第6話 やり直しはじまる

 あれ? ここは私の部屋ね。


 確か毒入りチョコレートを食べて死んだはず。

 そうか、神様が望みを叶えてくれたのだな。


 ということは今はいくつ?


 私はベッドを降りて鏡の前に立った。



 小さいな。4歳くらいかしら?


 確か殿下は9歳から毒を盛られたからその前に戻せって言っていたわね。


 16歳の記憶を持ったまま4歳に戻ったなら殺されないように色々画策できるわ。


 殿下も記憶を持ったまま9歳に戻っているのかしらね?


コンコン


「お嬢様、朝ですよ」


 侍女のメラニーが入ってきた。


 メラニーは私が大好きだった侍女だ。私が12歳の時に遠くにお嫁に行ってしまった。


 またメラニーに会えるなんて嬉しい。


「あら、お珍しい。今日はおひとりで起きられたのですね。さぁ、用意して朝食を食べましょう」


 私はメラニーに支度をしてもらいダイニングに向かう。


「ベル、おはよう」


「お父様おはようございます」


 父もなんだか若い。


 父が早く婚約解消させてくれていたら私は死ななかったのになぁ。


「ベル、おはよう」


「お母様おはようございます」


 お母様も若くて綺麗だ。




「旦那様、王家から登城して欲しいと文を持った使者が来て返事を待っております」

食事の後家令のセバスが手紙を持ってきた。


 セバスだ。セバスも若いな。


 登城? なんだろう?


 父はセバスから渡された手紙を読んでいる。


「ベルを連れて登城せよとの事だ。なんだろうな?」


「まさかお妃様候補でしょうか?」


「どうだろう? 少し歳が離れているが、公爵家は男児ばかりだからベルに回ってくる可能性もあるな」


 お妃様候補? 私が?


 まぁ、ジェフリー様と婚約する前に殿下と婚約したら殺されないわね。殿下も記憶を持ったまま巻き戻っていたら話もしたいし、色々協力し合えばお互いに死ななくて済む。


 もう、口ばっかりのジェフリー様とは婚約しないわ。


「ベル、もしも殿下がベルをお嫁さんにしたいと仰ったらどうする?」


「ベルは殿下好きです。お嫁さんになります」


 そうそう、私は1回目の世界でもジェフリー様より殿下派だったわ。幽霊の殿下はイメージと違って黒っぽかったけど、それも悪くない。


 私達はお城で国王陛下に謁見した。


「王国の太陽である陛下におかれましては……」


 父が挨拶をしている。


「ベルティーユでございます」


 私もカーテシーをバッチリ決めた。



 この人がアデライド王女を溺愛し、野放しにしたから私は死んじゃったのよ。なんとかしなきゃダメね。


「クロフォード侯爵、今日来てもらったのは、我が嫡男のウィルヘルムの妃に、そちの長女のベルティーユを迎えたいと考えておる。異存はあるか?」


「有り難き幸せ。つつしんでお受けしたします」


「そうか、有難う。これはウィルヘルムのたっての希望でな。そちの娘なら問題はない。よろしく頼むぞ」


「こちらこそよろしくお願いいたします」


 父は緊張してガチガチだ。


「ベルティーユ、お妃教育は私がやりますので頑張りましょうね」


 王妃様は優しく微笑んでいる。

 

 お妃教育? まぁ、私だって16年+4年も侯爵令嬢やっている。お妃教育もなんとかなるだろう。


 それに王妃様は素敵な方だ。側妃とはえらい違いだ。


 あんなケバい側妃を寵愛するなんて国王陛下の目は節穴か?


 絶対側妃と王女に仕返ししてやるぞ!


「では、私達はこの先の予定の話をするので、ウィルヘルム、ベルティーユとお茶でもなさい」


 王妃様がウィルヘルム殿下に言う。


「ベル行こうか」


 殿下が手を差し出した。


 おっとこれはエスコートか?


「はい」


 私は殿下の手を取った。





「ベル、記憶はあるか?」


「もちろんですわ」



 私達は悪い笑顔を浮かべ見つめ合った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る