まこと

@harasu

第1話 まこと

明日は日曜日。

まことはいつものように夜中までネット動画を観ていたが、気づけばもう日曜日だった。

まことはごく平凡な会社員。

強いて誇れるとすれば、土日がまとまって休めるくらいだ。

ヤバい!もう寝ないと、日曜日もダラダラ過ごしてしまう!

そう言ってまことは床に着いた。

そこまでは何の変哲もない日常であった。


しばらくすると、寝る理が浅いためか、夢を見出した。夢の中のため、声には出さないが、まことは明らかに夢だと感じていた。

それもそのはず。野菜を背に市場で歩く人が何人か目の前にいたからだ。

まことはこれが流行りのなろう系かと思い、心を躍らせながら、身も心もこの舞台に身を委ねた。

しかしながら、勇者の剣もHPやMP、スキルは愚か、所持金もなく、終いには服を着ているかもわからない。

まことは盲目であったためか、何かを着ていることは肌感からもわかった。

では、なぜ野菜を背に市場で歩く人が目の前にいることがわかったのだろう。

視覚がなければ、聴覚でわかったという人もいるだろうが、あまりにも表現が適格すぎた。


考えていても何も始まらないため、まことは盲目の中、辺りをそっと歩き出した。

それにしてもおかしい。市場であれば盲目な私に声をかけてくれても良いはず。そもそも、話し声ひとつしない。

これでは、今どこにいて、西暦何年の何月で、何時なのかもわからない。


すると、景色が変わった。

今度は難民キャンプのようだ。

まことは、展開が変わりすぎて意味がわからないと心の中で思った。と同時に、目が見えていた。

風貌は見窄らしい服装で、当然所持金もない。

ひとまず難民キャンプで話を聞いてみようと、キャンプの中の人のもとへ急いだ。

やはりおかしい。今回は人は居るから話は聞けるが、まことは言語を伝えることができないようだ。

キャンプの人も見兼ねて紙に書いて見せてくれるが、何の言語かもわからないと同時に、夢ならば覚めてくれと心の中で願った。


っと、なろう系に憧れていたまことであったが、現実は甘くなく、夢の世界は終わりを告げてくれない。


それならばと、キャンプ近くには川が通っているため、命を投げ出す覚悟で飛び込んだ。

川の中は外から見てわからなかったが、遺骨のようなものも川底に沈んでいた。

察するに、キャンプの人が飢えに耐えきれなかったが、紛争の巻き添えになった人を川へ流していたのだろうとまことは思った。


まことは、苦しみながらも川の中で息を潜めた結果、次第に意識が朦朧としてきた。その後は記憶にない。


そして、目が覚めると野菜を背に市場で歩く人が何人か目の前にいた。

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