ミセス・ホプキンズの再婚 (3) 新夫は買いまくる
年の差22歳のカップル、メリーとエドワードはヨーロッパにハネムーンに出かけた。といっても、普通人のハネムーンとは違う。
何が?
お金の使い方が。
ふたりの新婚旅行はイタリアに家を借りてそこを基地として、6ヶ月間にわたってさまざまな国を回るという大規模なものだった。
メリーは独身時代、真面目な教師として過ごした。好きになった男性も、好きになってくれる男性もいなかったし、特に楽しいという人生ではなかった。
それが、35歳でいとこのマークと結婚することになった。彼は西部に住む成功者だったが、基本的にケチ。誠実だが、全くおもしろみがない男だった。
でも、人生とはそういうものだと思って受け入れた。
白馬の王子さまが現れて、「それから、ふたりは幸せに暮らしました」なんていうのは物語の世界だけのことだと思っていた。
ところが、夫が急死して途方に暮れていた時、運命の人エドワードが現われたのだった。その彼と結婚ができ、少女時代から憧れていたヨーロッパへ来ることができて、メリーは幸せの絶頂だった。
朝起きるたびに、これが夢ではないかと疑ったことだろう。それとも、こんな贅沢なことをしていてよいのだろうか、という黒雲みたいな不安が襲ってきたりもしたのだろうか。
ハネムーンの間、エドワードはショッピングに明け暮れた。お財布のことを心配しなくてもよいのだから、買いたい放題に買いまくった。
なにせ、妻のメリーが故郷に建てた屋敷の部屋数が50以上もあり、暖炉が36という広大さで、そこには家具や装飾品が大量に必要だった。
それに、エドワードの故郷にも、メリーはもっと大きな屋敷を建ててくれるというのだ。それにも、趣味のよい家具や装飾品は必要なのだ。
イタリアの大理石、ペルシア絨毯、さまざまな骨董品、美術品、ナポレオンの遺品まで、手当りしだいに買いあさった。彼の趣味がよかったのかどうか、趣味というものは個人の好みの問題なので評価の分かれるところだが、高価な品をばんばんと買ったのは確かである。
たいていの人は物を買う時、どちらにしようかと迷うものだ。そんな時、エドワードは、両方買ったそうだ。
他人の稼いだお金を、自分のお金のように平気で使える人と、そうでない人がいるが、エドワードは後者のタイプ。メリーはエドワードの派手な金遣いを見て、心臓がばくばくしたり、こわくなったりしなかったのだろうか。
それとも、贅沢にはすぐに慣れて、女王のような日々の中で、くらくらするほど幸せを感じていたのだろうか。
メリーが結婚してから死ぬまでの記載されたものは不思議なほどないから、そう想像するだけなのだが。
それに比して、エドワードの記録はたくさんある。
というわけで、次の3回は、「マーク・ホプキンズのお金を使った男」と言われるエドワードの話である。
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