最終話:ガイノイドになったラヴ。

とりあえずその晩、薫はラヴを自分のマンションに泊めることにした。

でも、今のままじゃラブを表には出せないわけで・・・。

この丸頭に寸胴ボディを連れては街は歩けない・・・目立ちすぎる。


で、薫は軽四の中で思いついたことを決行することにした。


次の日、薫はいつかメイドロイドを買おうと思って貯めておいた

全財産をおろして、早朝人通りが少ないうちにある店にラブを

連れて行った。


そこはアンドロイドやガイノイドのボディだけを売ってる店。


って言うか頭にAIやコンピューター「脳殻」を搭載してないボディ

だけのアンドロイドやガイノイドを扱ってる店だった。


自分が現在使用してるボディーに飽きたらAIだけを別のボディの脳に

乗せ替えて見かけだけが変えられるって仕組み。


脳が空っぽの状態でボディだけ売ってるから金額もかなりリーズナブル。


オーナーも自分ちのアンドロイドやガイノイドに飽きたらいつでも

脳殻を入れ替えるだけで違う相手として楽しめる。


なんでも商売になる時代。


何十体かあるボディの中で男性型を選んだらアンドロイドになる訳だけど、

薫はもちろん男には興味はない。

だから選ぶなら女性型・・・つまりガイノイドになるわけで・・。

しかもできるなら夜の営みに特化したガイノイド。

そうセクサロイド・・・。


薫は当然、セクサロイドを選んだ。


もちろんそういう機能も搭載されていないガイノイイドもある。

介護用やハウスメイドとしてのガイノイドたち。


そこで薫は自分のタイプのガイノイドをデータの中から探した。

幸いにもこの子だって思える薫の好みのガイノイドがいた。


「可愛い・・・この子がいい・・・この子となら暮らせる・・・」


まさに薫の好みぴったりの顔立ちもボディーも言うこと無しだった。


で早速ラヴの脳殻を、そのボディに乗せ換えてもらった。

これでR2-D2みたいだったラブはどこにも存在しなくなった。


薫は店長に頼んで脳がカラになったラブの寸胴ボディをひっそり処分して

くれるように頼んだ。

なんとなく慣れ親しんだラヴの寸胴ボディ・・・別れはちょっとだけ

寂しい気持ちになった。


「でもそれも俺とラヴのため・・・しかたないことなんだ」


薫はすべての料金を支払って身も心も女性になったラヴを連れてマンションに

帰った。


軽四の助手席で薫を見て微笑むラヴ・・・ロボットだった時のラブと

違って表情がよく分かる。

あまりに突然薫の前に現れたガイノイドのラヴ・・・薫は慣れるまで少し時間が

かかるかもしれないと思った。

でもそれは生活しているうちに馴染んでくるだろう。


新しいラヴはめっちゃ可愛かった。

結局、薫は以前から欲しいって思っていたガイノイドを手に入れた訳だ。


そして薫とラヴを乗せた軽四は、すべてを闇に葬るように暗い夜道を

消えていった。


で、今、薫のマンションの台所でラヴは料理を作っている。


マンションに帰ってきたラヴは変わってしまった自分の姿を洗面所の

鏡に映して、なにやら不思議そうに見ていた。

おそらく自分でも理解することにまだ戸惑いがあったのかもしれなかった。


ただ思ったのは今の自分は薫の理想のタイプのガイノイドなんだってこと。

それだけで嬉しくなるラヴだった。


丸頭に寸胴だったラヴは自分が望んでいた理想どうり薫との新しい生活を

手に入れたのだ。


しかも薫からしてみてもラヴは自分のタイプだから・・・今のラヴから好き

だって・・・愛してるって言わても薫はちゃんと応えてやることができる。


ロボットのままのラヴだったらハグもできないしチューだってしようと

思ってもどこが唇だか分からないし・・・。

だから今はハグし放題だしチューし放題・・・こんな幸せなことってない。


いやいやエッチだってできちゃうんだ。


人もロボットも見かけじゃないって言うけどやっぱりビジュアルって大事だよ

・・・絶対そうだよって薫は思うのだった。


「よく考えてみたらラヴの「AI・0」って「アイ・ラブ」って読めるよな」


寸胴だったラヴが薫と暮らしたいが一心で思いついた計画によって、ふたりは

本当のラヴ「愛」を手に入れたのだった。


めでたし、めでたし。


おっしまい。

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AI・0(アイ・ラヴ)。〜 ロボットだって恋をする 〜 猫野 尻尾 @amanotenshi

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