幽霊船が沈む時

 閑話です。

 ゴールドラッシュの時には、世界中から人々が船でサンフランシスコにやって来ました。ところが、船員が金を採掘に行ったり、船が故障したり、さまざまな理由で船が湾に残されたたままになったのです。それが、多い時では800隻というのですから信じられない話ですが、湾にたくさんの船が残された写真が残っています。(近況ノートに載せました)


 今日はそれと少し関係があるかもしれない話です。

 サンフランシスコのフットボールチーム49resは、今はリーバイス・スタジアムを本拠地にしていますが、その前は空港近くの「キャンドルステック・パーク」球場でした。

「キャンドルステック」というのはロウソク立てのことです。


 どうしてそのような名前になったのか、尋ねたことがありました。

 それは公募され、2万件のという応募の中から選ばれた名前だそうです。

 

 その由来というのは。

 ゴールドラッシュの頃、湾にはたくさんの船主を失った幽霊船が浮かんでいました。持ち主から捨てられた船は、キャンドルステックのような姿に見えたのだそうです。命名した人は、そのことを思ってつけたのだということです。

 

 幽霊船は、そのうちに、力つきて水に沈んでいきます。

 その時、最後まで水面に残るのはロウソクのようなマストで、それが水の中にすぽっと消えていくのだそうです。

 

 今回、そのことを書くので確認のために調べたら、球場の周辺にはキャンドルステックと呼ばれる嘴の長い鳥がたくさんいたからだとか、近くにキャンドルステック岬があったからそういう名前がつけられたとかと書かれていて、マストの話はなかったです。

 

 えーっ。


 私はあの風の強い日、球場を訪れた時に、そこにいた人からマストが沈んでいく話を聞いて、主を失った船の哀しい末路を思い浮かべていたのに。

 それ以来、ずうっとそうだと信じていたのに、あの話はどこからきて、どこに行ってしまったのでしょうか。

 


 




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