第12話
朝日が入っているのか眩しい。目を開けると目の前にはアイリが眠っていた。朝日で彼女の髪が光り輝く中で、彼女の皮膚が少し黒ずんでいるのを見つけた。すぐに窓のカーテンを閉めると、黒いなにかは、消えていった。
「まだ治ってなかったのか?」
吸血鬼は本来夜行性であり、太陽に当たると灰になり、銀製品に触れると痛みを感じるが、アイリにはそれらは全く効果がなかった。そのためか彼女は暗い洞窟の中で封印されていたのだろう。
「…………うん………」
小さい声が聞こえてくる。隣を見るとまだすぅすぅと寝息を立てながらアイリは眠っていた。寝言だと思って彼女の頭を撫でた。
「起きてる?」
二回のノックと共にアリサの声が聞こえてきた。布団から出ようとするが、アイリが体に抱き着いており、全く出ることができない。
「ああ」
小さく返事すると、部屋の扉が開きアリサが部屋の中に入ってきた。俺の方を見るとクスッと笑った途端、部屋にある木の椅子に座った。
「この子の安心した寝顔久しぶりに見たかも」
「まじかぁ」
アイリのほうをみると安心したような寝顔で俺に抱き着きながら眠っているようだった。この表情が全く違うものは見たことがない。
「アイリのこの寝顔以外俺は見たことがない」
「当たり前でしょ、達樹の前じゃ仮面被ってるもん」
「仮面?」
「そう、仮面。あ、このことこの子には内緒にしてね」
じゃっと言ってアリサは部屋から出て行ってしまった。
仮面という言葉が心の奥に刺さる中でアイリの頭を撫でていた。
どんな仮面なんだよ………。
素顔が知りたいと思ってしまう。だが、今のアイリは何もつけていない。
内面的なことなのだろうか。
「仮面か………」
ぼっと言葉に出ると俺は空間魔法で作られたアイテムボックスから魔王時代に付けていた仮面を取りだして、見つめる。咄嗟に出した仮面は何か笑っているような気がして気味が悪くすぐアイテムボックスへと入れてしまった。
ぼーっとしていると布団が動いたような気がしてアイリの方を見つめると、俺の身体を抱きしめていた手がいつの間にか外れていた。隙をついて抜け出そうとしたが、昨夜の事を思い出し、ベットから出れそうになかった。
数十分、魔導書でも読んでいるとあくびようなものが聞こえてくると、目が覚めたアイリと目が合う。
「起きたか」
何も返事が返ってこず、俺を抱き直すとそのまま目をつむってしまった。起こそうとアイリの身体を揺らすも反応がない。じっと観察しているとまた目が合う。
「俺はここにいるぞ?」
そんなことを言うと、アイリが俺を抱きしめていた手を離し、こっちを向いて微笑むと、「おはよ」っと寝起きのような声で言ってきた。
おれも「おはよ」ッと返すとお互いの顔をじっと見つめたままそのままになっていた。
「お姉ちゃんと何か話してたの?」
「なんでわかるんだ?」
「お姉ちゃんがつけてる香水の匂いするから」
スンっとするような花の香りが辺りに広がっていることに今気づいた。何を話していたのか気になるのか、俺に近づいてくる。
「アイリ起きた?」
そんなことをしていると部屋の扉が開きアリサが部屋に入ってきた。
「ガダさんもう来てるんだから早く支度して!」
といってアリサは部屋から出て行ってしまった。
家の事で昨日ガダに連絡していたために来てくれたのだろう。とっととお互い着替えを済ませ、リビングの方へと向かう。
「ひっく、よう小僧! 相変わらずほせぇなぁ」
リビングの中心にあるテーブルで一人のドワーフが豪快にワインを読みながら言っていた。俺とアイリは彼の前の席に座る。
「んで、仕事だっけか」
「ああ、城とは言わんが、貴族の屋敷ぐらいのものが欲しい」
「こっちは構わんが、今の小僧にそんな金あるんか?」
俺はアイテムボックから金貨が入った袋をテーブルの上に出して、ガダの前において見せびらかすと、すぐに彼はその袋を手に取ってどこかへと閉まってしまった。
「よし、これでいい屋敷でも作ってやろう。だが、そっちの嬢ちゃんには土地の開拓を頼みたい」
ガダはアイリの方を見つめながら言うと、彼女は何も言わずその場でコクっと頷くことしかしなかった。
「そんじゃ善は急げだな。俺は先に素材集めてくるから後は頼んだぞ」
ガダはそういうと、家から出て行ってしまった。俺達も外へ出てあの洞窟へと向かうことにした。支度を済ませているとアリサがついてきたそうな目でこっちを見てくる。
「家完成するまでここにいるからさ、そんな顔するな」
「そうだよ、お姉ちゃん」
「そうね………」
そのまま俺達をアリサは送ってくれた。
元魔王、転生して人間になって嫁と隠居生活始めます。~不老不死の素材? そんなの周りが持ってくるんだが~ 結野ルイ @yunorui
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