コンビニバイトの城島くん - 台本版

YouTubeアニメコント台本版「コンビニバイトの城島くん」


【基本構成】

・台詞

登場人物名:台詞

・ト書き

〇:場所説明

:状況説明

・SE

SE:効果音の説明


【登場人物】

主演:

寺島佑子(てらしまゆうこ):女 一人称「私」

21歳の先輩バイトさん。一人暮らしの大学2年生、人類学を専攻。特に霊長類学(ヒト以外の霊長類研究)に興味がある。

身長160cm、そこそこモテるが恋愛より研究の真面目っ子。将来の夢は研究職だが、コンビニバイトを経験して、実は自分は接客業に向いているんじゃないかと思い始めてる。

性格は面倒見の良い、ツッコミ気質な女の子。家でもよくテレビにツッコんでいる。

寺島M=寺島モノローグ


主演2:

城島健次(じょうじまけんじ):男 一人称「俺」

20歳の新人バイトくん。田舎から出てきたばかりのフリーター。太い眉毛と濃いもみあげ、つぶらな瞳、色黒の顔には白いマスクを付けている。180㎝を超す巨体マッチョで、コンビニ制服の半袖から伸びる腕は、丸太のように太く毛深い。十人中十人が、そういう顔だと思う顔をしている。

性格は健気で真面目。体育会系のノリが染みついてるせいか、大声でハキハキ喋る。

最近、地元の田舎から引っ越してきたらしい。寺島さんのコンビニにバイトとして雇われた。


その他端役:

店長M:男声推奨(中年オヤジ風)

客:男女どちらでも可(なよなよ系男子大学生、女客、男客)

※上記の二役は同一声優可

※店長M=店長モノローグ(店長はモノローグのみです)


※軽微な改変、アドリブはOK。

※SE、演出指示はご参考まで。

※ストーリー、キャラ、セリフの大幅な改変は、原則禁止でお願いします。


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〇:コンビニの店内

:カウンター内のレジ前に立っている寺島。

:すぐ横の控室から、アレにしか見えない毛むくじゃらの大男=城島が出て来る。

:城島、寺島に気付くと大仰なお辞儀をする。


城島:(元気に)今日から入りました、新人の城島健次です。よろしくお願いします!

寺島:あ、初めまして、寺島です。今日からよろしくね

寺島M:(巨体を仰ぎ見て)うわわーっ、城島くん、店長の言ってた通りだあああ(感嘆)


〇:回想(背景絵白黒)

:コンビニのバックヤード、もしくはカウンター内レジ前でも可。

店長M:(以下、神妙な口調で)いいかい寺島ちゃん

店長M:彼を見て十人中十人が、そういう顔だと思うだろう。でもそれは絶対、彼に言ってはいけないよ

店長M:いくらガタイが良くったって、最近の若い子は繊細だから

店長M:面と向かってそんな事言われようものなら、コンビニのバイトなんてすぐ辞めちゃう

店長M:貴重な日本人バイトなんだし、大事に育ててあげてね


〇:コンビニの店内(回想が終わり戻ってくる)

寺島M:ま、見た目はともかくとして

寺島M:このご時世、コンビニバイトは外国人ばかりだし、私としても日本語流暢なバイト仲間は一人でも多く確保したいところ

寺島M:このガタイなら、重たい缶瓶ケースも全部やってくれそうだし

寺島M:この掘り出し物を……絶対逃がしやしませんぜ、店長!


寺島:(朗らかに)私ね、店長から城島くんの教育係をやるよう言われてるの

城島:ハイ! よろしくお願いします!

寺島:私も教育係は初めてだから、初めて同士、一緒に頑張って行こうね!

城島:ハイ! どんどんこき使ってください、寺島先輩!

寺島:あはは、元気いいね。じゃあまずはレジから覚えよっか


:カウンター内で、レジの操作を一通り教える寺島。


寺島:こうやってバーコードを読み取って

城島:ハイ!

寺島:この画面で、お客さんの清算方法を選んで

城島:ハイ!

寺島:(満足そうに)じゃあ私が後ろでヘルプするから。レジで接客やってみようか!

城島:ええ? もうですか!? できるかなあ

寺島:大丈夫大丈夫。私が後ろから指示出すし、実際にやった方が早く覚えるから

城島:ハイ、頑張ります!


SE:能天気なコンビニBGM

:城島がレジに立つも店内に客はおらず、しばし気まずい沈黙が流れる。


寺島M:いかんいかーん! このまま二人とも、黙りこくってたら気まずくなる!

寺島M:それで辞めるなんて言われたら大変だ

寺島M:ここは小粋な女子トーック! で、明るい職場を演出しないと!


寺島:(明るく)城島くんは、どうしてバイト始めたの?

城島:(照れくさそうに)実は最近、俺の地元で仕事がなくなっちゃいまして

寺島:ふんふん

城島:田舎なのに治安が悪いのもイヤだったんで。それで、こっちに引っ越してきたんです

寺島:そっかー、それは大変だったね

城島:おまけに仲間も例の感染症に結構やられてて……あ、俺は大丈夫ですよ。陰性でした

寺島:あ、ホント? よかったね

城島:ええ。それで店長と面接したら……っと、お客さん来ましたね

寺島:じゃあ初仕事、がんばってね


:大学生風の男性客が、レジ前におにぎりとお茶を持ってくる。

SE:バーコードを読み取る音。ピッピッ。


城島:四八〇円です

客:じゃあ千円で

城島:お釣り……八百円です

寺島:(間髪入れずツッコむ)いや違うでしょ!

城島:(慌てながら)お、お釣り……五二〇円です


:男性客は首を傾げながら出ていく。

SE:コンビニのチャイム


寺島:(フォローするように明るく)あはは、緊張しちゃった?

城島:(申し訳なさそうに)すみません……円って慣れなくて

寺島:え、えん? じゃあ何なら慣れてるっていうのよ?

城島:バナナなら(ウホホッと小さく笑う)

寺島M:これは、ボケ……だよね? ツッコんでいいの? どうなの!!??


SE:コンビニの来店チャイムが立て続けに鳴る。


寺島:あっ、もうお昼の時間か。城島くん、ここからが本番だから頑張ってね

城島:そうなんですか?

寺島:いつも閑古鳥鳴いてるウチの店も、お昼だけは超人気店になるの!


SE:ガヤガヤした人混みの音。しばらく続く。


寺島:(少し大きな声で)足元の矢印に従って、一列にお並び下さーい!


SE:ピッピッピッとレジの音


城島:おでんの卵と大根、おにぎりと唐揚げですか。全部一緒に入れてもいいですか?

寺島:(間髪入れず)いいわけないでしょ!?


城島:タバコ? すみませんお爺さん、二十歳以上でしょうか? え? でも人の見た目ってわからないじゃないですか!

寺島:(間髪入れず)自分でお爺さんって言ってるじゃない!


城島:え? おにぎりの賞味期限が切れてる? お客さん、ウガンダでも同じ事言えます?

寺島:すみませんっ! 代わりの持ってきます!

SE:走り去る音


城島:冷凍の鍋セット、お持ち帰りですか?

寺島:当たり前でしょ!

城島:コンドー……ム?これもお持ち――

寺島:(被せ気味に)早く袋に入れなさい!


寺島M:ダメだ。このままじゃいつまで経っても列がけない!


寺島:(焦りつつも優しく)城島君、混んできたしちょっとレジ変わろっか

城島:すみません……

寺島:あ、釣り銭足りない。城島くん、隣のレジから十円玉の束持ってきて

城島:分かりました


:五メートルほど離れた隣のレジに向かって、城島くんは二、三歩歩くと、おもむろに手を軽く握り、指の背を床につけた。

:そのまま四つん這いとは思えぬスピードでレジに到達すると、また同じ動作で戻ってくる。


城島:はい、どうぞ

寺島:(呆気にとられるも)あ、ありがと


SE:ガヤガヤの店内音、ピタリと止まる。

女客:(ひそひそ声)見た? 今の……

男客:(ひそひそ声)ナックルウォーキング、じゃないよな……


:レジ前に並んでいるお客さんが、一斉に疑いの視線を投げつけてくる。

:自分も奇異の目に晒された寺島は、心の中で弁明する。


寺島M:何バカな事考えてるのみんな。常識的に考えて。

寺島M:城島くんは日本語を喋って、私の言いつけを守って、コンビニで働いてるのよっ!?

寺島M:そんなわけ……そんな事、あるわけないじゃない!!


寺島:と、とりあえず城島くん。混んできたから隣のレジでやってみて。ゆっくりやってくれればいいから

城島:分かりました


:再びナックルウォークで隣のレジに移動する城島。


寺島M:やっぱり見間違いじゃなかったんだ……

寺島:お、お待たせしました~! あ、袋はどうしますか~?

SE:ピッピッピッと、軽快なレジの音。

:お客さんの視線は隣のレジに釘付けだが、誰も城島のレジには並ばない。

SE:店内ガヤガヤ音、小さめに始まる。

寺島M:最初から戦力としてアテにしてたわけじゃないし、今はこれでいい

寺島M:見世物にしちゃって悪いけど、今はとにかくそこでじっとしてて


城島:(明るめに)こちらのレジもどうぞ~

SE:店内ガヤガヤ音、一瞬止まる

:城島の呼びかけに、一斉に目を背けるお客さん。誰も城島のレジに並ばない。


SE:店内ガヤガヤ音、また始まる。

SE:ピッピッピッと、軽快なレジの音。


寺島M:うっわー。いたたまれないぞ、これ……


SE:ぽこっ、ぽこっ、ぽこっと、軽快な音。

SE:店内ガヤガヤ音、また止まる。


寺島M:え? 何? なんの音?

:寺島、並んでる列のお客さんたちが、一斉に隣のレジを振り向く。

:そこには、両手を交互に胸に打ち付け、踊るようなドラミングを披露する城島が。


城島:(視線が集まった事を確認し、明るめに)こちらのレジもどうぞ~

:お客さん、一斉に目を逸らす

SE:ぽこっ、ぽこっ、ぽこっと、軽快な音。

:お客さん、一斉に城島を見る。

城島:こちらのレジもどうぞ~

:お客さん、食い気味に一斉に目を逸らす


寺島M:こうして私とお客さんは、絶対に笑ってはいけない会計を進めていくのであった。


SE:ぽこっ、ぽこっ、と短めにフェードアウト

城島:(食い気味に)こちらのレジもどうぞ……(以下、フェードアウト)



〇:暗転後、閑散としたコンビニの店内。

:時計の針は、13時半頃を指している。カウンター内レジ前に並ぶ城島と寺島。


城島:寺島先輩、今日は役に立てなくてすみませんでしたっ!

:城島、勢いよく腰を折り、前屈するように頭を下げる。

寺島:気にしなくていいって~。バイト初日なんだし!


寺島M:ホント、健気で礼儀正しい子なんだよな、城島くんって

寺島M:でも、この姿はどう見ても……いや、何を考えてるの裕子。そんな事あるわけないじゃない

寺島M:だって彼、最初に言ってたじゃない


〇回想(以前のくだりを白黒で)

寺島:(明るく)城島くんはさ、どうしてバイト始めたの?

城島:(照れくさそうに)実は最近、俺の地元で仕事がなくなっちゃいまして


寺島M:そういえば……アフリカって森林伐採で、野生動物の生息地がどんどんなくなってるって、ニュースでやってた


城島:田舎なのに治安が悪いのもイヤだったんで。それで、こっちに引っ越してきたんです

寺島:そっかー、それは大変だったね


寺島M:密漁ハンターが、絶滅危惧種をむりやり捕まえてるとも、言ってた


城島:おまけに、仲間も例の感染症に結構やられてて……あ、俺は大丈夫ですよ。陰性でした

寺島:あ、ホント? よかったね


寺島M:たしかエボラ出血熱に感染した事も、絶滅危惧種になった大きな理由だとも、言ってたあああ!


〇:コンビニの店内(回想が終わり戻ってくる)


寺島M:ダメだダメだ……、私は何を考えている!?

寺島M:たしかに巨体でけむくじゃらでつぶらな瞳の城島くんだけど、彼は人間だ。人間の範囲だ

寺島M:すぐにそんな誤解、解く事ができるはずだ!


城島:寺島先輩?

寺島:(作り笑顔で)あのさ、ちょっと色々質問してもいい?

城島:はい


寺島:あの、四つん這いで移動してたじゃん。隣のレジ行く時

寺島:あれじゃないと移動できないの?

城島:やだなあ、ちゃんと立って移動できますよ

寺島:(安心して)あ、だよねー!

城島:2メートルくらいなら


SE:ピキッとした音。

:ツッコミたいところを我慢してる寺島の、作り笑いにヒビが入る。


寺島:城島くんの、好きな食べ物は?

城島:え、そうだなあ。繊維質が多い野菜系が好きですね。他にも木の実とか、果物とか

寺島:えーと、バナナ~……とかは?

城島:あー! バナナ好きですよ。でもうちの田舎じゃ、なかなか食べられないんですよ

寺島:え?

SE:ピキッとした音。

:寺島の作り笑いに、新たなヒビが入る。


寺島M:たしかバナナは東南アジアが原産で、アフリカなど熱帯雨林地域では育たないと、聞いた事があるようなないような


城島:あと、グンタイアリかな。たまに食べたくなりますよね、アレ

寺島:え?

城島:え?

城島:こっちの人、食べないんですか? ウチの実家、田舎だからかなあ

SE:ピキピキッとした音。

:寺島の作り笑いに、新たに二本ヒビが入る。


寺島M:アリなんて食べる事ある!? でも田舎の方だと、揚げた虫を食べる風習もあるっていうし……

寺島M:そうだ……夢だ! 城島くんの、将来の夢を聞けばいいんだ!

寺島M:ああ、これは人間の若者が見る夢だなって、確信持てるはず!


寺島:城島くんって、将来の夢とかあるの?

城島:(照れ臭そうに)実は俺、憧れてる職業があって……

寺島M:(嬉しそうに)そう、それよ!

寺島M:プロ目指してるスポーツ選手とか、バンドマンとか! 毎日練習ばっかでちょっと世間に疎いとか、そういう事なのねっ!

城島:コンビニ店員なんですけど


SE:ピキピキピキッとした音。

:もはや作り笑いは崩壊し、顔を伏せ手首を握りしめ、真っ赤になって耐える寺島。


寺島M:現代っ子は繊細。すぐ辞めちゃう! 否定してはいけない、いけないのだ!


城島:それで俺、いろんなコンビニ行って。面接するたび落とされて

寺島M:そりゃまー、あの奇行じゃね

寺島M:二足歩行2メートルが限界だし、ドラミングしつこいし


城島:でも、ここの店長さんは、そんな俺の夢を叶えてくれたんです

寺島M:店長、ヤル気重視採用だからなあ


城島:寺島先輩だって、こんな失敗ばっかの俺を見捨てず励ましてくれて

城島:俺、もっと役に立ちたいんです。恩返し、したいんです!


:つぶらな瞳から、涙が落ちる。それに気付いた城島は、慌てて太い腕で顔をこすり、寺島に背を向け座り込む。

SE:しんみりした音楽。


寺島M:城島くんと同じシフトに入って、彼の失敗で埋め尽くされた一日だったけど

寺島M:彼と一緒にいて、ひとつだけ分かった事がある


寺島:私、城島くんが健気にがんばってる姿、カッコいいと思うよ!

:城島、顔を上げ、つぶらな瞳で「本当ですか?」と語り掛けてくるような表情。


寺島:だからほら立って! 元気出して!

:寺島、城島の毛むくじゃらなぶっとい腕を両手で抱え、立たせる。


寺島:城島くんは田舎育ちで世間知らずなところがあるから、もっと細かく教えてあげる

寺島:憧れのコンビニ店員になれたんだから、頑張んなよ

寺島:私だって、待ち望んでた後輩が来てくれたんだから、頑張るよ!

城島:(感極まって)寺島先輩……

城島:本当に俺なんかと、一緒に働いてくれるんですか?


寺島M:ナックルウォークだのドラミングだの、コンビニ店員にとっては些細な問題でしかない

寺島M:ましてや人間かどうかだなんて、ばかばかしいにも程がある

寺島M:だって


寺島:(少し恥ずかしそうに)私が、城島くんと一緒に働きたいの!

城島:それは……


SE:しんみり音楽、終了。


城島:群れに入れって事ですか?

寺島:違うわよ

城島:ボス

寺島:ボスじゃないから


<完>


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(約5,800文字)


<注意事項>

※本台本の無断転載・使用を禁止します。

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コンビニバイトの城島くん トモユキ @tomoyuki2019

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