第19話 おぱおぱ

 日曜日の昼間。道行く人はデートか遊びか。


 男女様々な人々が行き交っている。


 いつものコンビニではなく、その前にある妙なオブジェ。

 

 どちらかといえば待ち合わせにはこの妙なオブジェの方が使われ易い。


 オブジェの前は椅子にも使えそうな段差となっており、浪漫はそこに座って太陽の光を浴びていた。


 太陽の光が銀色の髪に反射し、時として天使の輝きに見える事がある。


 日曜の昼間という事で、まさしく天使が降臨しているかのようであった。


 道行く人の何人かはそんな浪漫の姿を見て足を止めている。


 浪漫はその視線を嫌ってか、地面を見て時間を潰していた。


 視線の大半が、出来れば近寄りたくない異性のものだったからだ。


 ある程度は改善したとは言っても完全に克服したわけではない。ここで、「誰かと待ち合わせでもしてるの?」とでも近寄られたらどうなるかは自身でわかっている。


 そうならないため、なるべくこちらからは見ないようにしていた。


 浪漫が地面と視力検査をしていると、突然隣に誰かが座る気配を感じた。


 足元が見えたため、恐怖を感じる事はなかった。足元にスカートの裾が見えたため、隣に現れたのが女性である事がわかったからである。


「わっ」


 それでも驚いた事は事実で、思わず声が漏れてしまう。


「あはっ。バレちゃった。ごめんね、直ぐに声を掛ける心算だったんだけど。」


 隣に現れた女性は可愛く優しく友人のように語り掛けてくる。


「マロンちゃん……だよね?」


 肘位の長さの緩やかなウェーブの掛かったお姉さん風の女性であった。


 その姿には見覚えのある浪漫は、警戒をいっきに解いた。


「こんにちは、悠久はるかです。今日はよろしくお願いしますね。」


「こ、こちらこそよろしくお願いします。私、そんなに緊張してました?」


「いいえ、可愛いから見てただけですよ。」


 二人は旧友のように手を繋いで妙なオブジェから離れて歩き出した。


 周囲のひとたちと同化した二人は、先程まで自分が見ていた景色の一部と変貌し、今度は自分達が見られる側へと回る。


「私、この時間くらいしか空けられなくて。久しぶりの出勤という事もあるけど、マロンちゃんがすぐ予定を入れてくれて嬉しかった。」


 

「私も大学と夜バイトなんで金曜とか土曜くらいしか空いてなくて。この前偶然私もキャストの方も風邪引いて、キャンセルって事になっちゃいまして。あ、先にお店側から連絡があったので、私が風邪引いた事はお店側は知らないですけど。」


 その後ルキアと一回利用した事は置いておく浪漫である。


「病気や急な冠婚葬祭は仕方ないですよ?連絡さえあればペナルティはありませんし。ましてや私達はキャストもお客さんも女性ですし。」


 ある程度急なキャンセルは理解しているという事だ。


 問題は無断キャンセルくらいなだけで。


 重い場合は連絡すらできない人もいるため、そういった場合でも後日連絡さえしてくれれば、余程でない限りはお咎めはないという。


 尤も、大抵の人は事後でも連絡を入れるため、出入り禁止になるような人はそれだけ余程の事をしたという事に他ならない。


 禁止事項に手を出すとか、警察沙汰になるような事とか……


「昼間ですと、このままカフェとか映画とか行きたくなっちゃう気分ですね。尤も映画に行ったら何も出来なくなっちゃいますけど。」


「あははっ、それはそれで楽しそうですけどね。映画館の暗闇でイケナイ事しちゃうのもありですし。そういう映画館もありますし。」



「それに本当はこれからホテルに行ってえっちな事しちゃうんですけどね。周りの人はだれもそうは思ってないだろうなぁ。」


 悠久がそう言うと、顔を赤くして浪漫は照れて俯いてしまった。


「あれ?想像しちゃいました?」


「しししししっ、してっません……」


 反論する浪漫ではあるが、緊張して手汗を掻いたり、焦った表情が偽りである事を示していた。


 じぃぃぃぃっとした視線で悠久が浪漫を見つめている。


「少しも?」


「嘘つきました。少し……してました。」


 悠久の問いかけに素直に白状する浪漫であった。


「私も、想像しちゃった。マロンちゃんがどんな風に乱れて可愛い声を出してくれるのかとか。」


 悠久もどうやらタチのようであり、浪漫は自分が攻められる姿を更に想像してしまう。




(道中ずっとえっちな想像してしまった。)


 浪漫と悠久の二人は既にホテルの一室。ぷしゅーっと恥ずかしさに押されながらベッドに両手を沈ませ立ちながらorzポーズをとっている。


「お風呂、入ろうか。」


 暫し一緒に手を繋いで歩いて親睦は深まったのか、悠久は実年齢に引かれ相応の口調となっていた。


 悠久の方が少し年上であり、浪漫が年下だというのは流れで伝わっている。


 緊張も解れ、堅苦しい態度は共に解除していたのである。


「ひゃぁっ」


 orzポーズ状態に肩を叩かれたため、驚く浪漫は声をあげてしまう。


 きょとんとして悠久は浪漫を見つめる。そして服がずれ露出した肩をさわさわと愛撫するかのように触れていった。


「あっ、い、今のはなんでもないっぃぃぃで。」


 肩に触れられ、ぞくぞくびくびくとした反応は、悠久の嗜虐心を更に高める事となる。


「えっちな想像をしすぎちゃったかな?でもそんな声と反応をされたら……スイッチ、入っちゃうよ?」


 浪漫をベッドに押し倒して仰向けにさせると、右手を背中の中に忍ばせブラジャーのホックに手をかけていとも簡単に外していく。 


「えっと、お風呂は……」


(あっ、手際が良い。流されるまま脱がされてっちゃう……)


(あれ?このまましちゃうの?)


 悠久はスカートを捲って露わになった下着の眼前に顔を近付けると、ふーっと軽く息を吹きかけた。


 匂いが伝わってしまいそうな距離で。


「ひゃっ」


 びくびくっと太腿を震わせ下半身が熱くなるのを感じる浪漫であった。


「これ以上はおあずけかなぁ。」

 

 立ち上がると、悠久は自分の上着を脱いでいった。


 たわわなお胸がブラジャー越しに浪漫の目を釘付けにしていた。

   

 恥じらいもなく次々に脱いでいく悠久に、浪漫はツッコミを入れる。


「そ、そこで脱いだら窓の外に見えてしまいますよ~!」




「昼間からお風呂に入るってなんだか贅沢な気分になりますね。昼間からお酒を飲むみたいなのと同じで。」


「あ~わかるかも~。」


 悠久からの洗体を追えて二人で並んで湯船に浸かっている。


 浪漫の様々な反応はお湯や泡によって隠され、声は風呂で反響してとてつもない事になっていた。


「浮いてる……これぞまさしくブレストファイヤーか、ダイアナンミサイル……」


 これまで慎ましやかなお胸のキャストばかりであったため、90を超えるバストを持った人を見るのは初めてであった。


 


「マロンちゃん、声に出てるよ。それとネタが古いよ。」


「スパロボ世代です……」


「マロンちゃん、ゲームやるんだ~。私も良くやるよ。放っておくと爆弾が爆発する恋愛シミュレーションとか、国や野球チームを作るシミュレーションゲームとか、あまりリアルタイムで動かないゲームが多いけど。」


 ときメモとかセンチメンタルなんとかとか、シヴィライゼーションとかシムシティとか


「他にも巣作りドラゴンとかD+VINE【LUV】とか……」


「えっちなゲームじゃないですか、それにそっちも結構昔のゲームですよねぇ。」



「そうそう、もっと近くで見てみる?」


「あぁぁあっぁ、そそ、そのごめんなさい。」


「良いのよ?なんなら触ってみる?」


 悠久は浪漫の首のした辺りに手を添えると、そのまま自分の胸へと浪漫の顔を寄せていった。


「うあぁあぁぁあっ、そんなって。うわぁっ、物凄くやわらかぁっ」


 悠久の胸にダイブし、その柔らかさに埋もれていく浪漫の顔。


 口と鼻が胸で塞がれて、呼吸が苦しくなっていく。


 風呂内という事もあり、更に蒸気した浪漫は、抗議のために左手を動かすと埋もれてない方の胸の先端に触れる。


 気付いた悠久は、浪漫を胸から離すと、蒸気した浪漫の顔を見るめると顎をクイっと持ち上げた。


「あ、あの……」


 浪漫は悠久の次の行動を制止した。


 始まる前に少しだけ話していた事。


 唇だけは……のためにとっておきたいと。


 これまで散々フィールを利用してきた浪漫ではあるが、マウストゥマウスだけはNGにしていた。


 下半身の方は散々相手の唇に弄られてきているのにも関わらず。


「あ、ごめんね。こっちはNGだったね。好きな子のためにとっておきたいんだもんね。」


「そそそすすすきなって……その……ぷしゅー。」


 浪漫の顔はさらに一気に赤面していく。


 全裸を見られた時や洗体の時よりも一層と。


「でもここら辺は良いよね?」

 

 首筋に唇を吸いつけていく悠久に、抵抗する事も出来ない浪漫。


 悠久の手はお湯に浸かった背中や尻、太腿と移動していった。


(さっきからびくっとなる所ばかり攻めて撫でてっ……)


「私が触っても、私のおっぱいに顔埋めたりしてても可愛い顔しちゃうんだね。」


「ここを触ったり抓ったりしたりしたらどうなっちゃうのかな?」


 悠久の手と指が、浪漫の小さな慎ましやかな甘食、双丘に添えられていった。

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