第27話 勇者の夏合宿Ⅸ
今回は短いです。
なので後半に番外編を掲載しています。
単なるアホネタの内容なので、本編とはまったく関係ありません。
気に入らない場合は飛ばしてください。
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とりあえず、ここでこうしていても仕方がないし、章雄先輩を起こしても面倒そうだ。
幸いルートも半分以上来ているし、今ので生理的恐怖心も薄れた。
章雄先輩を担いでいっても残りの道程は問題ないだろう。
周囲にも変な気配はもう感じないしね。
というわけで器用に立ったまま気絶している章雄先輩の持っている懐中電灯を俺のベルトに前方を照らすように固定して、先輩を肩というか首の後ろに担ぎ上げる。そして膝と顎に手を添えて落ちないように支える。
ちなみに章雄先輩の体勢は仰向けである。
所謂アルゼンチン・バックブリーカーの状態。
え?わからない?
んと、ロビ○マスクのタワーブリッジって言えば判るだろうか?
そんな体勢。
俺の持っていた懐中電灯は口に咥えるとしよう。
なんでそんな体勢かって?
だって、気絶した野郎を背負うのって嫌じゃん。俺の顔のすぐ横に男の顔があるなんて、絵面的に醜すぎる。
女の子だったらお姫様抱っこかオンブかでしばらく悩むだろうが。
目でおっぱいを楽しむか、感触を背中で楽しむか、うん、悩むな。
その後はさすがに何事も無く最上階を周り別の階段を下りて外に出る。
すると、メンバーが集まって何やら話している。
俺に気がつくとすぐに駆け寄ってきた。
「どうかしたのか?」
「それなんだけど、さっき建物の中から光が見えて、……って、お前らこそ、どうしたんだよ?」
山崎が勢い込んで話し出したが俺の状態を見て目を丸くする。
章雄先輩を担いだ俺に今更気がついたらしい。
「いや~、章雄先輩が何か見たらしくて気絶しちゃったんだよな。俺は何も気がつかなかったんだけど」
「そうなのか? 何か光らなかったか?」
「誰かの懐中電灯じゃねえの?」
「そういうんじゃなかったけどなぁ」
「茜達も見たのか? その光ってやつ」
「ううん。私達は見てないっていうか、山崎君が言ってた時って、私達建物の中にいたし、気がつかなかった」
茜がそう言ったので他のメンバーの顔を見るが他には誰も見ていないらしい。
うん。それならこのまま誤魔化せそうだ。
「見間違いじゃね? それか懐中電灯の光が天井とかに反射したとか」
「そんなこと無いと思うけどなぁ。それに章雄先輩も何か見たんだろ?」
「いや、それこそ章雄先輩だぞ?」
「……確かに章雄先輩なら石が落ちてきただけでも気絶しそうだけど」
さすが章雄先輩。
素晴らしい信頼感だ。
そのままなし崩しに話を終息させる。
少しすると章雄先輩が目を覚まして『人魂を見た』とか『人の声が聞こえた』とか言ってたが、俺が見てないし聞いてないと言うと、みんなの章雄先輩を見る目が気の毒そうな視線になる。
すんません。俺のためにチキン野郎の評価を受けておいてください。
貴方の犠牲は忘れません。合宿が終わるまでは。
どうやら俺達がわいわい言い合っているうちに全員が戻ってきたようなので戻ることにする。
「柏木君さぁ、すごく腰が痛いんだけど、何か知ってる?」
「さぁ、どうしたんでしょうねぇ」
章雄先輩の問いかけに適当に返事をしながら自分のバイクに跨る。後ろには茜が乗る。
そうそうこういうのが必要なんだよ、物語には。
茜の感触を背中で楽しみながらホテルまで戻ったが、行きよりも強くしがみついていたのは茜もあの廃墟が怖かったのかもしれない。
一緒に回れなかったのが残念なような、あんなのを見せないで済んだのが良かったような、複雑な気持ちだった。
翌日は休養日として各自が自由時間を満喫した。
俺は茜に引っ張り回されて近場を観光して廻っていたが、茜が本当に楽しそうにしていたのでほっこりする。
牧場で動物とふれ合っていたら山羊に尻を頭突きされた。
喰ってやろうか。
そんなこんなで一日が過ぎ、その翌日、いつものようにホテルをチェックアウトして各自バイクの点検を終えた俺達は集合する。
今日からはまたメンバーがシャッフルされ、今度は神崎会長がリーダー、俺と茜、小林さんがメンバーとなった。
配置は先頭が会長、最後尾が俺となる。
茜もこの合宿で大分慣れたようなので大丈夫だろう。
神崎会長とは何度もロングツーリングを経験しているが、ペース配分、ルート設定、問題処理と全てが安心して付いていくだけの楽ちんツアラーなのだ。
俺は後方のみに気を付けていれば良い。
最後の2日間だけは楽が出来そうである。
そんなことを考えていたのだけれど。
本当に何事も無く大学まで戻ってきてしまった。
楽すぎて何も印象に残っていない。
決して作者が何も思いつかなかった訳ではない。
多分。
大学の門の前で集合し、神崎会長が締めの挨拶をする。
「みんなご苦労だった。お陰で今回の合宿も小さいものはともかく、大きなトラブルもなく終えることが出来た。
まだ昼を過ぎたばかりで時間は早いが今日は無理をすることなく早めに休むようにしてくれ。
最後まで気を抜くことなく自宅まで帰るように。それでは解散!」
「「お疲れ様でしたー!!」」
全員が声を揃えて終了する。
これで無事に帰宅すれば本当に合宿も終了だ。
茜が俺の隣に来た。
「おう! お疲れ! 茜は今回の合宿はどうだった? 楽しめたか?」
俺の問いかけに茜は笑顔で応えた。
「すっごく楽しかった! 初日はちょっとアレだったけどね」
表情を見るに本当に楽しめたようだ。
大したことをした訳ではないがその表情を見ると俺も嬉しくなってくる。
4日目の痴漢野郎の事もあったからどうかと思ったが、楽しんでくれたのなら一緒に廻った甲斐があったというものだ。
「楽しんでくれたのなら何よりだ。茜もバイクの魅力を感じてくれたのなら俺も嬉しいよ」
「うん。ツーリング楽しかった。……それだけじゃないけど、ボソッ」
うん?後半が良く聞き取れなかったが。
「何か言ったか?」
「何でもない! それより折角だからお昼食べてから帰らない?」
そう言えば腹も減ったし、それも良いか。
俺はそう考えて茜と一緒に昼食を取るためにバイクへ跨った。
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番外編 とある昼下がり
合宿が終わって3日が立つ。
「ふあぁぁぁぁ~~~ふ……」
俺は大あくびをしながらリビングに入った。
昨夜は久しぶりにゲームに嵌って夜更かしをしてしまった。
おかげで起きたのはたった今。
我ながらだらけてるね。バイトの無い日はどうしてもだらけてしまう。
まぁ、学生の夏休みなんて物はこんな感じだが、社畜社会人の皆様はさぞ羨ましかろう。
家には誰もいないようだ。
母さんはいつも通り仕事、亜由美は部活だろう。
俺は冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに注ぎソファーに座る。
取り敢えずテレビをつける。
-----エーエイチオーお昼のニュースです。
まず始めに国会です。
国会議員の頭髪偽装が議員の倫理規定に反すると指摘された問題で、頭髪の偽装を倫理規定から除外する国会法の改正案、通称「武士の情け」法案の採決が参議院本会議で行われ、男性議員の賛成多数により可決成立しました。同法案は即日施行されます。尚、一部の女性議員から「バーコードも偽装にあたるのではないか」と指摘されている点に関して、超党派で作る議員連盟『日本の伝統を守る会』の
出版物の記載内容に虚偽が多すぎるとして市民団体が東京の出版社、民○書房を訴えた裁判の差し戻し審判決が今日午前、東京高裁であり「民○書房社の出版物の内容が全て虚偽のものであることは周知の事実であり、これによる原告の訴えの利益を認めることは出来ない」と原告側の訴えを退けました。原告の弁護団は上告しない方針を既に表明しており判決が確定することになります。この裁判を巡っては証人として出廷した私塾の経営者が自分の名前を大声で名乗った後そのまま退廷してしまうなど一部で混乱がみられましたが、この判決により30年に渡る論争にひとまず決着が着くことになります。
次のニュースです。
昨夜未明、首都高速道路で危険な運転を繰り返したとして45歳の配管工、マリオ・マ○オ容疑者を現行犯逮捕しました。警察によるとマリオ容疑者は同日深夜から数時間に渡り大幅な速度超過に加え、亀の甲羅のような物を他の車に投げつけたり幅寄せ・蛇行などを繰り返し、警察による停止指示にも従わなかった道路交通法違反と公務執行妨害の容疑で取り調べを進めており、また容疑者の車内から見つかったキノコから多量の薬物が検出されており、現場から逃走した弟のルイージ・○リオ容疑者も事件に関与している疑いが強いと見て行方を追うと共にマ○オ容疑者に余罪を追及することにしています。
中東情勢です。
内乱が続くH国で政府と反政府勢力の代表が首都○○で停戦に向けた話し合いが行われ、戦闘行為の一時停止と双方が拘束している兵士の身柄引き渡しに関する交渉を継続することで一致しました。しかし目玉焼きにショーユかソースかを巡って意見の隔たりは大きく難航が予想されます。
続いてスポーツです。
プロ野球。
特定の部位に自打球を当てた選手に贈られる、ゴールデンボール賞前期の受賞者が発表され、セ・リーグから横浜の鎌田内野手、パ・リーグからは福岡の矢追外野手がそれぞれ選ばれました。鎌田選手は「新しい世界が見えた気がする」、矢追選手は「これからも
Jリーグです。
経営難により身売り先を探していたJ5の山形エレファントノーズが5日、東京の企業に売却が決定したと発表しました。これにより来シーズンから拠点が山形から東京に移り、チームの名称も山形エレファントノーズから上野タートルヘッドへ変更となります。新オーナーの東京上○クリニック広報担当は「鬱屈した思いをこれから存分に晴らしてもらえるようバックアップしていきたい」とコメントを発表しています。サポーターの男性は「置いて行かれてしまうのは悲しいがチームは僕らの希望です。僕も出来るだけ早く後に続きたいと思います」と思いを語っています。
最後に午後からのお天気。
今日午後は全国的に晴れまたは曇り、場合によっては雨が降るでしょう。波の高さは0m~10m。風の強さは人により、明日は明日の風が吹くでしょ---プツン
俺はテレビを消してソファーから立ち上がる。
何かこのままじゃいけない気がヒシヒシとしてきてしまった。
大学の課題でも進めることにしよう。うん。
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