第18話【幕間】七瀬クロエの備忘録②(クロエ視点)

 日記のように毎日書かなくてもいいから備忘録にしたのに二日続けて書いてしまった。


 まず、昨夜のことはお互いに冷静になって話をしたらそこまで気まずくなることなく消化できたと思う。このことについてはひとまずよかった。


 今日は香澄さんが家にやって来た。あらためて四元君と香澄さんが長い付き合いで、仲がいいということがわかった。


 香澄さんとも去年から一緒のクラスだけど今まであまり話すことはなかったと思う。


 香澄さんはスタイルも良くて、成績もよく、誰にも気さくに話すから人気のある人だ。


 二人は付き合っていないと言っているけれど、それは恥ずかしいからそう言っているだけというのが学校での通説だ。でも、今日の様子を見ると本当に付き合っていないのだろう。


 私が四元君と一緒に暮らすことになった時に心配していたこの一つが香澄さんだった。


 仲のいい二人の間にいきなり私が割って入るようなことになれば、香澄さんにとって私が邪魔な存在として映るのではないかと思っていた。


 結果として、それは杞憂だった。


 香澄さんは私を温かく迎えるというか、新しく妹ができたように迎えてくれた。


 お菓子作りの話で盛り上がったから今度一緒に作ったら楽しいと思う。


 ただ、問題というか気になることも起きた。


 四元君が私のことを妹扱いすることだ。


 たしかに、四元君の方が誕生日が早いから兄で、私が妹ということになる。


 でも、四元君に妹扱いされるとなんだかちょっとむかむかするというか胸がつっかえる気持ちになる。


 香澄さんや学校の友達に私が小柄だからということで妹のように可愛がってもらうことがあるけど、その時はむかむかしたりすることはない。


 四元君と家族や兄妹でいたくないとかというものではなくて、妹扱いされると何とも言えない気持ちになる。


 どうしてだろう。


 そんなこともあって、一緒にお遣いに行ったときにズボンのチャックが開いているなんて噓をつく悪戯をしてしまったし、パピコを食べている時には初めてツッコミを入れてみた。あのツッコミは教室で香澄さんがときどき四元君にやっているのを見たことがあったから真似をしたものだ。


 妹と呼ばないで欲しいと四元君に言うのはどうだろうと考えた。


 しかし、それはすごく四元君のことを嫌っているように感じられるし、きっと距離を置かれると思う。


 そっちの方が嫌だ。


 私の中でどうして胸がつっかえるのかということがわからないと四元君にもちゃんと説明できない。


 そして、問題二つ目は隠れて名前呼びに慣れようと練習していたのに感づかれてしまったことだ。


 わからないぐらいちょっとずつイントネーションを変えていたのにバレてしまってすごく恥ずかしかった。


 結局、背伸びをして身の丈に合わないことをするとこういうことになってしまうので、しばらくはお母さんたちの前以外では四元君と呼ぶことにする。


 今日も昨日以上にいろいろなことが起こり過ぎてぐったり疲れてしまった。早めにお布団に入って休もう。


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