第八話

 ある時森の社に見たことのない人たちがこの国の人を連れて来た。

 子供の格好だけど、子供ではない人が社にお参りして広場を借りるお願いをしている。

 いいよと心の中で言った。


 そしたら広場に机と大きな建物をどこからか出した。あたしはびっくりした。みていると食事を始めた。食事もどこから出したんだかわかんない。


 葉っぱの上に美味しそうな野菜を乗せて置いて行った。お礼みたいだ。食べてみる。美味しい。美味しいし面白そうだからついていく。


 夕方になるとあの人が森を探して社にお参りして一晩広場を借りるお願いをした。あたしはいいよという。

 また葉っぱの上に野菜を置いて行った。なんだか大きな布のようなものを張って中に入った。野菜を食べてみる。美味しい。


 朝食も葉っぱの上に置いてくれた。あたしは社の後ろから出て葉っぱを咥えて引きずって少し離れてから食べた。美味しい。社にお礼を言って出て行った。


 あの人たちが小さい村に入って行った。小さい村だからどこにいるかわかる。この国の人を親に届けたようだ。


 それから村のあたしの社にきてお参りして、今日は来られないと言って葉っぱの上に果物を置いて行った。美味しい。

 あれ、声は聞こえなかったけど、なんで言っていることがわかったのだろう。わかんない。

 村人は一晩中騒いでいた。


 あの人は朝になって社にお礼を言って、社の脇に木の実を葉っぱの上に置いていった。

 そして小さな街に寄った。あたしは先回りしていよう。

 来た来た。森のあたしの社にお参りして広場の使用をお願いしている。

 いいよ。


 布を張って机を出し食事をしている。社の近くに葉っぱに乗せて果物を置いてくれた。あたしは嬉しくなって近づいた


 「お前、後をついてきているの?」

 聞かれた。油断した。近づきすぎた。呼ばれた。あれ、なんだか懐かしい。なんか覚えがある。そうだ。あたしを生かしてくれた神様と同じだ。抱っこされた。そうだ。やっぱり神様だ。あたしは嬉しい。神様、神様。嬉しいよう。寂しかったよう。頭をすりつけた。尻尾もパタパタ。


 あれ、最初の神様は別なの?あたしわかんない。最初の神様があたしを抱っこしている神様の元に行ける力を授けてくれた。嬉しいよう。


 あれ尻尾が6本になっている。元の4本に見えるようにも出来るみたい。それからあたしを抱っこしている神様があたしの名前をつけてくれた。お狐さんだ。嬉しいよう。あたしの名前はお狐さん。体が光ったよ。尻尾が増えた。

 それから、美味しい水をもらった。また体が光った。尻尾も増えた。

 そして脚に綺麗な輪っかをしてくれた。また体が光った。尻尾が9本になった。


 輪っかは色々使えるみたい。なんとなく使い方がわかる。竹で作った水筒が入っている。木の実はもう一人の神様がたくさん入れてくれた。神様だらけだよう。果物も入れてくれた。山菜はなかったけど、野菜をたくさん入れてくれた。塩もたくさん入れてくれた。


 輪っかは見えなくしたほうがいいと言って見えなくしてくれた。尻尾は今まで通りの4本に見えるようにしておいたほうがいいと言われて、4本に見えるようにしてくれた。


 人とは今まで通りの付き合い方がいいよ。力は今まで通りがいいと言われた。力?わかんない。


 今までどうしていたのと聞かれた。

 『転んで擦りむいたら傷口から泥をとりのぞいたり、病気になれば人の生きる力に力をかしたり、あたしの力が足りなくて亡くなってしまったら、残された人が落ち着くまで近くにいたりした。社に来て泣いている子がいたら寄り添っていた。住処は社を作ってくれたからそこを宿として、村人の荷車に乗せてもらったり、自分で歩いたりして国内を移動していた。行く先々で子供と仲良くなってもみんなあたしより先に亡くなってしまうのであたしは寂しくって寂しくって』

 あたしは泣いてしまった。

 「アウ、アウ、アウ、アウ」


 身近な優しい神様だねって言われた。もう寂しくないよ。いい子だ、いい子だと撫でてくれた。あたし嬉しい。いつも神様と一緒にいたい。でも子供と遊びたい。


 それから神様は神様の友達?のところに連れていってくれた。

 綺麗な大人のお姉さんがいる。神様の友達だ。それから白い狼、ちっちゃいドラゴン、それに、それに、子供がいる。みんな神様の友達だ。あたしと同じ匂いがする。嬉しいよう。遊びたいよう。


 ちっちゃいドラゴンが呼んでくれた。

 『あたし達はドラちゃんとドラニちゃんだよ。ブランコとジェナと遊ぼう』。

 『あたしはお狐さん。遊んで』

 あたしは嬉しくって尻尾がパタパタ。遊びは楽しい。あれ、この国の人もいた。


 この国の人が神様に言っている。

 「この国の人達の神様はお狐様です。優しい身近な家族のような神様とこれからも生きて行くのが幸せと思います」

 家族だって。嬉しい。尻尾がパタパタ。


 この国の人は神様と話し続けているからいいや。あたしはみんなと遊び始めた。楽しい。嬉しい。


 遊んだら夕食。あたしはいちばん偉い人の座るところに座らせられた。えへへ。あたしは偉くないのに。


 それからみんなは布を張った中に入って行った。ドラちゃんがこっちこっちというのでそっと中に入った。みんな寝る場所が決まっているみたい。


 あたしはどこ?あれ白い狼が増えている。こっちだよと呼んでくれた。大人の神様の友達の女の人だ。白い狼だったの。あたしは姿が変わってもわかる。隣でまるくなる。うれしい。いつも一人だったけど、始めてみんなと寝た。嬉しい。寂しくない。嬉しい。


 神様がいつでも遊びにおいでと言ってくれた。うんって返事した。ぐっすり寝た。

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お狐さん SUGISHITA Shinya @MarzJP

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