第42話
摩訶不思議 四十二章
一二三 一
四十一章「座敷わらし」の
続きをお伝えします。
(一)
前章でお話ししたように、「座敷わらし」の伝承には各地で色々あるようですが、隆の中では「着物を着た子供(男の子か女の子は不明)の姿でイタズラ好き。
座敷わらしの出る家は繁栄し、居なくなると没落や不幸が起きる。」
というイメージがあり、それは当時も現在も変わったいないそうです。
また、霊についても同じで、波長の合う人しかその存在に気付かないのでは無いかと考えているそうです。
ただ、交通事故に遭ったり、身内に不幸があったり、何かのきっかけで突然波長が合い、霊を見えるようになる人もあるようです。
(二)
M君から宿に座敷わらしが出るらしいと聞かされた隆。
荷物を入れに行った時に感じたザワザワ感はこれだったのかなと考えました。
昼食を終えた四人はゲレンデへと飛び出して行きます。
流石に夜行バスに揺られ到着後すぐから滑っているので、幾ら若いと言えども疲れは有ります。少し早めに切り上げて宿へ戻り、風呂
と食事を済ませたら、何時ものようにマージャンをしようと言うことになりました。
風呂につかり、食事をして、普通なら眠くなるところですがこの四人はそこから深夜までマージャンを打ちます。
時計の針が午前一時を指す頃一番凹んでいるKM君の「今日はこれくらいにしとこか」の
一言でお開きになりました。
部屋へ戻り布団に入ると疲れから全員直ぐに眠ってしまいました。
隆も眠っていましたが、息苦しくなって目を覚まします。
「誰かの腕か足でも俺の上にのっているのかな?」と思ったそうです。
ピシッ・パシッ・・・隆には聞きなれたラップ音がしています。
すると何時ものように電流が隆の身体に十字に走りました。
途端に金縛りに襲われます。
身体は動かず、声も出せません。
隆は「何が来ているのか確かめよう」と目を開きます。
その時隆の見たものは・・・
目の前に白の井桁模様が入っている紺色の絣が、右に左に、上に下にと動いていたそうです。時々その着物が顔に当たります。この時の隆には「危ない・怖い」といった感覚は無かったそうです。
しばらくその状態が続きます。
相変わらずラップ音も鳴っています。
ようやく金縛りから解放された隆が時計を見ると午前三時を少し過ぎたところでした。
どれくらいの時間金縛りに遭っていたのかは分かりません。
長かったのか、短かったのかすらも・・・
鳴っていたラップ音も無くなり、隆特有のザワザワ感もしません。
勿論目の前にあった絣も有りません。
布団の中で天井を見ながら隆は考えています。ひょっとしてさっきのが「座敷わらし」やったんかなと。
紺色の絣・・・子供の頃から実家が呉服の問屋をしていたので着物に対しては若干の知識があった。あの顔に当たった時の感じは絣の着物
(三)
朝食の時に仲間にこの体験を話すと、隆の不思議体験によく付き合っているM君は
「お前、それは「座敷わらし」やったんと違うんか。きっとそうやで。」と笑います。
隆は宿のご主人に座敷わらしの事を聞いてみ
ることにしました。
「ご主人、こちらには座敷わらしが
現れると聞いていますが、座敷わらし
はどんな恰好で現れるんですか?」
「ああ、あの子は紺色の絣で白い
井桁模様が入った着物で黄色の帯。
髪はおかっぱでイタズラ大好きな
男の子です。お客さん見たんですか?」
と聞き返されたので、昨夜の話をすると
「間違いないですね。」
「座敷わらしです。」
とご主人は笑いながら答えたそうです。
(四)
四人は朝食を終えるとスキー場に向かいました。
前日同様準備運動もそこそこにリフトに飛び乗り滑り始めます。
昼食時はスキー談議に花が咲きます。
隆は当時はやり始めたバックエントリーのスキー靴(ハンソン)と回転性重視のスキー板(オーリン)という最新装備で初滑りを楽しんでいて、昨シーズンに使っていた靴、板との比較を他の三人から聞かれていました。
話し終えて、宿のご主人との話を三人にしたところ一様に
「ほんまにおるんや」
という反応が返ってきました。
「今夜も出るかな?」
「俺も見たいな」
と興味本位に話しています。
この日の午後はお互いの滑りをチェックしながらスキーを楽しんでいます。
夕方より天候が荒れてきたので早めに宿へ戻り、お決まりのお風呂、夕食、マージャンのパターンになったそうです。
この夜は日付が変わるまでにマージャンを終え寝床に入った四人でぢた。
他の三人は早々に寝息をたてていましたが、隆はなかなか寝付けません。
午前一時を過ぎた頃不意にザワザワ感が隆を襲います。
「あれっ?またか。」
そう思った時にラップ音が鳴り始めます。
ピシッ・・・・パシッ
ピシッ・・・・パシッ
昨夜は直ぐに金縛りになりましたが、今夜はザワザワ感がするだけです。
部屋の隅に気配を感じた隆は、身体を起こします。
そこにはぼんやりとしていますが井桁模様の入った着物を着て黄色の帯をした小さな子供の姿がありました。
声を掛けようとすると、あっという間にいなくなってしまいました。
朝食の時にその話をすると
「なんで起こしてくれなかったのか」
「かわいらしかったか」
などと口々に言います。
その後この宿には一度泊まりましたが、
その時には座敷わらしは現れませんでした。
それから何年か後にこの宿が火事で焼けた事をM君から聞かされました。
ひょっとすると二度目に泊まった時にはすでに座敷わらしは居なくなっていたのかもしれないなと隆は思ったそうです。
「座敷わらしがいなくなって火事になった」
「そうなると伝承通りになるな。」
摩訶不思議 一二三 一 @hifumi1128
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