この作品は、日常の隙間にひそむ恐怖が、如何にして人間の精神を侵食するかを巧みに描き出した作品である。
主人公の家という閉じられた空間が、次第に不可解な出来事によって心理的な迷宮へと変貌する様は、私たちの内なる不安を巧妙に喚起する。
「セコム」という現代技術の産物が、逆に不安の触媒となる皮肉は、読者にとって新たな恐怖の形を提示する。
物語は、言葉を慎重に選びながら進行し、主人公の独白と心の動きが読者の共感を強く誘う。
最後に残された疑問は、我々の心の奥底に潜む普遍的な恐れへの洞察を提供し、読後の余韻を深くする。
『戸締り』は、心理的ホラーの極致を極めた一作である。
夜に外出することにした私は、家の戸締りをすることにした。
すべての施錠を確認した後に、施錠確認システムの認証を通してみると「抜けあり」の通知が。
あの窓は確かに閉めたはずなのだが――
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日常の不安、ぎくりとなる感じがひしひし伝わる一作。
暗い廊下を通る途中、背後の自動照明がフッと消える時の心もとない感じなど、自分の安全圏がちょっとずつ狭くなっていく感じといいますか、
「なんかやだな」となる描写が延々と続くわけです。
害意や禁忌だけがホラーじゃないんだ、と思わせてくれます。
誰もいないはずなのに天井から「ぎい」と物音がしたことに、言い知れぬ不安を覚えた方にオススメしたい一作です。