イチパシ村襲撃事件
夜――いや、深夜といっていい時間帯に警報が鳴った。
24時間体制で作られている
なので、総監督のルッカはすぐに
「こんな時間に、いったい何をやっているのよ……」
無視しても良かった。
本来の戦闘支援用アンドロイドであれば、必要なこと以外は手を出すことはない。
しかし、幸か不幸か、自身の使用者はそれらの制約を全て取っ払い、人間よりも人間らしい考えと行動ができるように改造――いや、魔改造と呼べる仕様にした。
だから、本来であれば気にも留めることがない事象にも、「マモルが喜ぶことをしたい」という考えの元、監視していた結果である。
「昨日の奴ら……? いえ、別の野盗かしら?」
映像には、昨日、マモルが立ち寄った村が映し出されている。
そして、その村の外には20個ほどの熱源が表示されていた。
「全く。余計な仕事を増やすんじゃないわよ」
ルッカはため息を吐いて、別のモニターへと目をやった。
□
それは突如として起こった。
「火事だぁぁぁぁ!!!!」
村人の大声で目が覚めたシュナハは、バッと起き上がると急いで窓を開けて周囲を見渡した。
「そんな……」
直接は見えないが、隣家の屋根の向こうから赤い光が上がっていた。
火事となれば延焼する可能性が高く、最悪の場合は村の建物が全部、焼け落ちてしまう。
しかし、それよりもシュナハの心には嫌な予感が渦巻いていた。
その嫌な予感はすぐに形をもってやってきた。
「敵襲ぅぅぅ!! 敵襲ぅぅぅぅう!!」
モンスターが村を襲って来ることは稀にだがある。
だが、その場合はモンスターの名前が出てくるはずだ。
それが出ずに「敵襲」ということは野盗が来たということだ。
「うぅ――」
シュナハの脳裏に、あの、野盗に捕まっていた女の人の姿がフラッシュバックした。
「シュナハ――、お母さんのことは良いから逃げなさい」
「むっ、無理だよ……。オードウェルさんたち、居ないんだよ?」
村の護衛を担っているオードウェルたちは、今は昨日、村にやってきた人と一緒に町へ出かけている。
普段であれば、指揮を執り村人を総動員して対処している――できているのだが、今回は指揮を執れる人間が居ないことと、相手の分が勝っているのか村人の悲鳴ばかり聞こえてくる。
『外の様子を見ないと』
何をするにしても、外の様子を確認しなければいけないと、シュナハは木戸をゆっくりと小さく開けた。
「ひっ!?」
薄く開いた木戸から見えたのは、ゴウゴウと燃え上がる家々と、通りには矢で射られた血を流す村人の姿だった。
そしてその奥には、あの森で見た時と似た格好をした野盗が略奪を行っていた。
「ッ!?」
悲鳴が聞こえたからか、それとも木戸を開く音を聞かれたか、野盗と目が合った。
もしかしたら合っていなかったかもしれない。
なんて希望はすぐに打ち砕かれた。
「ひぃっ!?」
こちらに向かい駆け出してきた野盗から逃れるため、シュナハは急いで木戸を閉じ、つっかえ棒をして開かなくした。
ドンドンッ、ガンッ!
外から木戸を殴り、そして蹴る音が聞こえる。
その度に、家全体が揺れ、天井から埃が落ちてくる。
「シュナハ!」
「お母さん!」
逃げることはできない。
もうどうにもならない。
せめて、最後まで一緒にお母さんと一緒に居たい。
そう願った瞬間だった。
ダダダダダダダダダダダダダダ
外――それも、
それと同時に、木戸を叩き壊そうとしていた音が静かになったことに気づいた。
「なにが……」
声は出ていたはず。
だが、シュナハの耳には届かない小さな呟き。
その理由は、天井がミシミシと音を立て、崩れ始めたからだった。
「わっ、わっ、わっ!?」
バギバギバギッ、と屋根がめり込み、そこに大穴が空くと同時に
全身が黒づくめで、手足はあるが、顔の部分には赤い光があるだけの、人間の様で人間ではなく、モンスターの様でモンスターではない何かが落ちてきた。
「失礼。屋根の耐荷重性能を見誤りました」
「ひぃっ!?」
キュイッ、と聞いたこともない音を立て動き出したソレを見て、シュナハは小さく悲鳴を上げた。
「野盗を殲滅してきますので、市民の皆様は安全な場所へ避難しておいてください」
黒づくめのソレは、引き戸を押し開けぶっ壊していくと、慌てた様子で立てかけて家の外へ出ていった。
今作戦に参加した
兄弟たちが戦術ネットワークにアップロードしたものが、
全にして個。個にして全の動きをとる。
突如、現れたバトロイドたちに慌てふためき、次々と逃げ出す野盗の群れ。
門から逃げ出す野盗は撃ちやすいが、塀を飛び越えて逃げる野盗は、今後の防御のことを考えると撃ちにくく、容易に逃げられてしまう。
だからこそ――。
「ヒット」
上空で待機している
敵勢力の敗走により勝敗は決定的となり、残りのバトロイドたちは掃討戦と被害状況の確認を始めることとなった。
□
「チッ……。村民の被害が大きいな。やっぱり、ドローンで先行策を打っておくべきだったかしら?」
しかし、ドローンではその見慣れる形態から野盗も村民と同じように逃げまどい、結果として区別ができなくなり誤射の可能性が出てくる。
だから、時間がかかっても
「まぁ、仕方がない。必ず守らなければいけない母娘は守ったのだから」
天井を見上げ、ルッカは小さくため息を吐いた。
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異世界調査の任務に就いた俺は、星を滅ぼした宿命を知ることとなった いぬぶくろ @inubukuro
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