第41話
摩訶不思議 四十一章
一二三 一
昔話や民話によく出て来る
「座敷わらし」(妖怪?)
をご存知でしょうか・
今回は隆が大学生の頃に
経験したお話しです。
(一)
大学生の頃の隆は以前にも登場してきた中学生の頃からの親友M君とスキーにどっぷりはまっていました。
冬場にスキーへ行くためと、車に乗るために一生懸命にアルバイトをしていました。
初雪の便りが届く頃になると、行きつけのスキーショップへM君と二人で通い、そのシーズンの新製品の話やスキー場の話で盛り上がり、アルバイトへの活力にしていました。
いよいよスキーシーズン到来という頃、隆とM君は喫茶店で今シーズンのざっくりとした予定を話し合います。
この二人、大変なヘビースモーカーで二人が一時間一緒にいると、灰皿には吸い殻が山のように積みあがります。
喫茶店で席に着くなりM君が切り出します。
「どうする?初滑りどこ行く?」
「初滑りは済ませたで」と隆。
「嘘つくな!やっと雪積もったとこや。」
「いや。夏に六甲山人工スキー場で滑ってきたんよ。」
「お前あれ行ったんか。板ボロボロになったんとちがうんか?」
「そんなもんボロボロになってもかまへん板で滑ってきたに決まってるやん。」
「そりゃそうやわな・・・」
「どうせ彼女連れてドライブがてらに行ったんやろ。」
「まあな」
「今年どうする?」
「そうやな・・・北海道には二回行こうと思ってる。」と隆。
「手稲とニセコくらいか?」
初めて北海道で滑った糠平の雪、忘れられへんわ。あそこは最高やわ。」
「お前、また彼女連れて行くんか?」
「ついて来るかもしれんなぁ・・・」
「彼女とは俺らと別に行けよ。いつも通り朝からナイターまで滑って、後はマージャンしようや。」とM君。
「俺もそのつもりやねんけどな。」
「北海道以外はどうする?」
「そうやなぁ・・・野沢、白馬、神鍋このあたりかな。」
「初滑りは黒岩に行かへんか?去年初めて行ったけど中々良かったで。」
「そうか。お前が言うんなら間違いない。そこへ行こう。マージャンのメンツはKI
とKMでええか?」
「ああ、あの二人な。OKやで。」
そんな会話があってそのシーズンの初滑りは長野県の黒岩スキー場(現在は信濃平スキー場)に四人で行くことになった。
泊りは民宿で往復スキーバスを利用する。
大阪駅近くのバス乗り場で待ち合わせ、スキーバスに乗り込んだ四人。長野までは夜行バスになる。朝現地へ到着次第この四人はリフトの一日券を買い夜まで滑る。
そのためにも夜行バスの中では眠る。
バスが動き出す。いつも通り眠る四人。
(二)
スキーバスから降り、民宿へ荷物を入れ直ぐにゲレンデへと向かう四人。
隆は民宿に入った時に一瞬ザワザワ感を感じた。すぐにザワザワ感が消えたので、
バスの暖房が暑くて余り眠れなかったので、寝不足かなと思いさほど気に留めなかった。
ゲレンデに着くと準備運動もそこそこに滑り始めた。四人それぞれに初滑りを満喫しながら滑っている。
隆とM君は当時主流であった8ミリビデオを交互に撮りながら滑っている。
この映像を後日見て二人であれこれ談議するのも二人の楽しみの一つであった。
次に四人が顔を揃えるのはランチタイムでそれまでは時たまコース上ですれ違ったり、リフトから他のメンバーの滑りを見ている程度で、四人が揃って滑ることはほぼ無い。
ランチタイムになり四人が顔を合わせた。
今日の自分たちの滑りを話している。
隆はM君に宿に荷物を入れた時感じたザワザワ感を話した。それを聞いたM君。
「そうか。感じたんや。やっぱりな。」
とニヤリと笑った。
「もう長い付き合いやし、色々隆の不思議体験の事も知っているし、分かっている。それでもやっぱり隆は凄いな・・・」
と一人納得している。
「何や?何か隠してるんか?」と隆。
「あの民宿な、出るらしい。」
「何が出るん?霊か?」
「違う、違う。妖怪や。」
「妖怪?」
「うん。座敷わらしが出るらしいわ。」
「座敷わらし?!ホンマか?」
(三)
座敷わらしとは各地にさまざまな神話や言い伝えが残されている妖怪で、日本ではカッパや天狗とともに「座敷わらし」が有名です。
一般的に座敷わらしは、おかっぱ頭で赤ら顔の幼い子供、年齢は五歳くらいとされています。しかし座敷わらしは大人である、夫婦であるとの意見や白い顔をしているなど、その特徴は諸説さまざまです。
言い伝えによれば、座敷わらしはイタズラ好き。部屋中を歩いたり走り回ったり、物音を立てたりすることがあるそうです。
時には寝ている人の枕をいじり、場所を変えるなどすることも。座敷わらしが胸の上に乗ると、うなされることもあると言われています。この「座敷わらし」がいる家はその家が繁栄しほかにも、座敷わらしを見た人にも良いことがあると伝えられています。言い伝えによれば男性は出世する、女性は玉の輿に乗れる、家族に恵まれるなどの幸せをもたらすそうです。座敷わらしを見た後に宝くじに当選した人もいるのだとか。
一度住みついた座敷わらしが家から離れると、一家全体の運勢が悪くなるとされています。岩手県遠野市には、矢で射られた座敷わらしが家を去り、後日家運が傾いて没落した逸話が残されているとか。柳田國男氏の『遠野物語』にも、座敷わらしが去った家で、暮らしていた二十人以上が毒キノコで命を落としたとの話があります。
勿論隆は座敷わらしのことを知っていましたが、見たことは無かったそうです。
四十二章に続く
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