第17話

「私はアンネマリーを嫁にする気はない!」


「啓子さん……どうして……」


愕然と膝をつくアンネマリー(元夫)の姿に、罪悪感は感じない。

家事をやってくれる良い夫だと思っていた。だがそれがサイコ的思考からだと知ると寒気がする。


しかも私の夫の座を獲得するために、周囲をけん制するならともかく蹴落としていただと?ありえない。同期に好きだった人がいたのに……まぁ、亭主関白と聞いたから結婚しなくて良かったと思ったけれど。


「そもそも色気のある女が好きじゃない!そのこれ見よがしの服も嫌い!私の趣味に合わない!」


「僕はこういった服を男性は好むと思ったのに……啓子さんが違うなんて……」


「雅治さんはそんな服が好きだったのね。私は嫌いよ。さっさと国に還ってくれる?」


ガクっと膝を落としたアンネマリーの横でフェリシア(元部下)が勝ち誇った顔で笑っている。

いや、あんたも同じだよ!


「フェリシアも嫁にはしない!」


「先輩、どうして⁉先輩はかわいい女の子が好きだったでしょ?」


そこは後輩(同姓)だから許せたんだ。そもそもあんたは女子たちから嫌われていたからね?つきあってあげなきゃ可哀そうだって思ってたのよ。先輩としてね。


だがそれだけならともかく、ストーカーして私の写真を部屋中に貼り、私のごみを集めていた女なんて冗談じゃない!


「あざとい女は大嫌いだ!背筋が凍る!帰国したまえ‼︎」


フェリシアも床に崩れ落ちた。


ふたりは浮気していなかった。ただ私を取り合っていただけ。

だが事情を知っても許せない!なぜならふたりが変態だからだ!


「では……もしや相手は……」


アンネマリーの発言に、フェリシアも彼女へと視線を向ける。

ふたりの視線を受け止め、ジュリアナはふわりと笑って答える。


「私ではございませんよ。だって私は元ソファですもの」


「「え?では誰を……?」」


ふたたび私の元へ向けられたふたりの視線に戸惑いが見える。


「私の相手は義理姉上だ。亡くなった兄の妻」

「「え??」」


そう、私は朝一番に兄上の妻に求婚状を送った。

義理姉上は、世継ぎももうけず国へと帰らされた娘として爪弾きにされているらしい。

それならば私が娶った方が彼女の立場は返り咲くと言うものだ。


容姿も平凡でかわいらしいし、何よりも彼女の胸は普通のサイズだ!


大きいのは好みじゃない。小さすぎるのも微妙だ。やはり世の中平均が一番だ。

そもそも私は女性と会った際に胸のサイズをチェックしていた。どうやら私は胸フェチなようのだ。ここにきて初めて知ってしまった。そういう意味ではこれを教えてくれた三人には感謝するしかない。


「さてでは皆さまお帰りください」

王子としての礼をすると、知っていたジュリアナは「お幸せに」とひとこと残して部屋を出た。


残ったふたりは泣きながら縋ってきたので、強制送還することとした。

胸の大きい女に興味はない。変態にはもっと興味ない。


予想とは違った結果になったが、前世のしがらみがなくなり、新しい生を謳歌できる気がしてきた。

これからが私の人生。前世のことは過去のこととして生きていこう。

浮気とストーカーは許さない、それを胸に刻みながら。



~fin~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夫と浮気相手も転生しました〜夫と浮気相手が妻候補に⁉︎え?誰が夫?誰が浮気相手?それとあんたは誰⁉︎〜 清水柚木 @yuzuki_shimizu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ