最終話 私の幸は彼女と作る。
私が主演したドラマが最終回を迎える。
「リアタイの最終回、間に合ったぁ!」
「
「仕方ないでしょ。
「それよりもブラくらい着けてきなさいよ」
「私にブラは要らない!」
「キャミソールでもいいから着なさい」
「パンツは?」
「穿きなさいよ」
本日は日本に帰国した耀子達もウチに泊まっており、母も
一部、裸族もテレビの前でゴロゴロとしているが、最終回は私と
「どんな感じになったかな?」
「楽しみである反面、恐くもあるわね」
すると家から追い出された座敷童が、
「私も出ているんだけど?」
ゴロゴロと床に寝そべったまま呟いた。
「そういえば子役で出ていたわね?」
「子役違う」
「座敷童な暗殺者として出ていたね」
「不本意」
「ああ、座敷童の格好で吹き矢を飛ばす?」
「それだね。一応、同業者って扱いで」
「座敷童が定着したのね
「芸名は
「仕事中だけでしょうが、それは!」
「それよりも始まったよ!」
「三十分延長スペシャルだって」
そうだね、今回は長かった。
大騒ぎの間に何とか時間を作って、撮影していったっけ。事務所には近寄れないから、ほぼ家とスタジオを行ったり来たりだったけど。
すると
「あれ? このBGMって・・・初出?」
提供表示中に部分的な音色が響いたから。
これには私と美樹もぽかーんである。
そのまま隣同士で呟きあう。
「使うのって二期からじゃ?」
「私もそう聞いてたけど?」
「じゃあ、演出の変更?」
「その可能性はあるね?」
「発売時期はまだ先よね」
「うん。そう聞いてる」
おそらくは触りだけでも流すのだろう。
発売時期は二期公開後なので前倒ししたのかもしれない。或いはショート版を公開して様子見する的な、そんな公開方法かもしれない。
(一応、歌詞の本命はサビの後にあるもんね)
楽曲の作詞は本当に大変だったけど、美樹の曲と相俟って良い仕上がりになったと思うよ。
何はともあれ、ドラマはいつの間にか序盤に差し掛かっていた。丁度、座敷童が出てくる場面だったけど。
「存在感が無いのを利用してる?」
「存在感はあるよ!」
「子供が複数分裂してる」
「そういう技能なの!」
「はいはい。黙って見ましょうね。お子様方」
「「お子様言うな!」」
光が耀子と雹ちゃんを黙らせた後、ようやく私が出てきた。ヌッと陰から顔を出す的な。
「「「「恐っ!」」」」
「ひどっ!」
役柄の私生活は高飛車なので、その落差は相当なものだったけど。改めて見ると凄いね。
「落差が半端ない」
「地味子と普段みたい」
「「確かに」」
「解せぬ」
CMを何度か挟んで本命の登場である。
「あれ? 美樹じゃない、みたい」
「メイク? メイクよね? 別人?」
「別人じゃなくて、私なんだけど」
「オカマなのに口調が荒い」
「「というか恐い」」
「失礼ね。アンタ達!」
「テレビと同じ台詞!?」
同じ口調で発したから耀子がガチで怯えた。
その瞬間だけ本人が乗り移ったのかも。
どうも美樹も私と同じタイプのようだ。
それがこの年まで発揮出来なかったのは頭で色々と考え過ぎていた事が原因だったらしい。
なので「思うがままに演じてみろ」と監督が言った途端、スッと入ってきたらしいからね?
そして、
「「「「あっ!」」」」
エンディングにて台詞と被るように私の声が響いた。バラードの後、アップテンポと同時に黒地のクレジットタイトルが始まった。
「あれ? この歌声?」
「まさか、美樹?」
「でも、詩織の声もあったような?」
「二人の声が響いてる!?」
「もしかしてだけど」
「「内緒!」」
というよりクレジットタイトルで出てくると思う。タイトル「葛藤」と作曲者と作詞者で。
流石に編曲者は別の人だけどね。
ユニット名は〈アサシン〉だった。
「アイドルデビュー?」
「アイドルとは違うよ!」
「というか作曲者が美樹の本名なんだけど?」
「うん。私が作曲したからね」
「「「そうなのぉ!?」」」
「顔面装甲にそんな才能があったなんて」
「そのあだ名はやめてね?」
私と美樹もデビュー曲がこんな形になるとは思えなかった。
そのまま「二期制作決定」が出てきた。
なお、ネットの反応は想像以上のものとなった。
(前倒しの理由はそれ狙い?)
それに加えて美樹が以前居た事務所では何らかの騒ぎが起きていても不思議ではないね。
「そうなると、美樹も二足のわらじ?」
「ユニットが続く限りはそうなるかな?」
「おそらくそうなると思う。何個か楽曲を事務所に提供する契約になっているしね。これって楽曲が出来た時だけは買い取ってくれるけど」
「ほほう、裏方兼女優かぁ」
おそらくは撮影後より複数の曲を歌う事になるのかもね。そのままライブ活動なども始める流れになるかもしれない。こればかりはマネージャーの手腕に因るので任せるしかないが。
それと共に美樹がネットに公開していた動画は一時的に消え私達のPVが代わりに公開されるまでになった。それはそれで閲覧数が凄い事になったね。その分、美樹アンチも湧いたが。
§
公開後、私と美樹は軽く変装して街を歩く。
というか夕食の買い出しなんだよね。
耀子達が実家に帰っていつもの二人暮らしに戻ったからね。あとはオフの日でもあるしね。
「
「美樹は派手子だよね?」
「それを言われるとちょっと辛い」
「地味子も割と辛いんだよ?」
「ごめんなさい」
変装すると何故か気づかれない不思議。
普段と真逆だからこそ街に溶け込んでいるように思える。木を隠すなら森の中とはよく聞くが、今がまさにそれで、二人で歩き回っているのに、すれ違う報道記者達はスルーである。
「正門のゴミ置き場も少し減ってる感じ?」
「今は部活で出入りする子達しか居ないもの」
「目的の者が居ないなら仕方ないって事か」
「あとはゴミの後始末に集中していると思う」
「あー。あれね」
それは強制帰国したゴミの裁判である。
どうも奴は干された直後より、同世代の女の子達を相手に、手酷い行いをしていたらしい。
(雹ちゃんが言っていたのは、それだったと)
時期は私と交際する前くらいだったけどね。
そして私が座って以降、阿呆らしくなり止めたとの証言が出てきている。どうもその件で大きな尻が苦手になったとか言っているらしい。
(私のお尻で呼吸困難。止めるに至った原因が私のお尻って。私は感じるようになったのに)
本当に何とも言えない状態である。
幸い、奴は〈さくら〉としか言っていないのでそれが誰かなのかは判明していないけどね。
奴の名字も
そのためか、マスコミは漸次数を減らしつつあり、夏休み中には落ち着く事が予測出来た。
「まぁ休み明けには少しだけ戻るかもね」
「ああ、謎ユニットを追い求めてって?」
「というより、美樹を求めて三千里?」
「なんていうか有名になるって大変ね」
「他人事のようだけどこれが現実だよ」
「それを聞くと現実逃避したいわ」
「あとで私のおっぱいで泣きな」
「うん。そうさせてもらうわ」
そんな他愛ない会話を行いつつ、スーパーマーケットに到着し、本日の材料を購入した。
帰り道は〈お好み研ちゃん〉に寄って、
「豚玉餅入り三つ、持ち帰りで」
「あいよ! いつもご贔屓にしてくれて、ありがとな。嬢ちゃん!」
昼食のお好み焼きを買った。
事前に予約を入れていたので保温済のお好み焼きを貰ったけどね。
私はその際に娘さんの所在を聞いた。
「ところで、
「学校だな。一人で補習に出ているな」
「あー。それは災難」
「ま、研己も反省しているし、良い薬にはなっただろう」
どうやら停学期間が明けて本格的に補習となったようである。従兄は碌でなしだったが、あの子は真面になるといいよね。反面教師で!
そして私は美樹と共にマンションへ戻り、
「座敷童居る?」
「ふぁ?」
「はい、お昼」
「ありがとう」
省エネモードの座敷童に昼食を与えた後、最上階の家に戻った。ここ最近の日課だよね。
そのままお昼となったので昼食を頂いた。
「「いただきます!」」
何度食べても美味しいよね。
研ちゃんのお好み焼きは。
「生地がモチモチで美味しい」
「お腹に溜まるから最高ね?」
本日は母も仕事なので家には居ない。
あとは学校もお休みだ。なので食後に行うのは軽い運動である。耀子が設置したゲーム機を準備して二人で踊ったりね。
でも、今日は少し違うかな?
「食後はお風呂に行こう!」
「そうね。汗も掻きたいし」
お風呂に入ってキスして抱き合って。
窓の外の景色を眺めながら、お風呂で愛し合った私達であった。
「とっても、幸せ」
「本当にそう思う」
「ところで、このあとはどうする?」
「一緒に寝る?」
「うん!」
時々、喧嘩したり平穏な生活が出来なくなりつつあるけれど、今の私達はとても幸せです!
了
平穏が旅立った、売れっ子タレントの日常。─1度きりの女子高生を満喫させて!─ 白ゐ眠子 @shiroineko_ink
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