第2話
昔に思いを馳せていた思考を現実に戻す。目の前には何度見ても変わらない桁がおかしな通帳がある。
「今は別に使い道も思い付かないしまた後で考えるか…もしかしたら面白い使い道が思い付くかもしれないし」
そう結論を出して、壁に掛けてある時計を見ると夕食を作りに向かった。
「ねぇお兄ちゃん、今度の土曜なんだけど何か予定ある?」
夕食を食べ終えて寛いでいると美夜がそう聞いてきた。
「いや、特に予定はないよ。どうしたんだ?
もしかして、ダンジョンに潜るのか?」
「うん、ダンジョンに潜りたいから、また見て貰いたいの。いい?」
「わかった。いいよ。今度の土曜は予定を開けとくよ」
「よかった!ありがとうお兄ちゃん!」
(とはいえ、美夜も大分基礎は身に付けたんだよな…
今度のダンジョン探索を見て大丈夫そうなら中層までは1人でもいいかもな…)
俺は美夜の嬉しそうな顔を見ながらそう思った。
ダンジョンは世界中に突如として現れた。それは周りを海に囲まれた島国である日本も例外ではなかった。
いや、それどころか、世界各国に現れたダンジョンの数に比べて日本は上位に入る程に多かった。
その為政府は、新しくダンジョン省を作り探索者育成やダンジョン研究に力を入れている。
ダンジョン省は、探索者を纏める組織としてダンジョン協会を作り本部を東京に各県に支部を、そしてダンジョンがある市には支所を置きダンジョンを観察していたりする。
交通機関もリニアや新幹線を中心に発展していて北海道~沖縄、五島に対馬にも比較的早く行くことが出来る。
つまり、何が言いたいかと言うと、探索者や若者にとって憧れの地である東京には行こうと思えば簡単に行けるのである。
そんな訳で俺たち兄妹は東京には住んでおらず、地元である長崎に住んで居る。
だから当然向かうダンジョンも長崎にあるダンジョンになる。
「はっ」
そんな掛け声と共に目の前の緑色の醜悪な見た目の小人、まぁゴブリンなんだが…
そのゴブリンが美夜が振るう剣により首を切られ倒れた。
「お兄ちゃん、どうだった?」
ゴブリンが倒れて動かないのを確認した美夜がそう聞いてくる。
「流石だな、魔力による身体強化もしっかり出来ているし相手の動きもちゃんと目で追えて対処出来ている。
もう、中層までは1人でも大丈夫だな。それでも、配信中はコメントなどを確認したりするだろうから周囲の警戒だけは怠らないようにな。
ただ、それより深い階層だと今の実力だと駄目だな。そしてそれは、美夜がしっかりと自分と向き合い何を伸ばすのか、どういうスタイルで戦うのかを決めて力を伸ばさないと行けない。
これに関しては、俺はアドバイスは難しいだろう。俺のスタイルは独特だからな。だから俺は基礎しか教えられなかった。……ごめんな…」
「ううん、大丈夫だよ。今でも凄く助かってるから!
それに基礎は大事だからね!あたしの方こそありがとう!」
「そう言ってくたらお兄ちゃんも嬉しいな。
……さて、じゃあこれからどうする?一緒に探索するか?それとも一人で探索してみるか?」
「じゃあ一人で探索してみる。ついでに配信もしてみて感覚を確かめてくるよ」
「わかった、気を付けて行ってこい。
俺はこの近くで昼食を作りながら休憩してるからな、何かあったらすぐ大声で叫べ、すぐ向かうから」
「わかった。
それじゃあ行ってきます!」
そう言って美夜は一人で配信しながら探索に向かった。
兄はダンジョン探索者、妹はダンジョン配信者~無人島を買ったらそこにダンジョンが出来たんだが~ K.s9232 @ks9232
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