エリミネーター

どうしてこんなことが分からないんだ？

　犯人は女だ。

「どうしてそう思う」

　後ろから刺してる。

「はあ」

　男が後ろにいたら――

「はあはあ」

「変装していた可能性はないか」

　女装なんてねえよ。

「はあはあ」

「それもそうか。家に上げない」

　まあな。

　女の服着た男なんて。

　＋

　犯人は顔見知りではない。

「どうして」

　この包丁についてるの羊羹だと思う。

「本当だ。羊羹だ」

　高級羊羹を持って来るくらい「親しくない」仲ってことだ。

「羊羹だけ持ち去って包丁はそのままか」

　まあな。

　急いでたんだろうな。

　喰ったんだろうか。証拠隠滅に。羊羹。

　＋

　お前、俺を見る目が変だ。

「いやー。お前が怖い」

　あ。ヤバイ。

　本気で俺を殺すつもりだ。

　困ったな。

　コイツ、やましい所があるんだ。

　警察官が殺しはしない。

　女だろうな。

　俺を油断させたいんだ。

　俺？　男だよ。

　困ったな。

　コイツの奥さんにチクると言っても。

　らぶらぶ夫婦で有名だし。

　浮気がバレるかも知れないから俺を殺すか。

　あーあ。

　遺書を書いておこう。

　俺が死んだとしたらコイツだって。

　うーん。

　何で俺、こんなに賢いんだよ。

　恨む。

　俺が優秀な遺伝子を持ってることを。

　そうか。

　優秀って「仲間殺し」ってことなんだなあ。

　うーん。

　そうか。

　だから俺、女にモテないのか。

　あーあ。

　生きてても仕方ない気がして来た。

　なあ。

　誰か俺を殺してくれないか。

　嫌になった。世の中が。