第10話【幕間】七瀬クロエの備忘録①(クロエ視点)
今日から四元君の家に引越しをして新しい生活が始まった。
後から思い返した時に今日のことを忘れないようにこうやって備忘録を書くことにする。
日記にしなかったのは日記にすると毎日書かなくてはいけないと思ってしまって続かない気がしたから。ここには思いつくまま徒然に書いていきたいと思う。
まず、初日からいきなりやらかしてしまったという気持ちでいっぱい。
夕食の後、四元君の部屋に行った。
特別何かについて話をしたいというわけではなく、親睦を深めようと思ったくらいの気持ちだった。
それなのにあんなことになってしまうなんて。
たしかに末永くよろしくお願いしますと言ってしまったけれど、それは四元君がこれまで勘違いするようなことをたくさん言ってきたからだと思う。
そう、年頃の女の子が勘違いするようなことを自然にさらりと言う四元君に大いに罪がある。それも、狙っているわけではなく無意識のうちに言っているから余計に質が悪い。
そして、他の誰にでも……、いつも四元君の隣にいる十文字ヶ丘さんにもそんなことは言わないなんて言う始末。
あの時、どうしても何か言わないといけない気がした。いつも言われっぱなしでやり返したかったのだろうか。
よくわからない。
しかし、あれではまるでプロポーズの言葉の返事みたいだ。
何を言うか考えて話したわけではなく、反射的に出てきた言葉がそのまま口から零れた。
四元君のことが好きか嫌いかと言われれば、嫌いではないというのが今の気持ちだ。
というよりも私はまだ誰かを好きになるということがよくわからない。
告白される時に好きですと言われるけれど、これまで挨拶しか交わしたことのない人や面識がほとんどない人から好きと言われてもどうしていいかわからない。
彼らの好きとはどんなものなのだろう。
見た目が自分の好みだからか。それともちょっとでも相手のことが気になれば、好きになるということなのだろうか。
私と四元君は学校では挨拶を交わす程度の関係だ。
でも、学校で時々四元君のことを目で追ってしまうことがある。それはきっと四元君の身体が大きいせいだ。身体が大きければ、それだけ視界にも入りやすいというものだ。
話がいろいろなことに飛んでしまった。
初日からいろいろな感情で頭の中がぐちゃぐちゃで今夜はなかなか眠れそうにない。明日も休みで本当によかった。
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