最終話 僕の彼女は欲張りです
今日は彼女の結婚式です
おかげで昨日から胃痛で倒れそうです。
それでも休むわけにはいかないのです
だって 彼女がそう望んだから
「みんな来てくれてありがとう」
新郎と新婦が仲良く並んでた。
前に見たときよりもずっときれいになった彼女は隣のイケメンを見つめていた。
「くっそう、僕のほうが小さくて薄くって声だって高いんだそ」
負け犬の遠吠えです。
勝てるとこが全く見つかりません。
彼女のために頑張ってフォーマルドレスを用意しました。レンタルだけど僕には結構な金額です。でも汚したら買い取りはキツイです。
「またバイト増やさないと」
ケーキ屋さんに住み込んだおかげで住居費が助かってます。
そこの息子さんが時々変な目で僕を見ることさえなければ最高の物件です。
そこもそろそろ潮時でしょう。
「では新婦の友人代表から、高校時代同じバスケットボール部で汗を流した御学友です、どうぞ」
誰ですかそんな御大層な人は。あ、僕か
「マイクを取ってください」
司会の人が僕にマイクを回してくれた。困りました。何も考えてきません。
「えーっと」
『僕と言ったら駄目よ。こういった席では私って言うものなの』
バスケの祝勝会で県知事に挨拶を頼まれたときを思い出した。
僕って言ったらみんな目を丸くしてたっけ。
少し笑って視線を彼女に向ける。
彼女はドキッとしたようにこちらを見てる。
ふふふ。今のぼくは最強モードなんだから。
*
「彼女はどんなときでも前向きでした。高校時代も積極的に子作りに励む立派な新婦でした」
一部の友人たちが沸きました。つかみはオッケイみたいです。
ぼくは調子に乗りました。
「それに彼女は避妊のテクニックも最強です!一度も失敗しないんですよ!」と褒めてあげました。
なぜかその時は、新郎側の人が青ざめてました へんですね
司会者が慌てて話を止めようとしたので、最後に一言だけと言って彼女を正面から見つめました。
僕は緊張で倒れそうになりました。
慣れないワンピースの胸元を強く握りしめ勇気を出します。
「高1の春から私は彼女に囚われました。この身も心も全部です。 それはもう愛の奴隷なんです。
でもそれも今日で終わりです。終わってしまいました。
あなたは幸せになって下さい。僕はあなたから開放されます」
僕は深く腰を曲げて 祈るように そう願った。
みんなが笑う中
何故でしょう 彼女だけが泣いています
”あんたが貰ってくれたら それで良かったのに“
“絶対無理。彼に幸せにして貰いなさい“
そう彼女に微笑み返す
結局
僕は最後まで別れの言葉を聞くことはなかった。
ホント、僕の彼女は欲張りです
彼女の事を本当に愛してた 水都suito5656 @suito5656
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