第7話 反省配信前

「はぁぁぁぁ…疲れたぁぁぁぁ!」


配信を切ると同時に、全身の力が抜けて椅子から落ちそうになる。思ったよりも疲労が溜まっていたらしい


「あと15分…そろそろ通話入っとかなきゃなんだっけ…?」


ため息気味にそう言いながら、通話アプリを開く


「入りたくないなぁ…」


事前に何度か喋っていたとはいえ、まだ人と喋るのは苦手だ


「でもそろそろだしなぁ…」


そろそろ入っておかないと、直前になにかトラブルがあった場合に対応できない


「入るかぁ…」


嫌々ながらも、通話の「参加」ボタンにカーソルを持っていく


「ふー…」


配信の直前と同じように深呼吸して、覚悟を決める


「よし!」


気合を入れて、参加ボタンをクリックする


「こ、こんばんは…」


通話に入ってすぐ、小声で挨拶する


「あ、由依さん、お疲れ様です」


「お、お疲れ様です」


手続きの時に会った稲山さんが挨拶を返してくれた


「あ、由依っちお疲れ〜」


続いて三村さんが挨拶を返してくれる、どうやら私は三村さんに「由依っち」と呼ばれているらしい


「ほ、他の方は…まだなんですか…?」


15分前にもなれば私以外全員いると思っていたが、通話にいるのは手続きの時顔を合わせた3人しかいない


「そうですね…そろそろ来ると思うんですが」


「緊張でお腹でも下したんじゃないの?」


「皆さん配信はできていましたしそんなことは無いと思うんですが…少し心配ですね」


と、そんなことを話していると、通話に誰かが入ってきた


「ごめんなさい、おくれました」


ゆったりとした口調で、遅れたことを謝罪する。どうやら通話に入ってきたのは、先程コメントを送ってくださった「煤乃けむり」こと「霜乃綺羽しものいろは」さんのようだった


「グミ食べてました」


「何のグミを食べられてたんですか?」


「んー……なんかクマのやつ」


「あー!あれ?タリボーグミみたいなやつ?」


「たぶんそれ」


そんな会話が流れていく、陽の空気と場違い感が辛い、今にも逃げ出したいくらいだ……と、そんなことを考えていると、もう一人も通話へ入ってきた


「遅れた〜、ごめんね〜」


ゆったりとした口調で謝罪するこの人は、私の前の番に配信していた「木枯凪沙こがらしなぎさ」さんこと「宮野楓みやのかえで」さん、どうやら、配信が終わったあとすぐに疲れて寝落ちしてしまったらしい


「大丈夫ですよ、まだ配信まで10分ほどありますし」


「ほんと、起きて時計みたら10時過ぎてたんだよ?焦ったよ〜」


「寝るのがわるい」


「疲れるよね〜、私も雛っちから電話こなかったら寝てたもん」


「舞さんはすぐ寝ますもんね」


「健康優良児と言ってくれたまえ」


「舞ちゃんは健康優良"児"だったの〜?」


「はっ倒すぞ」


「あ、あはは…」


どうやら、私の予想以上にみんな仲良くなってしまっていたようで、会話に混ざる隙がない


「あ、もうすぐ配信ですね」


楽しそうに雑談してる皆に告げるように雛さんが口を開く


「あ、もう?早いね〜」


「そりゃあんたはいちばん遅かったからね」


「殴っちゃうぞ〜?」


「れなまだきてない」


会話に割り込むように、綺羽さんが口を開く


「あ!そうじゃん!あいつ何してんの?!」


「れな」さんとは、同期の「紅葉あかばもみじ」さんこと、「汐見玲奈しおみれな」さんという人のことだ


「寝てるんじゃないかな〜」


「さすがに配信あるのに直前に寝ないでしょ、あんたじゃあるまいし」


「一言余計!で、どうする〜?」


「どうしましょう…もう始まりますし…5人で始めますか?」


「あー…1回運営の人に連絡してみるね〜」


「ありがとうございます」


配信の時間も迫っているため、5人で始める方向のようだ


「運営の人からOKでたよ〜、みんなは大丈夫〜?」


「行けるよー」


「わたしもいける」


「大丈夫ですよ〜」


「だ、大丈夫です…」


「それじゃ、待機画面つけるね〜」


「「「「はーい」」」」


かくして、私の初めてのコラボ配信?が始まるのだった












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