本作品は、極端な承認欲求がもたらす恐怖を鮮やかに描き出した作品である。周囲から注目され、正しい人だと思われることだけを追求する主人公の姿は、読む者に強烈な印象を与える。また、サイレンの音とともに盛り上がる狂気じみた高揚感は、読者をぞっとさせつつも物語に引き込む力を持っている作品だ。父親に対する主人公の内面が丁寧に描かれており、恐ろしさの中にも彼女なりの論理が垣間見える。結末の皮肉は、宿命の鉄槌が下る瞬間の凄絶な美しさを描き出している。