初恋は純白のチューリップ


「和、今好きな人いる?」


「…気になってる人なら、いる」


ズルズル引きずっている俺の恋心も、そろそろ潮時なのかもしれない。




体育祭が無事に終わり、和達は12月にある演劇部の大会練習を本格的に始めた。期末テスト直後に大会が重なるこの時期は1年で1番忙しそうだ。必然的に和と未来が共有する時間も増える。


和の口から'高橋'という単語が出る頻度も増えた。


「最近ね、和が前より嬉しそうな気がする」


「ふーん、それは良かったじゃん」


「やっぱこの顔でグイグイ来られたら落ちるよね」


「調子乗るな」


「冗談。小野瀬のこともあるし」


「なんで小野瀬が出てくるの」


2年以上前の和の失恋は、未来も直に見ていた。


「和、絶対まだ小野瀬のこと好き」


たしかに、あの時も"そんな簡単に諦められるわけない"と未来が言っていたのを覚えている。こんなに大きな「好き」がすぐに消えるわけない、風化するわけない、と。


「やっぱ不完全燃焼なのかなー」


「不完全燃焼?」


「和ちゃんと振られてないからね。間接的な失恋じゃんあれ。いっそのこと告って思いっきり振られて欲しい」


「最低だな」


「どこが」


「あるじゃん、好きな人に幸せになって欲しい、とか、好きな人が幸せならそれでいい、とか」


「そんなの綺麗事でしょ。俺以外との幸せなんて要らない。和は俺と幸せになるの」


やっぱり未来には敵わない。


初恋が一目惚れ、というのも珍しいのではないだろうか。昔から赤や黄色の華やかな花より、無垢で純白な花に惹かれていた俺の例外が彼女だ。


貴方のことが好きでした、彼女の目を見てそう言えるように努力しようと思った。俺より未来の方がきっと彼女を幸せにできる。




今回の劇は、和の未来への失恋物語だった。

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好きです、結婚してください。 みるくもち@ @kjtmjn

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