野生の子ども

TSヴォーライト

野生の子ども

僕、私は、13才の身のとき、2人の仲間と共に、夜中の12時に、装備を纏い踏切に集合した。


踏切から近くの無人駅へと歩き、電車へと乗った。無人駅を選んだ理由、目的は一つ。家出だ。


駆け落ちと表現することもできた。男子おとこのこが2人、女子おんなのこが1人。友情も恋情も喜びも弾かせながら、僕たちは電車に包まれ、緑々みどりみどりしい新緑の山奥の線路を、走っていていた。


海が見えれば、僕たちはちせいと共に喜こんだ。思春期の灯油は燃え、青春の温もりと冷たさが電車内を包み、世界へのファックとありがとうを盛大に叫んだ。


電車は、赤い橋を渡り始めた。橋下には、森りに挟まれた、灰色のきれいな石がたくさんの川があった。美しかった。それは僕たちの自然わくわくを揺さぶらせてた。あの石の間を跳ねていたら楽しいのだろう。その空想の中に、隣りにいる二人の姿が見え始めた。僕はあることを思いついた。赤いアーチは、降下を始めている。急がなくては。僕はリュックのキーホルダーをぶち取った。何年か前にもらった、石のお守りだ。僕は窓を開け、鋼の柱に当たらないように、それを投げた。お守りは離れてゆき、やがて隠される。青春の風が僕らを吹き付けた。その虹色の空気を、ごっくんと飲み込んだ。


やがて、電車はM山を登り始めた。ここを抜ければ、僕たちの家があった地区とは違う地区に入る。ここ以上は管轄の手が届かないだろう。


暫く登ったその時、茶色の天然な樹木に、ヘッドライトの色が写った。離れそうな金属音。やがて僕らは、反対側の座席へと投げ飛ばされた。怖さ、面白さ、意味不明な感情が、僕らの心を支配した。その時僕らの体は、お互いの柔らかい部分に触れていた。それだけではなく、僕らの心は、野性的に繋がりが強くなった。やがて電車は落ちた。どこからかはわからない。ただ僕たちは、シートに衝撃を吸収された後、砕かれた窓から細い草がありふれた雑草の中へと放り出された。僕らは困惑していたが、頭脳は緊急時にはよく回るようで、その場をうまく立ち回れた。車両は1両しかなくなっていていた。他のがどこにいったかは、知らない。そもそも、車両は砕かれ、夜に静寂に飲み込まれていた。非常用設備も無さそうで、あってもただの藻屑もくずとなっているだろう。


僕らはスマホを持っていなかった。

持っていたかもしれないが、どこかで砕けたのだろう。


小さなリスが、赤い眼を光らせ、何事もないような顔で、脱出口をぴょんぴょん歩いている。


荷物に役に立つものはないのだろうか。

手先が冷たくなってきた。

電灯を探した。炎を炊ける物を探した。光が欲しかった。友は、無いよと告げた。もう一人も、同じ顔をしていた。


そうか。

僕らの心は完全に繫がっているため、僕はこの瞬間に、完全に悟っていた。


人類の象徴であった光は、僕らにはもうない。今僕たちを照らすのは、星空の光。銀河の光。野獣も小動物もが受ける光と同じ光。今僕たちは、自然の中でポツリ。今まで守られてきた鉄と知の壁はなく、おなじ高さで、赤い野獣と、お互い血の目線を交換し無きゃならないのだ。


僕らはそうして、野生の子どもとなった

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