EP21
「こっちです」
エミリーに案内されるまま彼女の背中を追いかけること数分、ソファーやテレビが置いてあるリビングルームのような場所にたどり着いた。
「ここがパイロットたちの共同スペースであり、艦の中央部です。ここから伸びている全ての通路が各区画に繋がっています」
そう言ったエミリーが共有スペースの四方から伸びている通路を指さしながらそう答える。
「それでは次n「あ!鈍くさだ!」ッ!」
甲高い声が何処からか聞こえ、共有スペースのソファーを跳び越えて獲物を見つけた狼のような目を向けながらエミリーに近づいてくる。
「こ、こんには。アヤメさん」
先ほどまでの明るい笑顔はどこへやら暗い顔を浮か肩を微かに震わせたエミリーが引きつった笑みを浮かべてそう答える。
「よお!エミリーちゃん!久しぶりだな!」
野太い声が響きわたり、エミリーが肩を多く震わわせ後ずさる。
「おい!どこへ行くつもりだ?お前は俺たちの玩具だろ?」
がたいのいい男がそう言いながらエミリーに近づき彼女の髪を掴み匂いを嗅ぎ始める。
「ッ!や、止めてくd「いい匂いだな?香水変えたか?」は、離して」
力無くそう言ったエミリーを見て男が大きく笑い出す。
「ハハハハハハ!おい聞いたか!お前ら役立たずが離してだってよ」
「ハハハ!初々しくていいじゃねえか」
そう言ってエミリーの髪を掴んでいる男とは別の男がゆっくり歩いて近づいてくる。
「へ。ヘルラフ。さnキャ!」
さらにもう一歩逃げるように後ろに後ずさるエミリーの足をすくったアヤメと呼ばれた女が倒れたエミリーの腹を踏みつける。
「うぅぅ」
「はあ!汚いうめき声!なにかまととぶってんだよ!ええ」
そう言ってアヤメはさらに腹を踏みつけて苦しむエミリーを怒鳴りつける。
「おい!もうそこら辺で止めとけ」
「あぁあ!てめえ誰だよ」
「あんたの薄汚い足で踏みつけられてる女の部下だよ」
そう言えば奥で控えていたがたいの良い男が笑い出し、別の男とエミリーを踏みつけている女も笑い出す。
「あんたも災難だね。こんな女の下に尽かされるなんて」
「うぅぅぅ」
そう言いさらにエミリーの腹を踏みつける女に流石にイラつきを隠すのも限界になりギロリと睨みつける。
「ッ!な、にさ。その生意気な目!お前らやっちまえ!」
「ぁあ。ったく、面倒くせーな」
そう言ってがたいの言い男が近づいてくる。
「に、逃げて!しーな。さん」
掠れた声が足元から聞こえてくる。
「へー。シーナって言うのかお前。俺の名はマーガスだ。わからせる前に覚えとけよ」
そう言ったマーガスは拳を振り上げ、振り下ろす。
大振りストレート。
半歩後ろに下がり、マーガスの拳を避けがら空きの肩に手を掛け地面に押し倒し着地の瞬間にマーガスの顔面に右脚の膝を捻じ込み全体重を膝に乗せ、マーガスの顔面めがけ膝蹴りを叩き込む。
(まだ息があるのか)
素早く立ち上がりマーガスのがら空きの鳩尾に踵落としを叩き込む。
「口の割には弱いな。それで?次は誰だ?」
口から泡を吹いて痙攣しているマーガスを一瞥しエミリーを踏みつけているアヤメを睨みつける。
「う、しろ」
エミリーのうめき声を滲ませた声がそう告げるのとほぼ同時に風を切る音が背後から聞こえ、咄嗟に前に飛び込む。
「っく!避けた!?」
驚くヘルラフと呼ばれた男を余所に地面に手をつき空中で1回転し着地する。
「ナイフか。厄介な」
切られてはいないだろうが、万が一を想定し首筋を撫で出血の有無を確認しながら逆手でナイフを逆手握り、独特の構えを取るヘルラフと言うと男を睨みつけ牽制する。
「あんた。ただもんじゃねーだろ?」
「そう言う貴様こそ。その構え、私の記憶が正しければ帝国軍の〈タスク7〉(特殊作戦軍)のCQCのナイフ格闘の基本だっスタイルだったかな?」
「ああ!よく知ってたな!だがそんなことを知っていたとこで俺のナイフには勝てないそ!」
そう言ってナイフを持ち替え突き出す動作をし挑発してくる。
「ナイフをしまえ。これ以上はただの喧嘩じゃすまなくなるぞ!」
「それがどうしたよ!ええ!」
ついに我慢できなくなったのかナイフを素早く逆手で持ち替えたヘルラフが突っ込んでくる。
「ッ!」
左手で首筋を多い隠し、素早いナイフの斬りかかりを何とか紙一重のタイミングで避けていく。
ヘルラフの素早い斬りかかりとは言えど所詮は人間、その斬りかかりの速さには限界がありどうしても隙が生まれる。
その隙を逃がさす合いた右手でヘルラフのボディに強烈なブローを叩き込みジリジリとダメージを蓄積させていく。
「はぁ。はぁ。はぁ。クソが!」
痛みに歪むヘルラフのナイフの斬りつけが弱まった隙を突き、守りの構えと解いて攻撃に入る。
刹那、ヘルラフが勝利の笑みを浮かべ逆手のナイフを握り直し、残った全ての力を乗せて恐らく彼が繰り出すであろ最速の突きをがら空きの右胸めがけ叩き込んでくる。
「バカが」
小さく呟き、片足を後ろに引き半身でヘルラフの渾身の突きを避けと同時に左手でヘルラフのナイフを持った右手首筋ををホールドし手前に引き寄せ体勢を崩させる。
「なっ!」
右手でヘルラフの右肘を弾くと同時に足を踏む抜く。
「がぁぁぁアアアア!」
踏み抜いた足から異音が聞こえ、次いでヘルラフが煩くわめき始める。
「煩いな」
煩くわめくヘルラフがナイフを落とす前に素早く下から右腕を回し込み外側押し込み右腕を折り曲げ、ナイフの柄を握っているこいつの右手ごと掴み首後ろまで押し上げる。
「死n「止めろ!」チッ!」
ナイフの刃をヘルラフの首筋に押し当て手前に引き下ろそうとした刹那、怒号が響き下ろしかけたナイフを引きとめヘルラフからナイフを抜き取り素早く背後に回り込み首にナイフを当てヘルラフを肉壁にながら怒号を放った男を睨みつける。
「そいつも、そこで伸びているマーガスももう十分懲りたはずだ。もう止めておけ」
軍服に身を包んだ男は抜いていたハンドガンを腰のホルスターに仕舞いこみそう言い放つ。
「それもそうだなッ!」
そう言ってヘルラフの首を締め上げ意識を落とさせて逆手で持っていたナイフを空中に放り投げ落ちてきたナイフを掴み、完全に油断していたアヤメの無防備な首筋めがけ投げつける。
「次は当てるぞ?死にたく無ければ、うちの隊長の腹の上からその薄汚い足をさっさと退けろ。蛆虫が」
アヤメの首の薄皮を掻切って共有スペース奥の壁へと突き刺さる。
驚いたアヤメが後ろに転び、首筋から流れ出した真っ赤な血せ床を汚し傷口を押さえな男の背後に駆け込む。
「雑魚どもが。時代が時代なら殺していたところを」
締め上げたヘルラフを地面に放り投げ、エミリーの元へ歩きだす。
「ゴッホ。ガッハ。ゴッホゴッホ」
よほど苦しかったのか激しく咳き込み、呼吸を整えているエミリーを一瞥し男の背後に隠れチラリとこちらを覗き込んでいるアヤメを睨みつける。
「おい。おい。こいも悪気があった訳じゃないんだ。だからそんな怖い目で睨むなよ」
「外野は黙ってろ」
何かと口を挟んでくる男に一喝し、ゼイゼイと荒い呼吸をしながら何とか起き上がろうとしているエミリーに手を差し伸べる。
「あ。ありがとうございます」
彼女の雪のように美しい手が私の手を掴む。
「勘違いするな。私はあんたを助けたんじゃなく隊の名誉を守っただけだ」
そう言って未だ腹部の痛みに顔を歪めるエミリーに肩を貸し彼女の指が指し示す通路へとゆっくりと歩みを進めていく。
逝きつく先で 予璃那(よりな) @yorina1125
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