創作に向上心は必要か? ~ヘンリー・ダーガーに捧ぐ~

ユウグレムシ

 

創作物に自信が持てない人。

創作したいけどモチベが上がらない人。


筆者の創作意欲を支えてくれているものがいくつかある。

本稿では、そのうちのひとつをお裾分けしよう。


ヘンリー・ダーガー(1892-1973、アメリカ)である!!


ご存じない読者には、「こんな人もいるのか」と思ってほしい。

ご存じの読者には、「こんな人もいたなぁ」と思い出してほしい。


筆者は、奇人変人を扱うアングラ本でその名を知り、

詳しいプロフィールについてはウィキペディアで知った。


本稿の情報元はウィキペディアの記事だ。

興味を持った方は、筆者のたわごとを鵜呑みにせず、

信憑性の高い文献を調べて頂きたい。


なお、実在の人物や団体に対し誹謗中傷する意図はない。



ヘンリー・ダーガーは、

貧乏で、孤独で、精神障害があり、小児性愛のもあり、

養子を欲しがっていて、もし養子を取っていたらどうなっていたか分からない、

という人なのだが、


生涯にわたって、長い長い物語の創作活動を続け、どこにも発表することなく、

貸間の大家さんに「死後は(作品を含む)持ち物を処分してほしい」とさえ言っていた。


ダーガーの作品、『非現実の王国で』は、

彼との約束を守らなかった大家さんの判断によって、世に出ることになる。

(大家さんには芸術の素養があり、ダーガーの作品を見て何かを感じたらしい)


どんなに長い作品かはウィキペディアを参照してもらいたいが、

ざっくり説明すると、1万5000ページにも及ぶ物語に、300枚もの挿絵を添えたそうだ。


1万5000ページ!!!!!!


両性具有の女の子達が活躍する、エログロなんでもありの戦争スペクタクル!!

絵が描けないのでゴミ捨て場から拾ってきた雑誌の写真をスクラップして貼り付けた!!


もし現代に新作として発表されたら、変態紳士の熱烈な支持を集める代わりに

ネットが炎上……どころか爆発しそうな性癖火薬庫じみた内容だが、


その変態性が倫理に照らしてどうだとか、

欲求不満の捌け口が欲しかっただけじゃないのか、とか、

そんな上っ面はどうでもいい!!


技術も、才能も、お金も、ファンの声援も、なんッッッッッにも持たない中、

ゴミを漁ってまで、

自分にしか理解できないけど欲しくてたまらないものを、

自分のできる形で、生涯、創作し続けたところこそが肝心なのだ。


(視覚障害者の聴覚や、聴覚障害者の視覚が鋭敏になるように、

精神障害者の特異な集中力が創作意欲を手伝ったのかもしれない)



ヘンリー・ダーガーの人生は、

「好きなものを好きなように創作していいんだよ」

と、筆者を勇気づけてくれている気がした。


筆者にとってダーガーは、創作物を世に出す際の、ボーダーラインのうちのひとつである。


こんなに自由すぎるオッサンがいるなら、

筆者ごときが、ちょっとぐらい好き勝手に書いたからって何だというのか!!


創作物を世に出したいと思ったとき、

叩かれるかも、嫌われるかも、とか、

他の人と比べてヘタかも、作り方が違うかも、とか、

いちいち恥ずかしがらなくていい。


評価なんて、しょせん他人のすること。


観衆の顔色を窺って、誰からの批判も受けずに済むような

お利口ちゃんな創作物だけが世に出ていい決まりはない。


誰かの真似がしたければ真似でもいいが、

真似しかしないのなら、

そいつは一生、自分の本音では語れず、他人の真似だけで終わる。


人間、いびつで結構。

「自分を磨く」とか言って、丸く収まろうとするな!!

むしろ、いびつな部分をどんどん見せてくれ!!

そうでなきゃつまらない!!

見せてくれた結果どんなことになっても、筆者は責任取らないけどね!!


自分が欲しくて作ったのなら、自分にしか理解できなくても、

それは立派な、自分の創作物なのだ。

そのうえで自分の創作物に納得するかどうかは、

他の誰でもなく、自分自身が判断すればいい。

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