第3話 お茶会
月に一度のジェフリー様とのお茶会の日が来た。
月に一度と言いながらジェフリー様が多忙ということで、もう半年も開催されていない。
今日は久しぶりに生ジェフリー様に会える。婚約解消のお願いをしようと思っている。
手紙を何度も送っているし、何度か父からも王女から嫌がらせを受けているので困っていると伝えてもらっていた。婚約を解消してくれないのなら王女をなんとかしてほしい。
やっと本人に直談判できる。なんとか婚約解消を勝ち取りたい。
「ジェフリー様、すでに父から話がいっていると思いますが、婚約を解消してほしいのです」
私の言葉にジェフリー様は驚いたように目を丸くして固まっている。
「こ、婚約を解消ってなぜ?」
何を言っているんだ? しつこく手紙も送ったじゃない。
「父から何も聞いていないのですか?」
お父様、言ってないのか?
「私は何も聞いていない。父のところで止まっているのかもしれない。理由を話してほしい」
手紙も読んでないのか?
「毎日毎日、アデライド王女に嫌がらせをされています。最初は些細な嫌がらせでしたが、今では突き飛ばされ学園の噴水に落ちたり、足をかけられて転ばされたり、階段から突き落とされたり、だんだんエスカレートしていて、今では怪我をさせられるような嫌がらせをされています」
私は袖を捲り上げ、青くなった場所を見せた。
ジェフリー様は打身の痕を見て驚いているようだ。
「その都度ジェフリー様と別れなさいと言われるのです。こないだは、『あなたが消えたら婚約は解消になるわね』と言われました。私殺されるんでしょうか?」
ぶちまけてやった。
「いつからだ?」
「半年くらい前です。ミラシッド侯爵家のお茶会の時に初めてお会いして絡まれました」
「何で言わないんだ」
「何度もお手紙を送りましたし、父経由でもお伝えしておりますわ。このところジェフリー様はお仕事がお忙しく、ふたりのお茶会も半年振りですものね」
私はあからさまなため息をついた。
「婚約を解消していただかないと私は殺されるかもしれません。お願いです。解消してください」
私はジェフリー様に懇願した。
「早急に片付けなくてはならない案件があって私はずっと城にいたので、ベルがそんな目に遭っていたことも、手紙をくれていたことも知らなかった」
そうなんだ。でももうそんなことはどうでもいい。
「王女のことはなんとかする。だから婚約を解消するなどと言わないでほしい」
「なんとかするとおっしゃいますが、なんとかできるのですか?」
「必ずなんとかする。ベルのことは私が守る。私を信じてほしい」
なんでよ。婚約解消してくれればいいじゃない。別に私のことを愛しているわけじゃないでしょ?
それとも、婚約を解消したら、すぐに王女と結婚させられるかもしれないから?
私を盾にしようとしているのか?
「私は心も身体もこれ以上傷つきたくないのです。王女が相手では何をされても泣き寝入りするしかありません。私のことを可哀想に思うなら婚約を解消してくたさいませ」
「少しだけ待ってほしい。必ず守るから。王女からの嫌がらせがなくなれば婚約を解消しなくてもいいのだろう?」
「まぁ、それは……そうですけど」
「この話は終わりだ。さぁ、ベルの好きなチョコレートの菓子を用意したんだ。沢山食べてほしい」
食べ物で釣る気だな。まぁチョコレートに罪はない。
私はチョコレートをたらふく食べ、結局婚約解消できないままお茶会はお開きとなった。
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