青い家

碧山

第1話不思議なお隣さん

 お父さんの仕事の理由で僕、坂本勇気は須磨という山の上にある住宅街に引っ越してきた。

 近隣の皆さんはとても優しく合うたびにお菓子をくれる。お隣の青い屋根のお家の人を除いて。

 お隣の青いお家は周りのうちとは違ってお庭があり芝生が敷いてあるレンガのお家。表札には森田と書いてあるらしいお父さんが引っ越しの挨拶に行ったがお留守だったと言っていた。

 

 森田さんってどんな人なんだろう。

 

 僕のお家の向かいにある柴田さんのおばあちゃんに森田さんのことを聞いたらあった事はないけど家には明かりをついているところは見たと言っていた。

 

 森田さんってどんな人なんだろう。


 僕が学校が終わりお母さんのお迎えの車で帰宅した時、森田さんのお家の門から宅配業者のお兄さんが出てきた。

「お兄さん、森田さんに会えた?」

 「あっ会えたけど…」

 お兄さんは言葉をつまらせながら返事をした。

「森田さんってどんな人だった?」

「えっと、優しそうなお兄さんだったよ」

 お兄さんは次の配達のお仕事があるのか急いでトラックに乗って帰ってしまったので僕もお家に帰ろうとしたらお母さんが頭に角を生やして真っ赤な顔をして怒っていた。

 「こら、変な事しないの!」

 僕のこめかみに握りこぶしをグリグリとひねられて痛く、晩御飯の唐揚げを皆んなより一個減らされた。


森田さんってどんな人なんだろう。


 それから2日後の日曜日僕はお父さんと家の前でキャッチボールをしてると白いコック服を来ておかもちを持った男性が森田さんの家のインターホンを押して門を入っていきそのまま家の中に入っていく。ボールが3往復するくらいで男性は毎度あり〜という掛け声とともに出てくる。

「お兄さん、森田さんに会えた?」

「おうよ、坊主森田さん美人だよなぁ~坊主もしかして狙ってるのか~」

 あれ?森田さんって男性じゃないの?もしかして家族で住んでるのかなぁ。

 僕がボールを持ってお兄さんと話していたのでお父さんが近寄ってきてどうしました?と話しかけてきてお兄さんは大丈夫ですよと言ってバイクに乗って山を下っていった。

 

 森田さんってどんな人なんだろう。

 

 それから半月が経ちその日の僕は学校が家庭訪問の週刊でお昼に帰ってくると森田さんのお家に入る人影を車越しに見た。

 僕は急いで出ようとしたがお母さんは車の操縦中で開かなかった。

 お母さんは車の駐車が下手でいつも家の前であーでもないこーでもないと言いながら前に行ったり後ろに行ったりする。

 お母さんの駐車が終わって車を出るとすでに遅く森田さんは家の中に入ってしまった。もーお母さんのせいだ。今日一日僕は不機嫌だったがお母さんには理由はわからなかった。


 森田さんってどんな人だろう。

 

 その日の週末、僕は家族で遊園地に行った。

 僕はジェットコースターが大の苦手で克服するために列に並ぶのだが、並んでいるときに恐怖で泣いてしまい、いつもお父さんの「やめとこうか」という言葉で途中退出をするが今日は友達の春馬君の家族が居るため中々言い出せなかった。

 春馬君の家族がジェットコースターの列に並ぼうとした時、お父さんは「勇気はお父さんと待っておくか」と声をかけてくれたが春馬くんにジェットコースター乗れないなんてバレたくなかった為乗ると言って列を並んだ。

 並んだ時上のモニターで恐竜ががおーがおーと叫ぶ声と遠くから聞こえる悲鳴で泣きそうになるが春馬くんには常に笑顔のためぐっと堪えた。

 ついに乗車のときが来て安全バーが降りた僕は恐怖のあまり泣いてしまったがボートは進んでいく。

 ボートが進む先にはたくさんの恐竜がいて何もしてはこない。ある程度進むとサイレンが鳴り響きどんどん上に登っていくそこは暗くいろんな音があちこちからする。僕は恐怖で隣のお父さんの服を強く掴むとお父さんが「大丈夫お父さんが守ってやる」その一言が力となったのか一気に涙が引き恐怖感が無くなった。

 その直後ティラノサウルスが現れてがおーと襲いかかった直後ボートは勢いよく下に落ちて着地と同時に水しぶきが襲ってきた。

 ボートはそのまま出口へと向かい僕たちは降りると春馬くんが春馬くんのお父さんにくっついて号泣していた。それを見て僕は笑いそうになったがぐっと堪えた。

 その後、僕たちは春馬くん一家とお別れをして車に乗ってお家に変えると僕は車の中での寝てしまい気づいたら僕のベットの上だった。

 起きてリビングに行くとお父さんとお母さんがお笑いのテレビを見ていた。

「勇気おはよう今日はかっこよかったな春馬くんあんなに泣いていたのに」

「もぅ、お父さん」

 お母さんはお父さんを軽く叩きお父さんは僕を見てニコッと笑った。

 僕は周りを見渡したが探したものはなかった。

「お母さん、森田さんに渡すおみやげは?」

「あっ、おみやげなら家についた時お庭の手入れをされていたので渡したよ」

なんと、僕が寝ている間にお母さんとお父さんはあっていた。

「ねぇ、森田さんってどんな人だった?」

「腰の曲がった白髪のお爺さんだったよ。おみやげあげたら大変喜んでいたわよ。寝ている勇気を撫でて」

 お母さんは微笑んで言う。

 僕の森田さんに合う作戦は失敗に終わった。

あれから幾度も作戦をたてて努力をしたが会えなかった。


森田さんに会いたかった。

 

 僕が中学生になり2年になりテニス部の総体の帰り。自転車を止めて家に入ろうとすると森田さんの家の鍵の開く音がした。僕は家のトッテを握りながら森田さんの家の扉に釘付けになって出てくるのを待った。

 扉から細い片足があらわになり順にもう片足と出てきて白いロングスカートに麦わら帽子の女性が出てくる。

 手足が細く白く茶髪の長い髪が風でなびく。

「こんばんは」

 女性が僕を見て挨拶をする

「こっ…ここここんばんは!」

 声が出なかった。口がうまく動かない。

 女性はフフっと笑いながら門を開けてでていく。

 このままではまずいと思いと二度と会えないと思い体が勝手に動いた。

「すっすいません…もっ森田さんでしょうか。」

 女性は振り向いてニコッと笑うの

「はい、そうですよ。お兄ちゃんになりましたね。」

 森田さんだった。でもおかんや父がいうお爺さんではないし、宅配業者のいうお兄さんではない。

「また、会えますか。」

「会えますよ」

女性は笑顔で返答をして山を降りていく。僕は緊張もあったのかその場からうごけなくなっていた。

 鍵が空いたのに入ってこない為心配になった母親が家から出てきて「何やってるの」のセリフで自我を取り戻し家に入った。

 

 森田さんとてもきれいな人だった。


 次の日僕は早朝から素振りをしていると森田さんの家の扉が開いた。

「勇気くんおはよう。」

 青いロングスカートを着た昨日のであった森田さんがそこにいた。

「おっおはようございます…」

 僕は森田さんを見ると顔や全身が熱くなった。

「朝早いのね」

 森田さんは微笑みながら言葉を返す。

「にっ…日課なので」

「偉い偉い」

 森田さんは家の鍵を閉めて門の扉を開ける。

「もっ森田さんはご家族で住んでいるのですか?」

 口が勝手に動く。ずっと気になっていたことだがあまりにも綺麗なため思いつかなかった。

「え?一人だよ?」

おかしな返事が来た。

「えっでも、親父おやじは森田さんはご年配の男性だったとか宅配業者のお兄さんは優しそうなお兄さんだったって…」

「私ね、実は魔女なの」

 魔女…おとぎ話や空想の産物だと思っていたがお隣の森田さんは魔女だという。

「勇気くん少し時間がある?」

 僕は質問と同時に首を上下に振った。これを逃せばもう、森田さんには会えないかもしれないと頭によぎった。

 「よろしい。では、ついてきて」

 森田さんは微笑みながら進んでいく。

 普段なら家を出て突き当りを左に行き山を下ると二車線の道路が出てきてすぐに駅が見えるが森田さんは右に行き山を登っていく。

 登るとすぐに自治会館があり行きどまりなのだが森田さんは自治会館の裏手に入り竹藪に入る。

「こっちこっち」

 森田さんは手招きと一緒に僕を誘う。

 竹藪を抜けると一本の獣道がありそれに従って草を掻き分けて少し行くとそこには滝があった。

 あたりには人気は全く無い。

 僕もここに来て少し立つがご近所さんからも何も聞かされていない。

 滝はサーと音を立てて水が垂れてそこには小さな小鳥たちや狸が水を飲んでいた。

「綺麗でしょ」

「はっ…はい!」

「私は朝個々に来るのが日課なの」

 森田さんは耳元でささやく。

「勇気くんと私の秘密だよ」

 僕は耳まで熱くなり声が出なかったため素早く上下頷いた。

 森田さんは僕の両手を掴んで向かい合って目を閉じた。

 そして目開いたと同時に空に飛び上がった。

 先程通り過ぎた竹藪や木々が足の下にあり僕は恐怖で目をつぶった。

 森田さんは左手を離したため僕は咄嗟に左手で森田さんの右手を掴んだ。

「勇気くん大丈夫目を開けて」

 恐る恐る目を開けるとそこには遠くに海と登る太陽が見えた。

「では私に合わせて足を前に出して」

 足は恐怖で固まっていて動きづらいが気合で一歩を踏み出すと宙を一歩前進した。

 そのままその次その次と足を進めて歩きだすと小さくなった家が見えた。

 まるで飛んでいる飛行機の窓から地面を覗いているみたいに。

 森田さんには再び僕の左手を掴んで向かい合い回りだす。

 僕は踊りなど踊ったことはないが蹴躓地が無いため森田さんに身を委ねた。

 二人で笑いながら過ごしていると日はだいぶ登りだいたい朝の七時過ぎ頃だろうか二人は自治会館の目の前でおりた。

「勇気くん。ありがとう楽しかった。」

「こちらこそありがとうございました。」

僕は頭を下げる。

「ごめんね勇気くん。今日でお別れなの」

僕は頭をあげて森田さんの顔を見ると下を向いていた。

「悪い人に居場所がバレちゃって逃げないといけないの」

「嫌です」

僕は無意識で返事をした。

「怖い魔法使いがここに来る前に逃げないと近隣に迷惑がかかるの勇気君のお父さんやお母さんにも」

 急に恐怖が襲ってくる。

「だからお別れなの最後に勇気くんにあえて良かった」

森田さんは歩き出す。

 少し離れて見えなくなる時

「それでも嫌です。僕がそんな悪いやつをやっつけて家族も森田さんも守ります!」

 森田さんの足は止まった。

「絶対に守るのでいなくならないでくださいお別れは嫌です。」

 右手の握り拳に力を入れすぎたせいか少量の血が出る。

「では、君が高校を卒業したらロンドンのヒースロー空港で待ってるから。私の弟子になって私を守ってよ」

 森田さんは振り向き叫んだ。その時の森田さんは涙で顔がくしゃくしゃだった。

「わかりました!絶対に守ります!」

 僕は右手の握りこぶしを振り上げた。

「カレン!森田カレンよ!絶対だからね!」

 その後、僕は学校に行き返ってくると森田さんの家には人気を感じなかった。

 あれから4年と少し経ち僕は高校を卒業した。魔法使いとは何が必要なのかなど探ってみたが何もわからずとりあえず英会話と体は鍛えに鍛えた。

 親や教師には大反対され大学にいけと言われたがそれを振り切り高校の時期に働いて貯めた貯金を握りしめてイギリスㇸ飛んだ。

 入国審査を超えて出ると白のロングスカートに麦わら帽子の被った女性が目の前にいた。

「カレン!」

 声に築きカレンは走って来る。

「いらっしゃい勇気くん。また大きくなったね。」

 カレンは微笑みながら言う。

「そりゃカレンを守らないといけないからね」

 恥ずかしいことを言ってる自覚はあり恥ずかしくなる。

 カレンはあの時から変わらない。

「でも、よく僕が勇気ってわかったね」

「だって、マーキングしてたのよ君がお父さんに抱っこされていたのときにね」

 カレンは歩き出す。

「えっマーキングってなんだよ」

 僕は顔のいたるところを触るが見つからない。

「ヒ・ミ・ツ」

「ちょっと、教えてよ」

 僕はカレンを追いかける。


森田さんはどんな人なんだろう。


森田カレンは僕が好きな魔法使いだ。



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青い家 碧山 @AOIKAKu

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