第4話 なんで?

「ベル、話はどうなったの?」


 学園に行くとナディアが飛んできた。


「それがね。必ずちゃんとするとか守るとか言われてお茶を濁されちゃったのよ」


「婚約解消できなかったの?」


「そー言うこと」


「やっぱり相手は殿下の側近で次期宰相だものね。上手く丸め込まれちゃったのね」


「なんか圧が凄くてね。かなり強く出たのだけれど負けちゃったわ。まぁ、王女のことはなんとかする。必ず守るって言うのだからそれ以上言えなくてね」


 私はため息をついた。


「それに父の勧めで留学しようと思っているの」


「それがいいかもね。王女が卒業するまで学園も危険だもの。ベルがいなくなると淋しいから私も一緒に留学しようかな」


 ナディアは笑う。


 私達は一緒に隣国に留学することになり準備を始めていた。


 その間も王女からの嫌がらせは続いていた。「必ず守るから」なんて言っていたのは誰だろう?




「あなた、まだジェフリーと婚約を解消してないのね。あれほど別れろって言ったのに」


 ナディアと楽しく学食でランチをしていたら突然王女と取り巻き令嬢達が現れた。


「婚約解消はすでに申し出ております。ジェフリー様やノバック公爵家にお問い合わせ下さいませ」


 私がそう言うと、王女は憎々しそうな表情で私を睨んだ。


「ならなんで、ジェフリーは解消しないの。嘘つくのもいい加減になさい」


 手に持っていた扇を私に振り下ろす。


 もう、なんで王女に扇で殴られなきゃならないのよ。


 必ず守ってくれるんじゃなかったの?


 嘘つきと結婚するのは嫌だ。


 絶対婚約を解消しよう。


 王女は文句を言いながら食堂から出て行った。


「ベル、医務室に行こう。凄く腫れてるよ」


「大丈夫よ。でもなんだか疲れちゃった。明日から学園は休むわ」


 本当に休もう。もう嫌だ。


 今日も疲れた。



 あれから父はノバック公爵閣下や国王陛下にもそれとなく話をしているらしいが全く婚約解消の話は出ない。


 相手が王女だから色々と面倒らしい。クロフォード侯爵家もノバック公爵家も王妃派だからなぁ。


 我が国には4大公爵家があり、王妃様のご実家のランドゥール公爵家が筆頭公爵家で、もちろん王妃派。

 次いでノバック公爵も王妃派。


 側妃様を養女にしたグリーデン公爵家は側妃派。

 そして中立なジンハック公爵家がある。


 国王は王妃様より側妃様を寵愛しているので、王妃派から文句を言ってもパンチに欠けるのかもしれない。


 


 私は今は学園を休んでいるので被害もなく静かに過ごしている。


 ちょっと前からノバック公爵家の護衛騎士達が我が家に派遣されていて私を守ってくれている。



部屋で本を読んでいたら侍女のメリッサが呼びにきた。


「お嬢様、ノバック家の騎士の方がジェフリー様からことづかったとチョコレートのお菓子を持ってきてくださってますよ。奥様が一緒に食べましょうとサロンでお待ちです」


 サロンに行くと母と妹のエリーゼが待っていた。


「やっぱりジェフリー様はあなたのことを気にかけてくれているのね」


 母はうれしそうだ。


 気にかけてくれているのなら婚約解消してくれればいいのに。


 私はテーブルの上にあったチョコレートをひとつ口に入れた。


 ん? なんだ? なんか変。


 苦しい。


「ベル! ベル!」


「お姉様!」


「誰か医師を呼んで! 早く!」


 母とエリーゼの声が遠くで聞こえている。


 毒? ジェフリー様からのお菓子に毒? なんで?


 あぁ、このまま死ぬのか。


 でも母やエリーゼじゃなくてよかったわ。


 私は意識を手放した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る