第44話 陛下、異議あり!
「――テレジア・ド・ノルドハイム。そなたは
テレジア殿へ、そう尋ねた。
テレジア殿は少し
「は、はい。しかし、その……1度だけでして。ここに居ります、ルーカス・フォン・フリーデンさん以外には――」
「――実に素晴らしい!」
陛下はテレジア殿の言葉を
人の話を聞かないタイプのようだ。
王族や支配者階級には、その生い立ちに育ちから、ありがちなタイプではあるが……。
賢者は聞き、愚者は語ると言う。
これが興奮の余り思わず出てしまった軽率な言動だと、ジグラス王国側で剣を振るった俺としては信じたい。
「
ああ……ダメかもしれない。
テレジア殿を褒め称えるよりも、自分の血により神が奇跡を与えたと思っている。
そんな感情が、言葉から滲み出ているな~……。
「奇跡の代行者、聖女であるテレジア・ド・ノルドハイムには格別な報償が必要であろう。何か望みはあるか?」
「あ……。い、いえ。私は自分の役割を果たしただけですので。それに聖女と言うには、力が――」
「――何と
「「「はっ」」」
居並ぶ騎士や貴族に訴えかける陛下に、皆が軽く頭を下げる。
だから……若者の話を聞け。
おっちゃんの独りよがりは、見ていて辛い。
憤りすら覚えてしまう。
「しかし
「……はっ」
ノルドハイム枢機卿は、表情を引き締め頭を下げた。
本当は実の娘が望まない昇進など、させたくないのだろう。
しかし、ここまで言う陛下に逆らう訳には行かない、と言った所か?
「しかしこれ程の偉業だ。神の使徒たるヴァンの血を受け継ぐ王家としても報いぬのは、恥だ。聖女の実家が中級貴族と言うのも、
異論があろうが、言える訳がない。
そもそも辺りを見渡せば、王に媚びへつらうイエスマンばかりに映る。
この連中の中では……ノルドハイム枢機卿も、国の為にとは動きづらいだろうな。
「うむ。正式な
「はっ。陛下からの
「うむ。よくよく励まれよ」
実際に偉い立場な訳だから、偉そうも何もないが……異論を許さぬ
玉座を降りれば、臣下の声を良く聞く王であって欲しいが……望みは薄そうだ。
「続いて
功罪?
論功では無く、か?
「ルーカス・フォン・フリーデン」
「……はっ」
「そなたはゲルティ侯爵やササ伯爵が第3魔法師団を運用する中で、敵軍の将や指揮官を討ったそうだな?」
ゲルティ侯爵やササ伯爵が兵を運用?
何を言っているのか。
あいつらは大本営でふんぞり返っていただけだ。
随分と自分に都合の良い報告をしたようだな、と横目にゲルティ侯爵やササ伯爵を見ると――
「どうした。ルーカス・フォン・フリーデン。そなたが平民同然の準男爵家の3男であろうと、余は発言を許す」
返答しない俺が、身分差で緊張しているとでも思ったのか?
これは……真実を述べた所で、意味が無いな。
昨日のノルドハイム枢機卿との会話では無いが――王宮は腐敗している。
正当な評価がされない、組織として変革すべき状態のようだ。
「はっ。運と仲間が見方してくださいました」
俺はそう述べるに止める。
せめて第3魔法師団の団長であるエレナさんの功績まで奪われぬように、と。
己の功績を長々と語るなど、名を汚す行為だ。
その上、貴族共に
「うむ。上官の用兵の
騎士爵。
それは上院クラスを卒業して士官すれば、誰でも任じられる爵位だ。
そうでなくとも騎士団への入団試験を通れば下院クラス出身だろうと、誰でも任じられる。
敵の将軍、子爵、伯爵の首級をあげて……その程度の報償か。
一体、どういう報告のねじ曲げ方をすれば、ここまで不当な評価になるのだろうか?
どうせ陛下に
これで決まり――。
「――怖れながら陛下。その報償、どうか
「……ノルドハイム伯爵」
異論を挟まれた陛下が、その勇気ある能臣の名を呟いた――。
―――――――――――
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます!
楽しかった、続きが気になる!
という方は☆☆☆やブクマをしていただけると嬉しいです!
ランキング影響&作者のモチベーションの一つになりますのでよろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます