第5話 幽霊の少女の頼み
紫の震えた声で振り返ってみたら、俺が紫陽花屋敷に入った時に現れた幽霊の少女がいた。
「…君、俺がここに入った時にいた幽霊か。何の用だ?もういいだろ、あの子って紫のことじゃないのか?」
幽霊とは関わりたくないから少し睨み付けて言った。
「…違う。わたしが助けてほしい子はそのお姉ちゃんじゃない…」
幽霊の少女は弱々しく答えた。紫は震えて俺にしがみついてる。
「紫じゃなきゃ誰だっていうんだ?他にいるのか?」
こっちは今すぐにも帰りたいというのに。苛立ちながら強気に言ったら、紫が口を出した。
「…ねぇ、もしかしてあなたが助けてほしい子って包帯をつけた男の子かな?」
「包帯をつけた男の子って?」
「優也が来る前にね、迷って色々行っていたら
右目に包帯をつけた男の子を見かけたの。年はその子と同じくらいで青っぽい着物を着てたよ。遠くからだったからあんまり顔はよく見えなかったけど…声掛けようとしたらいなくなっちゃって」
他にもいたのか…紫の話を聞く限り、幽霊の少女と包帯をつけた男の子は関係ありそうだと思った。多分、その子も同じく幽霊だろう。
「おい、幽霊。紫が話した包帯をつけた子であっているのか?」
少女は頷いて口を開く。
「うん、その子で合ってる…わたしは
幽霊と呼ばれ気にくわなかったのか、不満げに頬を膨らませていた。紫は少し落ち着いたのか、俺にしがみつくのはやめて手を離す。
「…小雪ちゃんっていうんだね、可愛い名前!
ねぇ、優也!助けになってあげようよ!なんだか小雪ちゃん辛そうだし…それに出る方法とか分かるかもしれないじゃない?私は
さっきまであんなに怖がっていたのに、小雪を助けようとしている。昔から、困ってる人を見ると放っておけないからな…小雪は人じゃないけど。
それに、その子に聞けば出る方法も知れるかもしれない。期待はできないが。幼い子供の幽霊とはいえ、気を緩めたくない。
「…悪かったな、小雪。でも、信用したわけじゃない」
「うん…お願い、その子を…お願い
小雪は悲しみに溢れた顔で俺達に頼んだ。
「その子…青依くんね。小雪ちゃん、助けてみるね」
「まあ、できる限りはやってみるか…それで、青依って子はどこにいるんだ?その子に聞けば帰り方は分かるか?」
「うん…多分、分かるかも。どこにいるか分かんない…青依は気をつけて危ないから」
頼りないが、今は青依って子を探さなければならない。早く探して帰る方法を聞かないとだ。
「危ないってどういうことだ?…青依は小雪と同じく幽霊なんだろう?」
「うん…そうだけど、青依は悪い念がついていて悪霊みたいになってる。それが強すぎてわたしじゃ逆に取り込まれちゃう…」
「私達でどうにかできるかな…」
俺と紫は不安になる。俺達は普通の高校生だからなす術もない。
「小雪、俺達は霊媒師でもないし、祓う力もない。はっきり言って無理だ」
「分かってるけど…お兄ちゃんとお姉ちゃんはわたしが見えてるし、今までここに入ってきた人達はわたしの事見えてる人ほとんどいなかった…あのお兄さんは見えてたけど、駄目だった…今度こそ青依を止めたいの…もう、人が死んじゃうの嫌だよ…」
泣きじゃりながら小雪は言う。青依が今まで紫陽花屋敷に人を招き入れていたのか何のために?屋敷に咲いてる紫陽花と何か関係はあるのか?
小雪を見てて不敏に思えた。今まで幽霊に対してそういう思いは持ち合わせてはいなかったが、今は話が別だ。
早く紫を連れてここから出たいが、青依を助けれなければ屋敷からは出られない。
面倒ではあるが、どうしたらいいだ──待てよ、あのお兄さんって誰だ?
「小雪ちゃん、可哀想…なんとか力になれないかな?青依くんに説得とかしてみる?」
「…無理だろ、悪霊相手に話が通じるかどうかも分からないし。小雪、あのお兄さんって?もしかして…」
「えっと、霊媒師のお兄さんにも青依を助けてほしいってお願いしたの…でも、殺されちゃった… ごめんなさい、何もできなくて」
小雪は涙を流しながら辛そうに話す。気の毒に感じ胸を痛める。紫も目を伏せ辛く悲しい顔だ。
──やっぱりか、俺が見た死体の霊媒師の男性だったのか。
だとすると、相当厄介だぞ…俺達が本当に助けられのか?
「…そうか、でも力になれるか?最悪、俺達殺されるかもしれないし…」
「…その人、殺されちゃったんだ…辛いよね、小雪ちゃん…優也、私達ができることはやってみようよ。このままじゃ、小雪ちゃんは辛いままだし、屋敷からは出られないし。青依くんのこと怖いけど、どうにかしたいし…」
「紫、俺達は最悪殺されるかもしれないんだぞ?それでもいいのか?」
「怖いし殺されたくないけど…何より、小雪ちゃんがずっと辛いままのは嫌だよ…!!」
紫の強いの意思は感じるが危険すぎる。
「お姉ちゃん、ありがとう…その気持ちだけで嬉しい」
小雪は紫の気持ちが嬉しかったのか、少し喜んでいた。
「…危険すぎるしそれにどうやって助けるんだよ?」
「えっと、何とか探してみようよ!屋敷の中に何か方法があるはずだよ!…たぶん」
「…色々探してみるしかないか。小雪、屋敷の事が分かるものとかないか?少しでも手がかりを探したい」
小雪は少し考えて廊下の方を指を差す。
「たぶん…あっちの方に屋敷の事とか書いてある書物とかあると思う…生きていた頃、よく行っていたから。難しい漢字ばかりでわたしには読めなかったけど…」
「分かった、その部屋に向かおう」
「小雪ちゃんのためにも頑張ろう!」
小雪が前に行き案内をする。
──少しでも早く紫陽花屋敷から出るために。
紫陽花屋敷─雨の降る日─ ことは @sakurakitsune36
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