第6話 初配信②

「お見苦しいところお見せしました…」


あれから数分後、私はパソコンの画面に対して深深と頭を下げていた



:大丈夫だよ〜

:ルナちゃんは大丈夫なの?

:無理してない?

:配信落とす?


「いやいや!さすがに辞めませんよ?」


顔を上げて、流れるコメント欄に反応する


「初配信でやるべき事終わらせないと…後々大変だと思うし」


初配信では、ファンネームや配信のタグ、イラストのタグなどを決める必要がある。それを後回しにしてしまうと次の配信の時に支障が生じかねないのだ


「てことで!早速やっていきます!」


と、そこで、一つのコメントが目に入った



:ていうか、ルナちゃん普通に喋れてるくね?



「あ、そういえばそうですね?なんでだろ…」


考えてみればそうだ、ここまで、一回も途切れずに喋ることが出来ている。そんなことは、今までの私からしたら到底考えられない事だった



:一回泣いて吹っ切れたとか

:泣いて吹っ切れたは有り得る

:泣くとリラックスできるって聞いたことあるぞ



「泣いたからなのかな…?んー…ま、いっか、わかんないこと考えても仕方ないし。とりあえず、時間無いので巻きで行きますね!」


緊張せず喋れていることはひとまず置いて、配信を再開することにした


「えっと…特技からでしたっけ、特技は特にないんですけど、一応FPSゲームのBPEXとCell shot系列全般は最高ランクまで上げてます」


それなりにFPSゲーム、いや、ゲーム全般に自信はあるつもりだが、特技と言えるほど上手くは無い、あくまで趣味の範疇だ


:ゲーマーか

:最高ランクってマ?

:BPEX現環境で最高ランクまであげるのかなり上手くて草

:Cell shotやってる人まだいたんだ

:↑世界シェアで見たらナンバー3、4くらいだぞ

:Cell shotはモバイルしかしてないな



「特別上手いって訳でもないですよ、私の場合は時間が有り余ってだけですし」


そう、時間があっただけなのだ。それをいい意味に捉えるか悪い意味に捉えるかはその人次第だが、私は到底いいことには思えない


「さて、次は…」


と、そんな感じに配信は進み、初めの挨拶は「こんるな」、終わりは「おつるな」にすることだったり、ファンネームを「油揚げ」にすることだったりと、色々なことが決まっていった。

ちなみになぜファンネームが「油揚げ」かと言うと、「伏見ルナ」→「伏見」→「伏見稲荷」→「稲荷」→「お稲荷様」→「油揚げ」で「油揚げ」になったのだ


「あ、もうこんな時間に」


ふと時計を見ると、私の配信の持ち時間終了まで5分を切っていた


「後なにか決めてなかったことってありましたっけ?」



:多分ないよ〜

:もう終わりか

:なかったと思う

:ないよー



「なさそうですね…それじゃあそろそろ終わらせていただきたいと思います、15分くらいから4期生反省コラボ配信があるのでそっちも見に来てください。それでは…」


「お、おつるなです!」

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