ゲームを三冠したら、いつの間にか異世界で最強の都市を作ってました
@enpeed
第1話
『episode complete』
目の前に映る画面に、黄金色で書かれた文字が浮かび上がり、背もたれに一気に寄りかかる。そして歓喜とともに、俺は不意に大きな声がでる。
「はあ、やっと終わったッ!!三冠したぞぉお!」
達成感、満足感……それを超越した気持ちよさで気持ちが高揚する。
『でんでんでーんでんんでん♪』
エンドロールが流れ、またクリアした実感が現実帯びてくる。
「ながかった……」
ため息をひとつこぼして、飲みかけていた麦茶を一気に飲み干す。乾いていた喉が潤っていく感覚を覚えていると、眠気がどっと押し寄せてきた。
思えば、四連休ということでぶっ通しでやっていたから、寝ていないかった。
ふと、時計を見ると短針が3の数字をさしていた。窓から差し込む、陽光をみるに午後3時なのは確かだった。
「三徹……?まじか」
睡魔こそ来ているが、この気持ちの昂りのせいで目はさえていた。エンドロールが終わって、カラフルで彩られたゲーム名が浮かび上がる。
『万国ソーシャルオンライン』。
通称『BSO』と呼ばれるこのゲームは、簡単に言えば、領地育成ゲームのような都市開発をしていくゲーム。
仲間を集めて、領地を拡大して、そこに様々な役所や役職を与えていき街を発展させる。それに加えて、敵地からの防衛。逆に敵地を侵略・吸収するやり込み要素が多いゲーム。
攻撃の戦略、防衛の配置、人材の役職、どれをとっても奥が深い……。
時間を浪費する楽しさを含めて過去一といっても過言ではない。
BSOのクリア条件は、1つの農村を王国一巨大な都市に仕上げること。最初の段階で選べる農村は3つあり、俺は全ての農村を王国一に発展させ、3冠を達成した。
「ふう
……さすがに疲れたな」
丸まった体を起こして、画面に戻ると、新たな画面が表示されていた。
『このプレイ記録を記憶しますか?』
プレイ記録か。
生憎だが、俺はそんなものには興味がない。
別に誰と競っている訳でもないし……ただ楽しめれば俺はそれでいい。
それ以上は望まない。
もちろんNOだ。
『おめでとうございます。ランキング一位です。』
「は?」
思わず声が漏れる。
いや、いやいや。
俺たしかにNOにしたよな。
ランキングって記録したやつだけじゃないのか……いや、記憶したやつだけって書いてあったな。
なんでランキングに入れられてんだよ。それに一位って……。
思えばリリースされてまだ一週間。しかし、俺より早いプレイヤーはぞろぞろいるものかと思っていた。
「……まじか」
優越感というか、なんというか、なんとも言えない嬉しさが不本意に込み上げてくる。
別に一位が欲しかった訳では無い、ただ楽しめれば良かった。
「でも一位か……悪くないな」
それにしてももう終わってしまったのか。
そうか。
ランキング順位にただ1人刻まれた俺の名前を見て、俺は少し呆然とした。達成感こそあるが、それは一時のもの。
少しづつ虚無感が芽ばえる。
「……もう二度とあの楽しさを味わえないのか」
プレイして、クリアすればもう終わり。そんなのは、みんな分かっている。しかし、最初の高揚感に変えれるものは何も無い。
でももう、最初にプレイするような楽しさは味わえない。その虚無感が胸を支配する。
もっとプレイしたい。
そんなモヤっとした欲が脳に広がる。その欲に便乗するように睡魔が襲ってくる。
ああ、もっと開拓したい。
まだし足りないことがある。
もっと……もっと。
少しづつ瞼が閉じる。
ああ、最強の都市を……。
そんな欲を抱いたまま、俺の意識は遠いのていった。
ゲームを三冠したら、いつの間にか異世界で最強の都市を作ってました @enpeed
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ゲームを三冠したら、いつの間にか異世界で最強の都市を作ってましたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます