第35話 勇者の再訪問Ⅲ

「俺を連れて、ウィルテリアスに戻れるか?」

 俺の一言にレイリアが睨むように視線を重ねる。

「ならん!」

 レイリアの強烈な拒絶。

「いや、とりあえず出来るかどうかを知りたいんだけど」

「それを聞いてどうする気じゃ? 前回の時とは状況が違う。仮に向こうに行けたとしてこちらに戻ってこれるとは思えぬ。おそらく女神の助力も得られぬであろう。ましてやこの度の事は向こうの世界の人族同士の争いじゃ。主殿には関わりの無い事であろう。メルスリアやブルーノ達の事が心配なのはわかるが手を出すべき事ではない」

 そこまで言われて俺も二の句が継げなくなる。

 確かに向こう異世界に行ってもまた帰ってこれる保証はない。そして、こちらの生活を全て捨てられる程の覚悟があるかと問われれば即答は出来ない。

 だが、それでもメル達を簡単に見捨てる事もまた出来そうにないのだ。

 

「何? 喧嘩?」

 そんなことを聞きながら亜由美がリビングに入ってきた。

 お風呂から上がったらしい。

 タオルで髪を拭きながら俺の様子を伺うように視線を向けてくる。

「いや、何でもない。麦茶飲むか?」

「ん。ありがと」

 俺は亜由美に悟られないよう表情に気を付けながら麦茶をコップに入れて亜由美に渡す。

「アユミからも言ってやってくれ。主殿が我と褥を共にするのを嫌がるのじゃ」

「ブッ!!」

 空気を読んで誤魔化すのを手伝ってくれるのはいいが、その言い訳はどうなのよ?

「しょうがない。兄ぃはヘタレな童貞だし」

「そうなんですか?」

 いや、ティアも乗っからなくていいから!

 亜由美の奴、何度も何度も人のことを童貞と連呼しやがって。

 とにかく一度亜由美とはじっくり話し合う必要があるだろう。兄の威厳というものを叩き込んでくれる。

 

 しばらく皆で話をしていると母さんが帰ってきたのでレイリアとティアの紹介(レイリアは2度目だが)をし、しばらく泊まっていくことを了承してもらった。

 実に簡単に許可されたのでビックリ。

 それから母さんのために作り置きしておいた食事を温め直して出し、俺は部屋に戻る。他の皆は母さんも交えてお話し中である。

 そうそう、勿論母さんが帰ってくる前にティアはレイリアが偽装の魔法で耳としっぽを隠してある。

 明日も茜が家に来てから全員で出かける予定になっている。

 ちなみに今日の買い物や外食も俺の財布から出ているのだが、もしかして明日以降もそれが続くのだろうか? ……貯金なくなりそう……

 

 

 部屋に戻ってベッドに横になり考える。

 もちろん帝国と王国の戦争の事だ。

 レイリアが言ったように、この戦争はウィルテリアス大陸の出来事であり異世界人の俺には関係がない。完全な部外者と言えるだろう。向こう異世界の事は向こう異世界の人達、特に戦争の当事者達が解決するべきだとは思う。

 そんなことは判っている。けど、割り切ることは出来ない。

 王国で過ごしたのは実質2年に満たない期間ではあるが、それでも俺に対して最大限の配慮と協力をしてくれていた一番の国だったし、王国の人であるメルとブルーノとは一番長く一緒に旅していた。その他にも世話になった人が沢山いる。

 対して帝国にはそれほど良い印象はない。貧富の差が著しく大多数の民衆は貧しかった。こちらの世界で言えば北の将軍様の国が印象としては近いかもしれない。いや、行ったことはないんだけどな。

 そんなこともあって、今回の事を聞いてもどうしても王国側に肩入れしたくなってしまう。

 

 とはいえ、だからといって必死の思いで帰ってきたこちらでの生活を全て捨ててまでとなると正直躊躇してしまう。

 行ったところで役に立てるとは限らないとか部外者が手を出すべきじゃないかもしれないとか言い訳ばかりが頭を過ぎる。それでも知りながら見捨ててこちらの生活を続ける事が出来るほど俺の精神は強くない。

 我ながら中途半端で優柔不断なのが嫌になる。

 

 実際、行くだけならば何とかなると思う。

 今回ティアが来る事が出来たのはおそらく召喚時にレイリアと接触していたことで召喚に巻き込まれた形で一緒に来たのだろうと思う。

 ならば送還する時に送還対象と接触していれば同じように転移が出来るはずだ。

 仮にレイリアが協力してくれなくても『影狼』を送還する時にくっついて行けば向こう異世界には行くことは出来るだろう。

 問題はどうやってこちらに帰ってくるかだ。

 前回はヴァリエニスクソ女神絡みでの召喚だったから目的を果たした後女神の力で帰ってくる事が出来た。実際に送還の魔法を起動したのは聖女メルだが女神の力が大きく関与していたことは間違いない。本人がそう言ってたしな。

 しかし、今回は自分の意志で行こうとしている以上、女神の力添えは期待できない。自力で何とかしなければならないだろう。

 一つ思いついた事はあるが上手くいくか試してみる必要がある。その為には茜の協力を取り付ける必要があるのだが、果たして素直に納得してくれるだろうか。

 明日にでも話をしてみるしかないか。

 

 

 

 そんなこんなで今は翌日の夕方、自宅のリビングである。

 この場には茜、亜由美、レイリア、ティアと俺の5人が集まっている。

 母さん? 本日もお仕事です。

 昼間にレイリアとティアを観光がてら案内するように亜由美に頼み(おかげで諭吉先生が2名殉職してしまった)、俺は茜と実験やら準備やらで色々と動き回っていた。

 そしてある程度目算が立ったので亜由美達が帰宅するのを待って全員に話をするために集まってもらった。

 全員で冷たいお茶を飲み、落ち着いたところで話を始める。


「レイリア、ティア。俺はもう一度ウィルテリアスに行って帝国と王国の戦争に介入するつもりだ」

「「!!」」

「レイリアの言うように本来部外者の俺が手を出す事じゃないかもしれないけど、王国には仲間や世話になった人達が大勢いる。帝国の目的は判らないけど、知りながら見捨てることだけは出来ない」

「……本気かの? あれほどの労苦を経てようやく自らの世界に帰ってきたというのに、再び戦いの中に戻ろうというのか? 況して今度はどうやって帰ってくるつもりじゃ? まさか二度と戻らぬつもりではあるまい?」

「ああ。もちろんまた帰ってくるつもりだ。それもさっさと戦争を終わらせて、夏休みが終わる前にな」


 幸い大学が始めるまでまだ2週間以上ある。大学生って夏休み長くて最高ですな。学生バンザイ! もっとも3年になると就職活動で休みどころでは無いらしいが。

 流石にたった2週間で全て解決とまでは無理だろうが、最低限帝国が侵略の意思を頓挫させるくらいのことはしたい。

「どうしても意思は変わらぬか? 我が代わりに王国に助力しても良いぞ? さすれば態々主殿が出向かぬとも我が帝国の軍程度蹴散らしてその意思を挫くことも出来よう。結果としては同じであろう?」

「……レイリアの気持ちは有難いよ。本当に。けど、これは俺の我が儘なんだよ。別に戦いたいわけじゃ無い。けど、首を突っ込む以上俺自身が俺の意思でやるべきだと思う」


 自分の世界に帰った俺をそのままにしておきたいというレイリアの気持ちは本当に有難いし、レイリアが俺の代わりをしてくれると言うのは正直心が揺れるけど、誰かを身代わりにして自分が安全な場所でのうのうとしている事は出来ない。ましてやその結果に責任が取れないのはもっと嫌だ。

「じ、じゃがどうやって帰ってくるつもりじゃ? 女神の助力は見込めぬぞ?」

「ああ、方法は考えてある。レイリアも知ってるだろう? 召喚魔法では稀に召喚した魔獣が丁度狩や戦闘をしている時にその相手が一緒に召喚されてしまう事があるらしい。今回ティアが一緒に来る事ができたのもソレだろう? だから俺がこっちの世界で従魔契約をした動物を向こうの世界で召喚してそれを使う。一応上手くいくかは実験済みだ」


 俺が茜に相談したのはこの事だ。

 魔獣がいないこの世界で普通の動物相手に従魔契約ができるかどうか。

 そして出来たとしてもどの動物を対象とするか。

 一緒に転移しようというのだからある程度の大きさは必要だが、そんな大きさの動物を従魔にするのは簡単にはいかない。まさか動物園の動物を勝手にするわけにもいかないし、野生動物だと俺が向こう異世界に行っている間に死んでしまう事も考えられる。

 そこで考え付いたのが茜の家で買っている超大型犬であるグレートピレニーズのエリザベス(♀)だ。

 あれなら大きさも成人男性並にあるし、まだ若くて健康だし、突然召喚したとしても後でフォローが効く。

 その為に茜には今回のことを説明して、散々反対されたが何とか協力してもらう事が出来た。もっとも条件を呑まされる事になったが。

 試験的にこちらの世界で従魔契約と召喚・送還を何度か試してみたが問題はなさそうだった。元々俺に結構懐いてくれていた事もありあっさりと従魔契約も出来たしね。

 取り敢えずは大丈夫だとは思うが、万が一上手くいかなかった場合はクソ女神に土下座するなり脅迫するなりどんなことをしてでも帰ってくるつもりだ。


 俺の言葉にレイリアは苦虫を噛み潰したような表情で俺と茜を睨む。

 いや、そこまで反対されると流石にちょっと凹むんですけど?

「しかしのう……」

「私は!」

 さらに何かを言おうとしたレイリアの言葉を遮るようにそれまで黙っていたティアが話し出す。

「私は、ユーヤ様のお側に居られればそれでも良いです。でも! 王国にはメルさんとブルーノさんが、他にも大好きな人達がいます。どちらかしか選べないのなら私はユーヤ様といたいです。けど、諦めないで良いのなら皆さんの力にもなりたい」

 ティアが潤んだ目でそう言いながら俺を見詰めていた。

 こちらの世界に来てからティアは驚き、嬉しそうにしながらも何処かその表情に陰があるように思えた。多分メル達が悲壮な覚悟でもって自分を逃がしてくれたのを気に病んでいたのだろう。本来は好奇心旺盛で快活な娘なのだ。


 俺が再度意思のこもった視線をレイリアに向けると、ようやく諦めたように大きく溜め息を吐いた。

「ええい! 全く相変わらず頑固な主殿じゃ! 好きにせい!!」

 そう言いながらも少し嬉しそうに見えるのは気の所為だろうか?

「……えっとさぁ。話が全くわからないんだけど……」

 ここまで完全に空気だった亜由美が小さく手を挙げて言う。

 ……そういえば居たんだっけ? すっかり完璧に忘れてたよ。

「ひど!!」

 しょうがないのでこれまでの状況と俺が異世界を再訪問する事を説明する。


「私も行きたい!!」

「アホか! 遊びに行くわけじゃねぇよ。大体亜由美オマエ来週から学校だろうが」

「ぶぅぅぅ! えっと、ほら、兄ぃだけじゃ心配だし」

 何だよその取って付けた様な言い草は

「大丈夫よ亜由美ちゃん。今回は私も付いて行くから」

「ええぇぇぇ!! ズルイ!!」

 これまでの話を黙って聞いていた茜がそう言うと更に亜由美が口を尖らせる。

 ただこの発言はレイリアとティアも驚いた様に俺を見た。

 

 そうなのだ。俺が今回茜には呑まされた条件が『絶対に一緒に連れて行く』というもので、最終的に俺も了承せざるを得なかった。

 ただ、流石に戦場へは連れて行けないので安全な王城で大人しく待っていてもらうことになっているが。

 結局それでも納得しない亜由美に、今回の件が無事終息したら改めて連れて行くことを約束するはめになった。


「まあ、主殿の帰還が上手く行けば後はどうとでもなるじゃろう。我がティアの時と同様に連れてこれば良いのだからの。して、いつ出立する?」

 納得してくれたのか諦めたのか、レイリアが苦笑いをしながら聞いてくる。

「できるだけ早いほうが良い。明日の早朝にしよう」



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 ウィルテリアス大陸中南部。アリアナス王国西部、山と川、森に挟まれた場所にある東西に延びる平原の東側、王国最西部の都市フリステルからおよそ馬車で二日ほどの場所に大勢の人間が集まっている。

 普人種が一番多いが獣人や一部魔族と見られる者の混じった武装した集団。

 数万人に達するであろうその集団の中心部に幾つかの天幕が張られていた。

 その更に中心にあるひときわ大きな天幕の中で、豪奢な甲冑に身を包んだ男を中心に10数名ほどが集まっていた。

 

「どうやら何とか先んじて陣を張ることが出来たようだな」

 中心にいる男が厳しい表情を崩さぬままそう言葉を漏らした。

 まだ20代ほどと思われるその男に騎士と見られる者から更に報告がなされた。

「は! 帝国軍は平原の西側に集結しつつあり、恐らく明日の午後か明後日には侵攻を開始する体勢が整うかと思われます」

「帝国の兵力は総数凡そ8万。重装騎兵が2万。軽装騎兵が1万5千。戦奴を含めた歩兵が4万。残りは弓兵と輜重でしょう」

 男の右側に座る壮年の騎士がそう続ける。


 ここにいるのはアリアナス王国の国軍であり、中心にいるのは人物はこの軍の総大将となっているレオン・レーデス・アリアナス。アリアナス王国第1王子であり、王太子でもある。

 先程発言したのは王国の騎士団長でもあるレギン将軍。その隣には先の邪神の軍勢との戦いが終わった後に騎士団の副団長に就任した、かつての勇者パーティーの一員であったブルーノ・レッグ。他にも魔法師団や辺境警備隊の長など、王国の軍の重鎮が一堂に会している。王国、というよりもウィルテリアス大陸全体に言えるがこの10数年魔王率いる魔族軍や邪神の軍勢との戦いなど戦乱と言える状況を経ており、軍に於いて実績・能力が乏しい人材が高位につくような無意味な事が許されるはずもない。

 故に軍の高官が集まっているこの状況は正に国を挙げての布陣と言える。

 当然だ。ここで帝国を止めなければこの先は王都まで遮るものはない。王都の西側は穀倉地帯が広がり小都市が点在するのみであり、10日もあればほとんど抵抗を受けることなく帝国の軍勢が王都に攻め寄ってしまうだろう。

 だからこそ最後の砦として川と山、森に遮られて比較的狭くなる街道に繋がる平原の縁を本陣としたのである。



「失礼します。イルヴェニア皇国のビスタス将軍とランス卿、それと東部都市国家連合の方々が到着されました」

 別の若い騎士が天幕の外側から大きな声で報告する。

「うむ。お通ししてくれ」

 レオンがそう応じると天幕の入口の布が大きく捲られ数人の男達が入って来る。

 まず大柄で筋肉質な体躯の歴戦の強者を思わせる壮年の男、続いて細身で金髪が特徴的な若い男が、その後に簡素な金属鎧を身につけた男達が続く。

 レオンも席を立ち、駆け寄るように出迎える。

「良く来てくれました。感謝の言葉もありません」

 そう言いながら一人一人と堅く握手を交わす。

「何を申されますか殿下。ここで帝国を止めねばアリアナスの次は我々の国がその脅威に曝されます。我等にとって対岸の火事ではないのです。出来うる最大の増援は当然のことでしょう」

「然り。我々東部都市国家にとっても同じ事。残念ながら多くを集めることは叶いませんでしたが、全員が決死の覚悟でこの場に参じた次第です」

 全員が口々に同意する。

「心強い。我等が一丸となれば必ずや帝国の野心を挫くことが適うでしょう」

 レオンもそう応じて空いている席に着くよう促す。


 全員が着席するのを待ってレギン将軍が軍議を始める。

「おそらくは明日には開戦となるでしょう。我が軍の基本方針として帝国の進撃を受け止めつつ徐々に街道に引き込み、相手の戦力を削る形が理想でしょうな」

「それしかないな。しかし彼我の兵力差が大きい。如何にして帝国に包囲されるのを防ぐか」

 レギン将軍の言葉に対してレオンが応じる。

「兵力差は今更嘆いても仕方在りますまい。我らは引く事は許されぬ身。何、一人が三人づつ倒せば殲滅できる。邪神の軍勢相手にすることを思えば十分勝機はありましょう」

 ビスタス将軍が強い調子で言う。

 この場にいる全員が決意と覚悟をその目に込めて頷く。

 自軍の数は王国軍が2万、皇国軍が1万、都市国家連合が5千、その他冒険者を中心とした義勇軍が3千の計3万8千。帝国軍の半分にも満たない兵力でしかない。

 それ故にここにいる誰もが討ち死にを覚悟し、家族とも別れを済ませていた。それでも兵を死地に送り込んでいる以上自らの命を惜しむつもりはない。


「出来れば殿下は後方で離脱できる様にしていただきたい。御身は後に王国を背負われる方。我らを見捨ててでも逃げ延びていただきたいのですが」

 ビスタスと共にいたウィスパー・ランスが言う。

 ブルーノと同じく勇者のパーティの一員だった男だ。

 ウィスパー自身は皇国の魔術師だが、王国と皇国は友好国であり、また勇者と共にいた時に交流があり王国の王家に対して思い入れがある。

「国の事なら心配は無用だ。メルスリアもいるし、陛下もまだまだ壮健だからな。私がいなくなったところで問題は無い。ひょっとしたら更に弟か妹でも増えるかもしれんと思っているところだ。皆と同じく私も最後まで兵達と共に戦うためにここに居るのだ」

 冗談めかして軽く笑いながらレオンはウィスパーの要望を拒絶する。

 

 更に具体的な作戦について話し出したところで天幕の外が俄かに騒がしくなる。

 程なくして一人の騎士が飛び込んで来た。

「報告します! 東の方角からこちらに向かって飛来する魔獣らしきものがあります。まだ距離があり詳細は判りませんが避難のご準備をお願い申し上げます!」

「何?! 敵か? しかし東からだと?」

 方角からして敵とも考えられないが、ワイバーンか何かだろうか。ただ普通のワイバーンがこの数万の軍に近づくとも思えない。

 レオンはそう疑問を感じながらも様子を見るために天幕から外に出る。


 騎士が指し示した方角を見ると確かに何かが飛んでくるのが見える。それもかなり大きそうだ。

 見ているうちにどんどん距離が近くなり、そのシルエットがはっきりと確認できる様になる。

「あれは……ドラゴン、か? しかしあの姿は、まさか……」

 レオンの脳裏に一つの可能性が浮かんだがすぐにそれを否定する。かの者は人の争いに関与することを忌避していたはずだ。

 その様に考えを巡らせている間にもそのドラゴンは近づいて来ており、遂に天幕のすぐ上にまで来た。

 そしてそのまま着陸態勢に入る。

 真下にいた兵達が慌てて逃れる。それにより空いたスペースに地響きをたてながらドラゴン、いや黒龍が地に降りる。

 

 唖然とした兵達が周りを取り囲む中、黒龍の背から若い男と猫の獣人の娘が飛び降りた。

「な、何故お前がここにいる!!」

 レオンの叫びを聞き、そちらの方に目を向けながら、

「どうやら間に合ったみたいだな」

 そう言って男は笑みを浮かべた。


 異世界から来た勇者。

 邪神討伐の英雄。

 柏木 裕哉が再び戦場へ降り立った。

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