は強引に席を立ってレジに向かう。

 後ろからブーブーとなにやら聞こえてきたが無視よ!

 会計をすませ、お店を出たところで携帯が鳴る。

 表示は、裕哉?

「もしもし? 裕哉? バイト中じゃないの?」

『あ、急に悪い。今休憩中だから大丈夫だ。さっき親父からメールきて、今日の夜にメル連れてきてくれって、茜も一緒に』

「私も?」

『みんなと一緒にいるんだろ? 買い物終わったらウチに来てくれよ。俺も夕方にはバイト終わるから「柏木く~ん! ごめんホールのヘルプ!」あ、は~い! ゴメン。んじゃ』

 切れちゃった。

 それにしても、おじさんがどうしたんだろ?

 まぁ、行けばわかるか。

 

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