1906年の大地震(2) 保険の話
今日は保険の話です。
ガッツのある保険屋の話です。
1906年のサンフランシスコの大地震の時、まず地震がきて、火事が続きました。火事はさまざまな原因で複数の場所から起こり、その火が町を焼き尽くしたのです。
その無時、地震保険をかけていた人は10%と少なかったのですが、80%以上の人は火災保険をかけていました。
サンフランシスコは19世紀末から人が住むようになった町で、この坂の傾斜にはレッドウットの木材で作られたビクトリアンの家々が並んでいたのです。
新築の家屋が次々と燃えていったわけですが、これが地震によるものなのか、火災によるものなのか、解釈が難しいところです。
大体、保険会社は勧誘する時にはよいことを言いますが、支払い時には渋るというのが普通のイメージですよね。
その時も、ほとんどの保険会社がそういう態度でした。
しかし、その時、ある英断をした保険屋がいました。それが英国のロイズ保険会社のカスパート・ヒースというアンダーライター(査定をする人)でした。
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簡単に説明すると、保険会社にはブローカー(保険契約仲介業者)とアンダーライター(保険引受業者)がいて、ブローカーは保険を勧誘し、アンダーライターは保証額を査定する人である。
1906年4月18日、サンフランシスコでは大地震が町を襲い、その結果生じた火災により、市内の80%以上が破壊され、数千人が死亡した。
死者の数が500人とも 3000人とも言われるのは、今でも戸籍というものがない国なので、当時、町にはどこに何人が住んでいて、何人か死んだのか、わからないのである。
町の人々の多くが家を失ったが、住民のほとんどは地震保険を購入していなかった。しかし、火災保険を購入している人は多かった。
保険会社は地震と火災との関係がわからないとからとすぐには支払いをしてくれなかった。そのため、保険契約者は訴訟を起こさなければならない場合も多く、現金を手にいれるまでには時間がかかるのだった。
さて、サンフランシスコには「ロイズ・オブ・ロンドン」という保険会社の代理店があった。ロイズは今では世界的に有名だが、当時は海上火災がおもに取り扱う保険会社で、アメリカでは知られていなかった。
しかし、ロイズはサンフランシスコでは積極的な勧誘をしており、20%の家がこの会社の火災保険に加入していた。
1906年のその大地震の時、ロンドンにいたカスバ―ド・ヒース(1859-1939)というロイズで査定をしていた男は、すぐにサンフランシスコのエージェントに電報を打った。
「保険の条件に関係なく、保険契約者には、全額を支払いなさい」
というわけで、ロイズのエージェントは、すぐに、契約者全員に、全額を支払った。
総額5000万ドル。
多くの保険会社が支払いを拒む中、ロイズだけが全額賠償金を支払った。
その迅速な支払い方が口から口へと広まり、これを契機に、ロイズの信用が高まり、アメリカ国内で、大きな信用を得ていった。
以後、個人だけではなく、大手の保険会社からも、再保険の依頼があった。そして、ロイズは世界的保険会社として成長していったのである。
このカスバ―ド・ヒースは「保険の父」とも言われ、さまざまなの保険を企画した人だった。「盗難保険」を始めたのも彼だし、中には「水疱瘡保険」もあるし、あの飛行船「ツェッペリン」の保険を担当したのもヒースだった。
ツェッペリンは爆発炎上したのだが、その爆発理由については明確でなく、さまざまな説が考えられたが、ロイズは全額支払ったのだった。
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カスバ―ト・ヒースの父親はローヤルネイビー(英国海軍)の高官で、兄弟の3人が海軍に行ったのですが、ガスバートだけは耳に障害がありその道には進めなかったようです。
その海つながりで、海上保険の会社で働くようになったのかもしれません。
ヒースはイノベーターで、次から次へと新しいアイデアを考えつく奇才で、また同時に、リスクテイカー(危険を恐れない人)でもありました。
彼はもしかして「タイタニック」も手がけたのではと調べてみたところ、ヒースが手がけたものではありませんでしたが、やはりロイズが取り扱ったものでした。 1912年に沈没事件が起きた時、ロイズ社は30日以内に、全額支払ったそうです。
こういう実績があるので、現在ロイズは企業やセレブなど、3千万人の顧客を持っているそうです。
公表されているところでは、 ブルース・スプリングスティーンは喉に6ミリオンドル、ローリングストーンズのギタリストのキース・リチャードはその手に1.6ミリオン、ティナ・ターナーは3.2ミリオン、マライア・キャリーはその声に35ミリオン、足に1ビリオンかけていた(いる)そうです。
月々の支払い額がいくらなのかは、わかりませんでした。
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